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zoom RSS インド式ビジネスの時代?

<<   作成日時 : 2008/07/29 15:24   >>

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   最近のNHKが「インドの衝撃」と題して数回特集番組を流していたが、この番組と関連し、島田 卓(タカシ)著『日本を救うインド人』(講談社+α新書、2008年2月)を読んだ。最近多くの経済誌でも特集されることが増えている「驚異のインド経済発展」という紹介書の一種である。
  長らく我々日本人は、中国を後ろから牽制してくれるアジアの大国の一つとしてインドに期待したいという気持ちと同時に、他方で、インド亜大陸に関してはあまりに無知なために、まさか中国に対抗できるほどの経済発展を遂げる実力があるとは、想像すらしなかったのである。しかし、最近では、早めに軌道に乗った中国を追いかけて、インドとか、ロシアなどもがんばり始めた。島田氏の著書を少しだけコメントさせていただきたい。

1.やはり元凶は社会主義だった  
  小生は、ブルガリア、東欧、ロシアなどの旧社会主義圏が、自由主義経済、資本主義を採用したら、あっという間にモノ不足が解消し、経済成長が可能になったことを、昨年のこのブログで、かなり詳しく説明した。社会主義経済体制は、競争を阻害するばかりではなく、モノの統制、資本の統制という、経済の柔軟性を一切不可能とするような、縛りをかけることで、国民経済を窒息させる、という簡単な事実が、これまで良く理解されていなかったのだ。モノと資本の統制こそが、社会主義経済体制の最大欠点であった。

  ところが、どうやらインドの場合も、著者によると、ネルー首相、娘インディラ・ガンジー首相というネルー家が、独立以降採用した一種の社会主義経済体制(及び外資排斥制度)のせいで、これまで成長路線をなんら実現できず、44年間に及ぶ鎖国・経済停滞の時代が続いてきたという

  然るに、核実験後の世界からの経済制裁、及び湾岸戦争に伴う出稼ぎ送金の欠如から、インド経済が危機を迎え、やむを得ないばくち的措置として、90年代初めに社会主義を止め、経済自由化に踏み切り、資本主義、競争主義のやり方を採用してみたところ、あにはからんや、「インド人自身もびっくりするほど、がんがん成長路線を描くようになった」と言うことらしい。

2.インド式メンタリティー? 
  島田氏は、日本人が「沈黙は金」と考え、中々本音を明かさないし、自己主張しないのに比べて、インド人は、自己主張し、全てを言葉にしなければ何も始まらない、という思考方式で、しかも常にポジティブ思考で、前進あるのみだ、という。色々と、インド式思考に関して、実例を挙げており、大いに参考となるのだが、我が「ブルガリア研究室」の立場から見ると、実は「インド式」というのは、大部分の点で欧米式、或いはバルカン式とも同じで、さほど異なっているようには見えない。

  インド人の多言ぶり、言ったことの全てが実現しなくとも、責任を持たないが、ともかく前に進もうという意欲が強い、トップが交渉のその場で結論を出したがる、などのやり方も、実は欧米、またはブルガリアでも、ほぼ同じであって、要するに世界の中で日本のみが、ビジネスの中でも優柔不断で、スピード感がないのである。「日本式」こそが、国際標準とかけ離れているのであり、これまでは中国も、インドも、社会主義という馬鹿げた体制のせいで才能を発揮できなかったのだが、その鎖が外されてみれば、一人の人間の能力として、度量として、中国人とかインド人の方が、よほどでかくて、日本人は組織に頼ってしか動けない、とんだ小さな人間でしかない、ということらしい。その点、日本人でも中小企業の社長のみは、普段日本の中でも、自ら即断即決しているので、外国に視察に出ても結論をすぐに出し、国際基準に沿っているらしい。

3.自己決断せず、集団主義を建前に、会議における検討に依存する日本人の無責任体質
  たしか、前々回紹介した「アラブの大富豪」の著者も、同じようなことを述べていた。日本の会社は、「調査団」を派遣してくるが、色々議論を戦わせ、交渉までしても、決して彼ら視察団の、会社の「幹部クラス」には決定権が無く、全ては「本社に帰ってから再検討して」その後、いけるとなったら、また「本格調査団」を派遣し、交渉を更に詰め直して、彼らもまたもや交渉結果を持ち帰って、本社で議論してから結論を決める。
あまりにも交渉とか、検討とかに時間をかけすぎるので、日本側が結論を出す頃には、情勢が変わっていて、先方が他の会社と仕事することを決めていたり、或いはとっくに時機を失していて、このプロジェクトは結局お蔵入りになる、などの弊害があるという。既に、1980年頃に、米国の経営コンサルタントなども、日本式決断力のなさ、決定の遅さ、本社主義の弊害、などと厳しく批判していたことだが、未だに日本のやり方は変わっていないらしい。

  そういう日本式と違うと言うことで、インドを特殊視することはできない。むしろビジネス・チャンスは、時間がたてば失われる、即断即決で、リスクを背負いつつ、勝負するというのが国際ビジネスの常識であり、中国人も、インド人も、米国人も、アラブ人も、同じようなビジネス感覚で勝負していると思う。
日本だけが、会社の社長すらが、多くの場合「サラリーマン社長」とか呼ばれて、必ずしも実権を持たず、即断即決できないらしい。また、多くの社長は、自らが交渉とか、調査とかに出かけず、本社にのんびりと座っているのだ。書類にはんこを押すことにしか脳が無く、或いははんこを押す前に、更に細かく調査させることにしか脳が無くて、実は会社のお荷物でしかない幹部とか、取締役が多すぎる大会社も少なくないように思う。これでは、相手がインドだろうが、中国だろうが、かなわないはずだ。

4.「日本式」に危機感を持とう
  なお、日本人が即断しない理由の一つに、「Yesなら言えるが、Noとはなかなか言えない、という日本文化上の問題」という馬鹿げた理由も時としてあるようだ。後日「本社で検討した結果」Noという結論になったと、時間をおいてから回答する方が、丁寧なやり方で、相手を怒らせることが少ない、と言うふうに考えるのが、日本流らしい。
これも、何ら国際基準から見て根拠がないと思う。即断即決でNoと言える人物の方が、ビジネス相手として大物に見える、というのが国際基準だろう。ところが、日本人というのは、自分で考える習慣が薄れているので、「何となくこれはやばいという勘」は働いても、Noとはっきり断る根拠をその場で思いつかないし、拒否の理由を述べて相手から反論されると、これに対応するのが面倒ということで、ともかく「本社に持ち帰って皆と議論し、検討してから回答する」と述べておくのが、一番無難と思っている。

  日本人は、ここ40年ほどは、長らく、国際社会でまともな競争相手がいないほど恵まれた環境の中でビジネスしてきたので、自らの発案ではなく、外国人からビジネスを持ちかけられて、受け身的に対応することでも、会社が支障なく発展してきたし、「本社で検討する」と回答しつつ時間をかけて対応してきても、会社が潰れることはなかったので、性急な回答、対応こそが、危険という風に、思考方法が固定してしまったのだと思う。しかし、経済成長が急激なインドや中国では、発案したらすぐ実行しようと考えているのであり、今では資金の調達も容易となっているので、決断の遅い日本の会社が乗り気になるまで、悠長に待つ必要性は、あまりないのである。

  そもそも、調査団を派遣するのは、新たなビジネス開拓のためであるはずで、せっかく多額の旅費、調査費をかけて外国に行っているのに、自らの発案で相手に事業を提案しないで、あるいは相手側から積極案を提案されたら急に受け身的になって、自らが責任をとる形では交渉をまとめようとしない、などの態度は、集団主義の日本では「出すぎる杭は打たれる」とか、減点主義の会社文化故に、一人では責任をとりたがらないから、など色々事情があるらしいが、ともかくスピードを要するビジネスの世界では、ダメな文化といえる。

  石油も、鉄鋼原料も、食糧も、全て迅速かつ大胆に手当てしていかないと、量的にも不足する虞がある、と言うふうに国際経済環境も変わりつつある。長らく中国とかインドとかロシアとかが、惰眠をむさぼっていて、日本の競争相手がいなかった時代は去ったのである。幸い、日本には「商社」という、山師的(注:褒め言葉として使っています)な会社が昔から存在しており、彼らが資源競争の時代になって復活して、量的確保の先兵役を担ってくれている部分があるらしいが、そういう間接的組織に頼って今後も全てが上手くいくとも思えない。企業文化、日本人の組織・集団主義についても、再検討し、個人責任制、個人プレーを重視していくべきであろう。

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