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zoom RSS 奇跡のルワンダ経済?!

<<   作成日時 : 2010/04/05 18:48   >>

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 4日(日)夜9時からNHK総合で放送されたNHKスペシャルの新シリーズ「アフリカン・ドリーム第1回」は、ルワンダを取りあげ、94年の悲劇(フツ族とツチ族の間の民族抗争、相互大量虐殺によって世界を震撼させた)から16年後の今日、同国では年率8%という高度成長軌道に経済が突入し、豊かになった人々(富裕層のツチ族)が首都キガリで、西欧風の戸建て高級住宅で暮らすようになったことを報じていた。小生にとっても、全く寝耳に水というか、アフリカは中国資本が資源を求めて投資している諸国のみしか発展していないと思っていたので、自国民主導の経済成長を達成した国家が、あのアフリカに出現している、という事実に、唖然とさせられた。
 この放送内容に関し、少しだけコメントしてみたい。

1.民族抗争と大量虐殺の歴史
 ルワンダという国は、アフリカ大陸では珍しく、気候的には欧米人にも住みやすい、適度に涼しい気候で(赤道に近いが、高度が1000m以上の高原地帯で涼しい)、その故、この内陸国は、農業に適していて、人口密度が高いらしい(四国より少し広い国土に人口が1千万人もいるという)。
 しかし、ベルギー植民地時代に、背と鼻が高いツチ族(どちらかというと農耕民というより、元来が牧畜系らしい。人口比率は10%ほど。ツチ族は、隣国のタンザニア、ブルンジなどでも支配者の立場らしい)を優遇して、人口の8割を占めるフツ族には教育せず、ツチ族のみに教育、訓練を施して、白人植民地支配の手先として利用した結果、ツチ・フツ両民族の対立という民族抗争の図式が出来てしまったという。
 「62年独立後もツチ族が支配したが、73年多数派のフツ族がクーデターで政権を握った。90年、ツチ族のルワンダ愛国戦線=RPFが結成され、政府軍との内戦が開始されたが、93年和平協定がなった。しかし、94年4月の大統領(フツ族)殺害事件を契機に、部族抗争が激化し、相互虐殺が行われた(50--100万人が殺害された)。その後RPFが、首都キガリを制圧し、7月にフツ族穏健派と共に、部族融和政権を発足させた。」(この項は、2000年版のImidasによる)。

2.Diasporaのツチ族が、海外で築き上げた資本で自国に投資
 番組によると、大虐殺事件後16年を経て、今日ルワンダは、アフリカ随一の年率8%成長を誇る国家として、世界の注目を集めているという。
 その理由は、上記の73--95年頃の民族対立、抗争時期に、ルワンダを去り世界に亡命していった多数(100万人以上)の、主としてツチ系の市民が、欧米、その他の亡命先の国家で経済的に成功を収めて蓄積した、多額の資金を持って近年帰国し、自国で大規模プロジェクトなどに投資しているからだという。

番組が特に取りあげたのが、セココという人物で、同人は大阪の中古車業者の会社で修行させて貰い、ビジネスを学ぶと共に、日本製中古車をアフリカに輸出して財をなしたらしい。その後は、米国で建設業をしていたらしいが、ツチ族主体の政府が、全世界に散らばったDiaspora(注:元来ディアスポラとは、ローマにより征服された後、広くローマ世界全体へと移住したユダヤ系の人々のこと。ここでは、ルワンダのツチ族で、世界に散らばって亡命した人々を指す)に、帰国して自国経済に投資するよう呼びかけたので、帰国し、数々の大規模プロジェクトを企画、実行している由。
 同人が現在取り組んでいる仕事として、高層ビルのビジネスセンター(インターネット通信施設込み、ホテル込み)の施設があるが、建設には、コストの安い中国企業と手を組んでいる由(せっかく日本で修行したのに、コストの高い?日本企業とは組まなかったようだ)。
 首都キガリにおける高度経済成長は、幾つもの大ショッピングセンターなどを生み出しているし、首都の女性達は、きれいな西欧風ファッションに身を包むほど豊かだ。更には、ツチ族富裕層のための高級戸建て住宅街(山肌に沿って、テラス状に並び、プールつきで、まるでスペイン南部の英国人用の高級別荘分譲住宅と変わらない瀟洒なもの)の映像を見ると、ここには、きちんと水道施設、電気設備なども完備しているらしいことが分かる。

3.フツ族との共存の道を探る、という美談
 他には、NHK好みの美談が最後に付加されている。お約束というべきか。ツチ族のある資本家は、西部地方で、亡命先の隣国コンゴから帰国しているフツ族系難民の多くが居住する農村地域に、コーヒー加工工場を建設し、貧しいままのフツ族との共存の道を探ろうとしている、という。同人は、元来、地元住民のために、日々の新しい情報を正確に報道し、提供するため、ラジオ局(会社)を経営しているのだが、貧しいフツ族にも経済的な利益を与えないと、再び民族抗争が再燃するとの危機感もあり、コーヒーの輸出産業に投資しようと思い立った由。フツ族農民から、コーヒー豆を買い上げて、これらを適切に加工して、欧米に輸出し、利益は、地元フツ族農民と50:50で対等に分けるという。
 NHKの編集者には絶対必要な美談だったのだろうが、「ルワンダ経済全体の成長の中で、多数派のフツ族が、貧しいままに取り残されています」と説明するだけでも良かったのでは無かろうか?そんな極めて例外的な「共存への試み」みたいな、美談を強調してみても、それが今後の大きな流れにつながるのかどうか、不明だろうし、日本人好みの「いい話」は、嘘っぽいヤラセにも見えてくる。
 
4.経済成長の利益は、ツチ族のみ
 何れにせよ、NHKは、フツ族コーヒー農家に配慮する善意のツチ族資本家、という美談でお茶を濁しているが、番組全体のナレーションを総合すると、結局内戦に勝利したツチ族主体の政府が、8割の人口を占めるフツ族(他に更に1割を占める2つの少数民族があるらしい)を、地方の農村地帯における貧民という状態に置き去りにしつつ、1割の人口のツチ族のみで、首都キガリを中心に、高度経済成長を達成している、ということのようだ。

 画面で見ても、ツチ族の人々は皆、背の高さ、鼻の高さ、そして肥満ぶりで、フツ族の人々との生活較差が更に拡大している、と言う風にも見える。そもそも、Diasporaは、コンゴ(旧ザイール)に亡命したフツ族市民に対しても適応すべき単語と思えるのだが、成功して海外から戻ってきたツチ族のみにこの単語が適用されているようで、そこからしても、未だに両民族の間の財力、教育程度の較差が縮まらない、ということであろう。しかし、フツ族の人々も、服装はかなり良いし、農村の畑は肥沃らしく、飢えているようには見えない。

5.安価な工業製品は文明化の進展を加速する
アフリカの根本問題は、民族問題だ。部族、などという曖昧な単語に置き換えられることが多いので、日本人は誤解するようだが、部族といっても民族といっても同じで、一つの国家の中に複数の民族が存在するように、旧植民地列強がわざとへんてこりんな線引きで、国境を決めたので、いつまで経っても「国民意識」が発達しないし、国内が纏まらないから、1国内にある一つの支配系民族が出現して、富を独占し、汚職も蔓延し、不公平が蔓延する。いつまで経っても、アフリカは内戦と貧困の悪循環から抜け出せない、と思われてきた。

 しかし、遂に、成長路線の国家が生まれつつある。ルワンダの場合、国内における虐殺と内戦を逃れて、亡命したツチ族の人材が、欧米先進国で蓄積した私財を本国の経済成長のために投資するという新たな動きなのだ。これまで、アフリカ人の秀才達は、欧米で富を手中にしても、それを自分たち家族が欧米で暮らすための資金として使うだけで、本国に戻って投資すると言うことはなかった。つまり、アフリカの未来に関して、希望的な展望を持ち始めたと言うことであろう。
 それに、英語という世界共通語の普及と、インターネットによる知識、情報の国際的平準化が、国家間の経済格差を縮める方向で働くし、中国企業による安価な工業製品の流入で、新興国、後進国の貧しい市民にも、バイク、携帯電話、自動車(これは日本製中古車の威力が大)、その他の文明の利器が普及し、文明化、資本主義経済化が進展しているのだ。
 大規模ショッピングセンターは、各種の文明の利器を一気に普及させ、国民の文明度を引き上げ経済を近代化することに貢献する、ということも、中国、東南アジア、インドなどにおける近年の例で明らかだし、アフリカも例外ではないのだ。永遠に未開のままと思われたアフリカが、遂に成長軌道に乗る可能性を示し始めた!!やはり、すばらしい変化なのかも知れない。
 因みに、大規模ショッピングセンターの品揃えは、アフリカ全土にネットワークを持つインド人商人達からの輸入だという。ツチ族商人達が培ったインド商人達との信頼関係に依存するらしい。商品そのものは、インド製は少なく、むしろ中国製とか、東南アジア製とか、世界中から安価な商品を調達しているようだ。建設企業は中国、商品輸入はインド商人・・・日本の名前が出てこないのが残念だ。
 ツチ族が、アフリカの中では、異例なほど優秀な人材を輩出しており、商才にも長けているらしいこと、またルワンダという国土の気候が快適なこと(アフリカの軽井沢)も利用して、中東のドバイと同様に、アフリカにおける商業センターとして、ルワンダの首都キガリがこれからも成長していくという予測らしい。

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
 私は件の番組を未見ですが、あのルワンダで驚異的な経済成長が起きているのに驚く視聴者が大半だったでしょう。ただ、植民地時代から恒例となっている民族対立の火種は消えそうもありませんね。お体裁を尊ぶNHKはこの種の問題を、“きれい事”で締め括る。

 NHK特集を論じた興味深いブログ記事がありました。この管理人さんも団塊世代で、おそらく共感を感じる内容と思われます。
http://blog.zaq.ne.jp/rootakashi/article/1148/
mugi
2010/04/08 21:45
mugiさん、
 またコメントいただきありがとうございます。団塊世代のブログも読ませていただきました。まだ小生は寺参りに興味はないですが、「自己責任」論、無縁社会論、それなりにまともな評価です。
 NHKが、「きれい事」ですませる、そういう安易な脚本とするのは、取材記者の脳髄が未熟だからでしょうが、本社の方で少しはチェックしたり、頭脳面での補強をする仕組みがあっても良いのでしょう。もっとも、取材班の若い人にとっては、自らの取材趣旨をゆがめられるという反発心で、意欲も低下しかねない。組織論としては、なかなかチェックを強めるというのも難しいでしょう。
 結局見る側の我々が、NHKのお若い記者達の、戯言を「バカが、また未熟者じゃのう」という風に、きちんと訂正できるといいのですが。
 まあ、しかし、ルワンダの発展(残念ながら、従来からの支配系民族ツチ族の片肺的成長)というところに、注目して一応取材したのは偉い。しかし、もっと掘り下げて、このルワンダの奇跡の中身、@ツチ族片肺成長のひずみ、しかし、Aアフリカにおける軽井沢ビジネスセンター的な役割(これら@Aは小生自身が、この番組から感じての造語です)、などについても触れていれば、より正しい評価となったと思う。もっともこれらを十分匂わせる編集ではあったけど。
 ともかく、マスコミにも限界はあるけど、こういう風に海外事情を見逃さないような報道ぶりが、望まれる。その意味でNHKを褒めるべきでしょう。
室長
2010/04/09 10:02
大変遅くなってしまいましたが、私もあの番組に刺激されて2本の記事を書いてみました。あの大虐殺のルワンダの奇跡と言う点が視聴者の目を引くポイントなのでしょうが、私はそこにどうしても作為を感じてしまいました。
以下ご批判いただければ幸いです。
http://blogs.yahoo.co.jp/hsm88452/41173379.html
http://blogs.yahoo.co.jp/hsm88452/41179115.html
迷えるオッサン
2010/06/02 21:17
迷えるオッサン様、
 コメントいただきありがとうございます。
チェンマイで隠退生活ですか?そういうのも楽しいかも。
 本日2日は、我が日本国では、鳩山総理が辞意を表明し、同時にカネ問題で、民主党政権がクリーンではないとの批判を招いたとして、小沢幹事長、北海道のおばさん議員(日教組の裏金を政治資金としていただいていた)も道連れにして、共に引退ということを発表して、参院選を乗り切ろうという、ずる賢い辞任の仕方をしたニュースで、TV報道が盛んで、つい民放を含めてテレビにかじり付いていたので、今は深夜、日付では3日です。
 小生は、バルカン半島、特にブルガリアの専門で、アフリカ情勢に詳しくはないので、貴兄のブログ記事は詳細を究め、良くできていると思いました。
 少しコメントすると次の点が、小生と少し意見が違うかも。
(1)ツチ族王国があった
 ルワンダでは、ドイツ、ベルギーの植民地となる以前から、ツチ族王国が成立していて、ベルギーなどは、そのツチ族の王国組織をそのまま温存して、支配機構として利用した、という貴兄の指摘は、小生は知りませんでした。そういう経緯とすると、従来の現地支配層を利用するというのは、植民地経営には手っ取り早いですね。
室長
2010/06/03 01:35
(続)
(2)経済的奇跡
 画像を見た限り、またNHK報道ぶりを聞く限りでは、帰国して現地に投資して、経済を発展させようとしているツチ族の富裕層の住む高級住宅街、ビジネスセンタービル、などは、既に存在しているし、報道後半では、フツ族多数の農村地帯である西部でも、ツチ族ビジネスマンが経営するラジオ局があり、そのオフィスは近代的(画像では)だし、彼らがコーヒー加工工場をフツ族農民の協力の下に、建設、運営しようとしていることは、地場産業を、自国民資本家が育成しようとしているという意味で、アフリカでは、やはり奇跡的な側面もあるかな、という感じです。もちろん、全て「ツチ族」資本家という点が、きれい事とは行かない現実で、NHKにもこの点を少しはっきりと指摘して欲しかった。
 貴兄の言うように、一人当たりGDP数値などでは、まだ低いでしょうけど、経済成長の可能性というか、ルワンダのように政情が安定し、気候的に非情に居心地がよいし、人口が多い、というのは、将来性という意味で、やはり注目すべきでしょう。知的レベルの高いツチ族ビジネスマンが、東アフリカ地域で、経済成長の牽引役になれば、面白い。

(3)ディアスポラ
 この用語が、元来ローマの弾圧で、各地に散ったユダヤ人に関しての用語と言うことは、小生も指摘した。他方で、英英辞典によると、ユダヤ人以外に関しても、「自国を離れた、any nation or groupによる、movement」と書かれていて、結局、ユダヤ人以外の、他の民族とか、エスニック集団の場合も、移住先とかで何らかの顕著な「動きとか運動、活動」を示すとき、彼らの活動に関して、○○ディアスポラの動向、という感じで、ディアスポラの用語は使用可能らしいです。すなわち、ルワンダ・ディアスポラという用語はあり得るということ。
 
室長
2010/06/03 01:39
(続)
他のアフリカ諸国の場合も、今後欧米に移住、移民して富裕層・知識人となった人々が、帰国して自国の経済を活性化することに「お役に立ちたい」という、そういう動向が出てきているらしい。ともかく、いつまでも貧しく、成長軌道に乗れないアフリカ、という固定観念が、少しずつ揺らいでいるらしい。インターネット技術で、情報がたやすく入手できる時代であるし、欧米で高い教育を受けた黒人ビジネスマン達が、本来の出身国に帰国して、投資し、事業を始め、雇用を創出しよう、という動向が芽生えている(すぐに急成長できるわけでもないだろうけど)ということは、昔のアフリカと比べ、明るい方向ではあるようです。
室長
2010/06/03 01:40

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