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zoom RSS 成長・生産拠点の移動

<<   作成日時 : 2009/03/21 10:29   >>

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前回記事で、今回の世界不況に関して、日本の傷は欧米に比べれば浅いから、この不況時における欧米の株安、資産安などをチャンスととらえて、日本の潤沢な個人金融資産を背景に持つ銀行資金を活用しつつ、日本の企業は、社員の海外派遣、社員の派遣先現地での勉強結果に基づき、現地(東欧、アジア、欧米)投資を拡大すべきと書いた。
 他方、前回記事でも少しだけ数字を引用した水野和夫氏の『中央公論』09年4月号掲載論文(「製造業立国・日本の終焉」)は、世界経済はより大きな歴史的転換期にあり、もはや先進国における経済成長は望めない、新興国における成長しかない、先進国における成長、所得増大などはもはやあり得ず、製造業も新興国に拠点を移さざるを得ないし、新興国の需要に対応するには、低価格帯製品の大量製造しかないという。
 成長拠点の新興国への移動、先進国における所得停滞、賃金低下(先進国の没落)>世界レベルでの所得格差の縮小、平準化という傾向に関しては、小生もこのブログで08/08/04付け記事(サブプライム危機と金融工学の敗退)、09/01/02 付け記事(NHKスペシャルの討論について)の2回に分けて論じてきたのだが、水野氏の論文は更に深く、歴史的な大転換が起きていいるという。皆様にも、この論文を読んでいただくのが本筋だが、著作権に触れない程度に、少しだけ下記に、水野論文の要旨を紹介する。

1.鉄の消費量
 米国、西欧、日本などの先進国においては、1974年に国民一人当たりの鉄の消費量が頭打ち・横ばいになった。すなわち、74年時点で、先進国での成長は基本的には終了していたのだが、市場自由主義への過信・バブル経済という手法で偽りの成長があり、先進国における消費拡大は、無理矢理21世紀初頭まで延長された。

 小生の視点:鉄の需要、消費量が、近代工業国の目安としてこのように経済分析に活用できるとは、すばらしい着眼だ。水野氏が用いているグラフでは、01年以降再び鉄の消費量が上昇するのだが、これは実は新興国からの需要増大分(輸出増大分)だという。

2.空間革命
 16世紀後半から17世紀前半にかけて、陸の帝国が衰退し、海の支配を重視(北米新大陸を経済圏に取り込んだ)した英国が主導した西欧型資本主義が繁栄してきた。
 然るに、西欧型資本主義による製造業は、先進国における高性能、高価格の製品需要の限界を超えてしまい、先進国は今後没落する。もはや先進国内部においては需要は増えず、需要、成長の中心は、低価格帯製品を必要とする新興国、後発国に移りつつあるので、工場も新しい成長拠点のユーラシア大陸内部へ、すなわち海から陸へと、約400年ぶりの空間移動を行う。

 小生の視点:これまで貧しいところが、今後経済成長するという意味では、確かにアジアの内陸部も注目されるだろう。しかし、今後もグローバル経済化の進展で、新興国、後進国に富が徐々に移転していくのだ(小生は、インターネットにより知恵、情報の後進国への移動に注目してきた)と見れば、相変わらず資源、製品は、海経路で運ばれるのであり、沿岸部の優位性は揺らがないと思う。もっとも、中国政府が最近益々鉄道輸送力の強化を目指し、鉄道建設に大規模な資本投下をしているとの報道がNHKニュースであった。ユーラシア大陸内部の生活水準向上、近代化促進には、やはり鉄道輸送が重要性を増すことは、疑いのないところだ。中国所在の日本企業も、中国の鉄道経由で、貧しい中央アジア諸国に輸出できるような安価な製品を開発すべきなのだろう。宅配用の3輪バイクとか、昔の耕耘機+リアカーなどが、アジアの貧困国向けには最適の安価な製品と思う。

3.景気対策は無意味
 要するに、経済の中心が、先進国から後進国に向かいつつあるので、先進国市場を再活性化するための景気対策として、いくら公金を注ぎ込んでも効果は出てこない。むしろ企業は、どうやって後進国の低価格帯製品を現地で成功裏に生産できるようにするか、という海外進出の試みに努力集中すべき。結局、投資資金、技術は先進国側にあっても、投資先、需要先は新興国、後発国であって、これら諸国の所得水準も向上していくが、先進国市民の所得向上は、期待できないという産業構造の変化が起きていく。

小生の視点:小生も「景気対策の無駄遣い」には疑問があった。現在日本市場で売られている高級品、高価格帯の工業製品では、低賃金化、貧困化しつつある国内市場ですら需要喚起が出来ないこととなろうから、いくら政府が緊急対策に公金を注入しても、そういう産業自体、もはや前の水準での生産規模は回復できないのかもしれない。そうであれば、産業構造をより安価製品製造へと転換していく努力を、企業自体がするしかないのであり、国家の負債を増大しても意味がない。先進国で今後伸びうる産業分野は、医療機器、医薬品、バイオ革命による新しい食糧、エネルギー源(植物系の油)、省エネ的な風力発電、太陽発電、電気自動車など、限定的となるだろう。

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