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zoom RSS 湾岸産油国の巨大資金

<<   作成日時 : 2008/07/17 16:28   >>

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  最近読んだ新書に、前田高行著『アラブの大富豪』(新潮新書、2008年)がある。湾岸諸国の近代史と、その中で生まれた政商とか、王族ビジネスマン、また石油、天然ガスのもたらす巨大な国富を運用する政府系ファンド成立の経緯などについて、包括的に情報をとりまとめた、すばらしい著書である。
  著作権に触れないように、ほんの少し、本書で触れている内容に関し、コメントしてみるが、本当のすばらしい内容は、是非皆さんご自身でこの本を読んでいただきたい。非常に読みやすく、一般読者を対象にした、こなれた文章で、その点でも良くできた著書である。

1.オイル・マネー
  英語では、正式にはPetrodollarsと呼ばれる由で、オイル・マネーというのは和製英語らしい。ペトロダラーは、湾岸産油国(主として、サウジアラビア、クウェイト、アブダビ、カタルの4カ国)が、第1次石油ブーム(消費国にとっては、1973年と1979年の2回にわたる「石油ショック」のこと)、第2次石油ブーム(2002年以来、今も続いている)の期間に、石油(及び天然ガス)輸出と消費財・サービス輸入の差額として貯め込んだ経常黒字のことをいうらしい。

2.巨大建設プロジェクト
  UAEの中心国家は、石油の大部分を算出するアブダビだが、UAE(アラブ首長国連邦)の弟分であるドバイには、第2次石油ブームで有り余る湾岸オイル・マネーが流れ込んでおり、ドバイは、これら近隣諸国の投資資金をかき集めて、巨大な観光開発プロジェクトを続々立ち上げ、建設ラッシュ状態であるという。ドバイの国王とは、要するに、不動産開発企業のCEO的役割で儲けているビジネスマンらしい。

3.湾岸諸国の真実の一人当たりGDP、生活水準
  出稼ぎ労働者らの人口を除外して、本当の市民権を持つ住民のみのGDPを推定すると、一人当たりGDPはUAEで14万ドル、カタルでは17万ドルという驚異的な大きさになるという。その上湾岸諸国では、有り余る石油収入のおかげで、所得税ゼロ、医療費、教育費は無料、輸入に頼る食料品、ガソリン代なども驚くほど安価であるので、見かけの収入以上の生活が可能という。中流以上の家庭では、インドネシア人の住み込みメード、フィリピン人の運転手を雇っている、という。

  自国民(成人男性)の多くは、公務員として雇用され、冷房の利いた快適なオフィスで、パレスチナ人、エジプト人、イエメン人らの秘書に実務をやらせて、のんびりと「仕事らしきもの」をしておれば、給与を確保できるらしい。民間企業勤務でも、実態は上記とほとんど代わらないという。仕事がきつければ、或いは自分のプライドに見合うほど「きれい」な仕事でなければ、働かない道を選ぶという(食うに困らないので)。半世紀ほど前までは、砂漠のベドウィン(遊牧民兼盗賊)だったのが、今では3Kの仕事は、自分では一切ごめん被るという、気楽な身分を得ているらしい。

4.Sovereign Wealth Fund=政府系ファンド(国富ファンドともいうらしい)
  産油国のSWFは、既に総額1.3兆ドル(アブダビ9千億ドル、サウジ3千億ドル、クウェイト1千億ドル、カタル400億ドル)に達していると推計されるという。湾岸諸国は、ほぼ一様に、王制国家(しかも宗教・政治・商業が渾然一体となった王族支配国家)であり、これらのオイル・マネー由来のSWFは、要するに王族が握る国富を信託している資金らしい。従来は、米国の銀行に預金するか、米国の政府債を購入するという、ロー・リスク・ロー・リターン投資を繰り返してきたのだが、最近は、米ドルの価値下落傾向、米国債の信用低下、などを危惧して、運用先を多様化させつつあるらしい。

  巨大な投資ファンドが、世界経済に多大な影響力を行使し始めているらしいのだが、これが更なる米国経済衰退をもたらすのか?、欧州諸国の著名ブランド企業を買い占めるのか?、新興国に投資されて世界の経済格差縮小に手を貸すのか?、或いは日本の不動産を買い占めるのか?、などなど、先行きは全く不明である。今後の湾岸産油国政府系ファンドの行方は、世界経済の動向を大きく左右し、世界経済の変動幅を拡大させる虞もあろう。

  因みに、新興石油輸出国として、ロシアの大富豪ばかりが、米国誌番付などで最近注目されるが、実際には、ロシアの大富豪以上に、湾岸王族達は大富豪なのだそうだ。しかし、彼らの所有する国内企業は株式非公開で、上場していないので、彼らの実際の資産を推定する術がないらしい。その上、彼ら王族は、すでに何十年も裕福だったので、目立って人々の嫉妬心を煽るような馬鹿げだことはしない知恵を身につけているらしい。

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