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zoom RSS 不況は未来を示す神の声?

<<   作成日時 : 2009/03/19 15:35   >>

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 戦後最大の今回の経済危機に関して、『週刊ポスト』(09/03/27付)で大前研一氏が、円高による輸出の減少が最大の問題ではなく、消費の落ち込みこそが原因だから、そう悲観すべきではないと書いている。その点に関して若干考察してみたい。なお、不況時にこそ海外投資を増やせと言う、後半部分の主張は、1月23日にこのブログで触れたことと重複するが、あえて再度強調したいので、書いた。なお、倹約志向に関して擁護論も展開した。

1.日本の経済危機に関する数字
 08年10--12月期のGDPが、年率換算で12.7%のマイナスを記録し、この2桁のマイナスという数値は35年ぶり、戦後2回目のひどい数字だというのが与謝野経済財政相の発表だ。これに対して、大前氏は、日本の輸出はGDPで12%を占めるに過ぎない。他方、消費はGDPの60%を占めるのであり、この消費が倹約志向で冷え込み、特に自動車、家電製品などの耐久消費財への需要がしぼんでいるのが問題だという。また同氏は、1ドル=79円を記録した前回の円高は94--95年に起きて、日本経済に不況をもたらしたが、今回の場合1ドル=90円台という円独歩高は、世界中が日本経済は大丈夫と認めたからの数字であり、世界の中では日本経済は安定している方だ、という。
従って、同氏は、戻し減税とか、耐久消費財を買ったときの消費税免除などの措置を執れば、日本の不況は挽回可能だと見る。

 小生はしかし、日本人は既に十分すぎるほど耐久消費財に囲まれて生活しているし、将来に備えて倹約する国民性は直らないと思う。この故に、小生としては下記3.で書くように、海外進出に努力すべきだと思う。短期的な景気の落ち込みを十分カバーする効果は薄いかもしれないが、日本の銀行も将来の輸出増大(或いは輸入増大)に向けた日本企業の海外進出に融資すべきだ。中国も、現在、豪州、その他で、資源関連企業の買収に国営系の巨大資源企業が巨額投資していると報じられている。中国人の打つ手は戦略的に正しいと思う。

2.欧米の金融危機による損失総額
 小生もどこで読んだのか記憶にないので恐縮だが、今回の金融バブル崩壊で生じた過剰債務が、米国で7兆ドル、欧州(EU)で7兆ドルという計算があるそうだ。また、日本における金融資産総額が1400兆円あるという。
 すなわち、1ドル=100円との換算レートで言えば、欧米全体の金融資産の損失を、日本人の金融資産総額で相殺できるほど、日本人の倹約、節約に基礎を置く巨額の金融資産が存在することとなる。日本人自身は、もっと自信を持って、89年以来の「失われた10年」の時代とは異なり、「今回は日本は勝ち組」となって、世界中を買収できる、世界中に投資しまくるに足る金額を抱えているのだ、と認識した方がよいのかもしれない。
 
  (筆者訂正:上記を書いた後、記憶を整理しつつ「7兆ドル」の根拠を探したのですが、見つかりませんでした。小生が最近読んだものとしては、『中央公論』4月号のp.70に(「製造業立国・日本の終焉」という論文)、米国4兆ドル、欧洲もほぼ同じ、との記述があります。もしかするとこの部分をうろ覚えに、「7兆ドル」と間違った可能性があります。やはり経済に関しては、数字はもっと慎重に扱わないと行けませんね。というわけで、14兆ドル=1400兆円、という単純な図式は成り立たなくなりましたが、他方、8兆ドル=800兆円なら、むしろ日本の金融資産で買い取れそう、という意味では、よりもっともらしい議論となるのかな、と考え、この部分の記述は、若干訂正した上で残すこととしました。読者の皆様には、寛大な気持ちでご勘弁下さい。)

3.今こそ外国進出を増大すべき
 今現在、確かに自動車産業、家電産業という、二本の大黒柱は、一時的に大不況だが、この苦境を生き抜けば、将来は明るいのかもしれない。そもそも、製造業がだめなときには、日本国が抱える有り余る金融資産を使って、有効に欧米の将来性ある企業を買収するとか、或いは日本の銀行自らが、欧米の主要都市に進出して基盤を築くとかすればよいのかもしれない。残念なのは、日本の企業、銀行に、外国語に堪能な社員が少なく、諸外国で十分に能力を発揮できるかどうか、経営陣としても確信がないだろうこと。しかし、まず若い社員を派遣して、長期的に現地事情の勉強をさせるしかない。
 自動車産業にしても、家電にしても、小生が専門とするブルガリアでも、韓国系企業が販売店を現地に立ち上げ、進出に力を注いでいたし、中国のハイアールなども現地工場設立を模索していた。それに比べて日本企業は、殆ど何らの進出意欲も見せず、単にオーストリアなどの販売拠点を通じて商品を輸出していただけだ。

 確かに今回の不況は、東欧にも打撃を与えているが、そうはいっても、投資環境面で見れば、ユーロは安くなったし、現地における不動産なども価格暴落しているはずで、こういう全てが安価なときにこそ投資して、現地進出を果たすべきであろう。国内不況で国内では仕事が少ないのだから、優秀な社員は東欧とかアジアとか、今後も成長することが確実な新興国に派遣して、まずは現地で勉強させつつ、安い投資案件を見いだしては投資を実現させればよいのだ。

 最近の西松建設の小沢民主党党首への政治献金事件などで、相変わらず日本企業が国内の公共事業に関し、政治家に「談合取り仕切り」を依存していることが明らかとなったようだが、そういう政治献金に回す資金を、社員の海外での事業展開への投資資金に回した方が、日本の将来を切り開くためにはより有効なカネの使い方であろう。そもそも、諸外国と異なり、日本の社長などは、その多くが海外事情に疎く、外国への投資の目利きとは言い難い。これまで日本企業は、少数のエリート社員のみに海外勤務させて、彼らの能力に頼ってきたが、本当はもっと多数の社員を海外に送り込む方が、より有効に仕事を拡大できるはずだ。

 海外情報を総合商社、専門商社に頼っていた頃もあったが、最近では商社の海外事務所網も、一時に比べると手薄になっているし、彼らの知識のみでは海外事業展開は失敗しうる(商社は、必ずしも個別の商品に関し明るくないし、仕事の量を確保するために現地リスクを過小評価して報告する危険もある)。

4.景気循環は、資本主義の宿命:やはり倹約で生き抜け
(1)社会主義再評価は、あり得ない選択肢
 ちなみに、不況になるとすぐに、もはや民間の努力だけでは回復不可能だから、政府資金の出動が必要だ、という議論になるのが、小生には不満だ。

 これまで小生が何度も強調してきたように、全てを中央の「国家計画委員会」で計算して、資金ばかりかモノそのものの数量割り当てまでも中央の官僚が管理した「計画経済」が、全く効率的な経済を構築できずに、無駄ばかりを産んだ「社会主義経済体制」の失敗と比較すれば、資本主義経済体制における「不況による一時的な経済縮小」などは、さほど大きな困難には見えない。恐らく、何らかの「人間の集団行動における欠陥」「行き過ぎ」などを是正するための、一つの契機、ヒントを与えるためのショックと考えればよい。官僚統制経済などは、決して選択肢としてはならない。

(2)投資先、開発部門を再検討せよ
 すなわち、ある産業部門が過度に肥大しすぎて、突出しているのが問題で、その他の分野にも投資を配分して、均衡を取りなさい、と「経済の神様」が囁いている、と言うふうに受け止めて、冷静に分析を重ねればよいのだろう。自動車産業ばかりが、一番儲けが大きい基幹産業と見なされて、各国共に同じように自動車産業にばかり投資するから、この部門での生産力過剰が出現している。家電産業も同じと思う。日本人の創意、工夫で、ここまで成長した両産業分野だが、そろそろロボット産業だとか、海底資源、ソーラー発電、風力発電、バイオ産業、などにも投資と技術者をより多く投入していくべき時期なのかもしれない。

 いわば不況は、新産業分野へ人類の関心を導くための「神様の小言」と見るべきかもしれない。農業とバイオ技術にもっと努力しないと、より多くの世界の人口を養えないし、医療分野でも、更なる技術革新を達成しないと、高度化しすぎて一部の天才医師しか扱えないような、難しい手術ばかりが増えすぎる。人間の知恵をより多方面に展開すべきである、と「サイエンスの神様」も囁いているのかもしれない。

 そうであれば、従来型産業である自動車、家電の需要を高めるために、減税とかの優遇措置を執るのではなく、社員の給与を引き下げたりしてでも、次の需要回復を待つとか、より効率的で安価な製品を開発するとか、普通の努力をする方が良かろう。無理矢理無駄な需要を創出して、神様の機嫌を損ねるよりは、節約、倹約をしつつ皆で不況時を乗り切り、未来への展望は、新しい分野において開拓していく、というのが正攻法と思う。






トヨタが消える日 利益2兆円企業・貪欲生産主義の末路
成甲書房
鬼塚 英昭

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