ブルガリア研究室

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<<   作成日時 : 2007/07/26 13:59   >>

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 暑さのせいか、少し息切れ状態です。今日は自由に思いつくままに書きます。

1.南東欧?
 ブルガリアは、欧州の南東部、バルカン地域にある国ですが、最近は「バルカン」という言葉が、過去の「バルカンは欧州の火薬庫」とか、「バルカン政治」とかの言葉が持つネガティヴな連想から嫌われる傾向にあります。もっとも、ブルガリアの場合には、未だに、必ずしもバルカンという言葉が嫌われているようには思えません。歴史的な用語を、そう簡単に捨て去ってよいものか、と小生は考えています。「南東部欧州」などと呼び変えてみても、歴史的な名称ではないので、ぴんとこないし、5百年に及ぶオスマン・トルコとの関係も曖昧になります。

2.ギリシャの北
 小生は、ブルガリアと聞いてすぐに地理的に想像がつかない、多くの日本人には、ギリシャの北側にある隣国、ソフィア市は札幌市ほどの緯度にある国、と説明していました。

3.ヨーグルトとバラの国
 日本人の頭の中には、明治の「ブルガリア・ヨーグルト」のコマーシャルのせいで、ブルガリアからは、ヨーグルトを輸入していると勘違いしている人々が多いのですが、明治乳業は、ブルガリア・ヨーグルトの種菌を定期的に空輸で輸入しているだけで、原料乳には国産の牛乳を使用しているはずです。種菌も、本当は保存技術の向上で、定期的な輸入は不要と聞いたことがあります。ブルガリアに対する一種の技術導入料として、定期輸入を継続している模様でした。いずれにせよ、日本人の頭には、明治乳業の宣伝のおかげで、美しいロドーピ山脈の風景と、ロドーピ山中で採取されたヨーグルトの種菌というイメージが、ブルガリアそのものに対するよいイメージを生んでおり、それはよいことでしょう。

 他方で、マイナスの側面もあり、社会主義時代においても、農業が発達した、環境破壊、公害などのない理想郷、という、奇妙なイメージで見る人が多く、社会主義による「工業国」としての発展を誇りにしていた「ブ」の政治家達は、日本人としゃべるといつも「きれいな環境、おいしい水、空気」というような話しか聞こえず、苛立っていました。「ブ」におけるGDPの大部分が工業によって生み出されており、公害もかなり深刻で、それ故に日本という工業先進国とのつきあいで、更に進んだ工業技術をほしいし、日本からの投資もほしい、という風に反論に努める政治家が多かったのです。

 もっとも、コメコン市場を失った今日、ブはかつての主力輸出品である、コンピュータ用メモリー、フォークリフト製造という工業は壊滅状態で、産業の中心はむしろ観光、不動産(英国人などが「ブ」の田舎の建物を買って老後を楽しんでいる、物価が安いのも魅力)、ワインなどの酒類製造、等に移りつつあります。

 バラに関しても、観賞用の美しいバラとは違って、香油を採取するバラは、ピンクの花自体は、それほど美しいものでもなく、早朝に、日が昇るまでの数時間内に、摘み取り作業をしなければならない、なかなか過酷な労働で、しかも何トンもの花弁から数グラムしか香油はとれない、という必ずしも簡単に儲かる産業ではないという現実には、日本人は目もくれません。

 観光誘致政策上は、「ヨーグルトとバラ」、という売り物があるブルガリアは、近隣のマケドニア、セルビア、クロアチアなどのように、ほとんど何のイメージも日本人の間にない国よりはましですが、他方で、「農業国ブルガリア、自然が美しいが、貧しい農業国」という連想となってしまいます。
 小生がギリシャの北と強調したわけは、欧州で一番最初に文明が開化したギリシャの隣国であり、しかもギリシャより北側なのだから、それなりに「古くからの欧州の先進国」という連想があってもよい、と思ったからです。

4.トルコとの関係
 ちなみに、社会主義時代には、5百年に及ぶオスマン・トルコによる支配の時代は、すべてがマイナスという歴史教育でした。しかし、オスマン帝国は、19世紀になってからは衰退しましたが、少なくとも15−−18世紀の4百年間は、西欧に比べても遜色がない、繁栄を極めた先進国でした。そのオスマン帝国の首都イスタンブールから距離的にも近いブルガリアは、いわばオスマン帝国の中枢部に位置する地域であったし、オスマン帝国は多くの人種が極めて調和的に暮らすことができる、安定した政情を誇っていたのです。

そもそも、バルカン諸国は、キリスト教の領主達が、善政をせず高税率、不安定な社会だったため、回教徒君主のオスマン朝がバルカンに進出してきて、低税率と治世の安定をもたらしてからは、忠実なオスマンの臣民となっていたのです。バルカン諸国のキリスト教徒市民の子供の中で、優秀な少年達は、イェニチェーリ(スルタン直属の兵隊)として徴用されたのですが、この制度も、「人さらい」という悲惨な感覚ばかりではなく、むしろ中国の科挙のような側面もあったようです。セルビア人、アルバニア人などで、イェニチェーリ制度で徴用された少年が、後にオスマンの高官に出世して帰郷する話などが、バルカンではよく残っているようです(残念ながら、ブル人からは、同じような話は、小生は聞いたことがない。よほど完璧にトルコ時代のよい思い出は言論統制された模様)。つまり、日本の田舎から奨学金で東大に進学して、後には大臣になって故郷に錦を飾るという、明治、大正期の日本の話と大きな違いはないのです。

5.近隣、欧州資本の進出
  自由化、資本主義化の近年になって、社会主義後のブルガリアには、当然のように人的、あるいは文化的な関係の深いギリシャ、トルコ両国、およびかつてのオーストリー、ドイツとの深い関係もあり、オーストリー、ドイツ資本もブルガリアに進出してきました。また、ロシアも石油、ガス資本が進出しています。
 この中で、最初に素早く進出してきたのは、ギリシャで、その後にトルコ、ロシア、オーストリーが続いている気がしました。米国、カナダの資本も出てきているし、珍しいのはアイスランドの製薬企業の進出もあります。ドイツ、フランスはスーパーなどの流通業での進出が目立ちます。
 中国資本も、韓国資本もそれなりに進出しています。日本の企業が立ち後れているように思いました。社会主義時代に、あれほど活発にきていた「日本商社」がこのところ海外であまり活躍しなくなっています。日本の産業構造も変わってきているのでしょう。

6.「自然」を褒められてうれしいのは、先進国だけ
 ともかく、「農業国、ヨーグルト、バラ」などのイメージに満足しているのが大衆だけならよいのですが、日本の場合相当なエリート達ですら、同じような傾向があって、情けないと思ったものです。日本人の、あるいは「欧米」人を含めての、バルカン地域、あるいはブルガリアに関する知識、認識の希薄さには、本当に呆れます。

 今時「農業国」といえるような国が、本当に世界中にどれほど残っているのでしょうか?たとえ工業があまりなくとも、「商業、サービス業、観光、不動産」などの占める比率が高い国がほとんどです。
 たとえば、イギリスでも、田舎に行けば田園ばかりですが、「農業国ですか」などと馬鹿げた質問はしないはず。他国に行って「水、空気がきれい、おいしい」というのがほめ言葉であると、本気で思っている日本人の脳天気さには、ほとんど怒りを覚えることが多かった思い出がある。自分らは「工業国」と自慢していると誤解されるだけです。
 また、「素朴」を褒め言葉と考えるのも日本人のみです。素朴は英語ではsimpleですが、シンプルとは、要するに「単純、馬鹿」ということです。外国に行って、素朴ですばらしいなどという不可解な発言は慎んでほしい。

7.緑の欧州は「環境破壊の結果」
 なお、イギリス、アイルランド、あるいはフランスなどで、牧場、農地などをみて、日本人はすぐに「自然が美しい」と言いますが、これは大いなる誤解です。英国、アイルランドの国土はかつては森林、大木で覆われていたのですが、(1)英国の海外飛躍のための造船用に木を伐採しすぎたこと、(2)産業革命初期に毛織物工業が発展し、羊毛をたくさんとるために森林をつぶし、牧場を増やしたこと、(3)軍隊を強くするには牛肉が必要と考え、牛用の牧場を増やしたこと、(4)また、石炭を地下から掘り、使い始める前に、産業用、生活用にも木材を多く使ったこと、などから、国土から森林が消え去り、その結果現在は、どこに行っても農地とか、牧場とかが広々と広がっているわけです。

 つまり欧州の大平原、広々とした農地、牧場は、徹底的な森林破壊、自然破壊の残骸であって、決して自然が豊かなわけではありません。緑の大地が広々しているからすばらしい自然と簡単に考えるのは「単純、シンプル」すぎるでしょう。
 土地もアジアほど肥沃ではなく、麦、トウモロコシ、ポテトができればよい方で、大部分は牧草地にしかならないのです。
降水量が多く、土地も肥沃で栄養豊富な米が作れるアジアは、単位面積あたりのカロリー生産で優位だから、もともと欧州より人口が多かったのです。

 幕末、明治に日本に来た外国人は、「日本の自然がすばらしい」と言って褒めたのですが、それは産業革命が遅れていたからばかりではなく、森林がいっぱい残っている日本は本当に自然が豊かだったからです。もっとも、明治初期の日本人は、「自然がすばらしい」と外国人に言われて本当にうれしかったのでしょうか?小生には疑問です。やはり、西欧に比べて遅れた工業技術、軍事力などで、早く追いつかねばという気が焦り、「自然が美しい」などという価値観は、うっとうしいだけだったのではないでしょうか?
 
 




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