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zoom RSS 原油流出と「同盟関係」の脆弱性

<<   作成日時 : 2010/07/29 11:50   >>

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 最近またもや、mugiさんのブログ(http://blog.goo.ne.jp/mugi411 )で、色々議論していて気付いたのですが、どうも産経紙以外では、あまり報道されていないらしい重要な報道があったので、以下にこの件に関し、少し書いてみます。
 「同盟」関係を冷めた目で見ることの必要性にも言及してみました。

1.7月27日付産経紙記事「風を読む:BP問題と同盟の教訓」(論説副委員長高畑昭男筆)の要旨
(1)メキシコ湾原油流出事故が米英関係をゆさぶっている。巨大なフタをかぶせて、流出は一応止まったが、問題は英国際石油資本BPに対する米国民の反感が、極度に高まっていることだ。
(2)反BP感情は、20年以上前の米パンナム機爆破事件(1988年)にも飛び火した。この事件では、270人が犠牲となったが、大半は米国人だった。米英当局の執念の捜査と、国連制裁の圧力が実って、リビア政府は遺族に総額27億ドルの賠償を約束、リビア人犯人は、終身刑で服役していた。
(3)ところが、この犯人が昨年8月、「末期ガン」を理由に唐突に恩赦を認められ、リビアに帰国してしまったのだ。米国では、「リビアの石油利権に絡んで、BPが当局に恩赦の圧力をかけた」との説が浮上して大騒ぎとなった。クリントン国務長官も激怒したという。
(4)キャメロン英首相は、先週同盟の結束をアピールするために訪米し、オバマ大統領と会談したが、「恩赦は誤りだった」と認めさせられた上、汗だくで釈明に追われた。
(5)米英は「特別な関係」と呼ばれ、冷戦時代はもちろん、アフガニスタン、イラク戦争も、共に戦ってきた。
(6)それなのに、1600mの深海底から噴き出した原油は、僅か数ヶ月の間に米英同盟関係をどす黒い不信の固まりに変質させつつある。
  時に気まぐれな国民感情は、やっかいとはいえ、同盟関係を支える重要な要素だ。今のところ日米間にBPのような問題がないのは幸いとも言える。しかし、普天間基地移設問題など、日米指導者も、細心の配慮は欠かせないのだ。

2.同日付別記事:「英BPリビア油田着手:事故再発を懸念」(ロンドン木村正人筆)要旨
(1)英BP社トニー・ヘイワードCEOが辞任する見通しとなった。後任には、米国人取締役を起用して、米国での反BP感情を少しでも和らげたい意向だ。
(2)しかし、BPが新たに、北アフリカ・リビア沖で、深海油田開発をはじめると報道され、事故再発の懸念から再び批判されている。
(3)米国では、BPがパンナム機爆破事件リビア人受刑者の釈放を、英政府に働きかけたとの疑惑が再燃している。
 しかも、BPが数週間以内に、リビア沖開発をはじめると英紙FT(フィナンシャル・タイムズ)が報じた。
(4)リビア沖での作業は、メキシコ湾の油井より200mも深い1700mの海底(注:上記記事では1600mなので「100mより深い」はずだが?)で行われるため、事故再発が懸念されている。メキシコ湾での回収費、湾岸住民への補償などの賠償総額は300億ドルに上る見込み。
(5)オバマ米政権は、事故を機に、海底油田開発を見直す方針だが、BPなど国際石油資本としては、政情不安などの地政学的リスクが少ない深海油田開発を急ピッチで進めている。

3.留意すべき点
(1)「同盟しない」が英国の国策だった

 米英両国は、元来英国のピューリタン達の米国への移住、対英独立戦争、という歴史過程を経て別国家となったが、やはりアングロサクソン民族が国家の根幹部分を形成する(米国建国当時のことだが)、という歴史上の事実とか、英国文化の伝統の濃い影響(注:小生自身、ワシントンを訪れてみて、町並みの風景が、余りにも、ロンドンの一部、ダブリンの一部といっても、ちっとも差が分からないほど、見事に英国式建築群が並んでいるので、驚いた)とか、あるいは、諜報・情報活動面での伝統的な協力関係、などから見て、誰が見ても一番自然で、揺るぎない「血縁的な」国際同盟関係の見本に見える。

 しかし、今回の上記2記事によれば、英国政府の国策は、未だに、「どの国とも同盟しない、他国との協力は、あくまで英国自身の国益に沿っての、ケースバイケースだ」という、元来の基本方針から、大きくずれていないことが分かる。

 そもそも、日英同盟を20世紀初頭に締結した日本では、英国は、多くの国と同盟してきた歴史を持つと誤解しているだろうけれど、英国は実は「同盟などしない」ことを国策としてきた歴史があるのだ。日英同盟こそが、英国に「非同盟路線」を棄てさせた、初めての例だったのである。それほど、当時の英国にとっては、ロシアのアジア方面での勢力拡大が脅威で、日本によって、ロシアの南下を抑えて欲しかった、ということだ。いわば、中国市場における英国優位とか、東南アジア、南アジアでの英国優位の立場を、ロシアの脅威から守るために「日本を利用した」のである。

(2)一国でこれからは世界を牛耳れないと自覚したから「同盟」する
 日露戦争においては、英国政府は、バルチック艦隊の「遠征」において、各国に働きかけて寄港拒否させ、石炭、食糧補給とかを困難にさせるとか、スエズ運河通過をさせないとか、日本海軍にアルゼンチンの中古軍艦買付を斡旋するとか、英米資本市場で日本国債を売る便宜を図るとか、手取り足取りで助けたのも、ロシアの南下を阻止したかったからである。

 日本が、日露戦争後、ロシアに代わって満洲を支配したがったり、中国に対する経済権益なども拡大を図るなど、英米資本の利害と衝突する道を歩み始めると、英国は日英同盟を解消し(1922年)、日本に対し海軍軍縮条約を押しつけたり、牽制する側に回ったのである。米国も、日露戦争後すぐに、日本海軍が太平洋における米海軍の強敵、障害になると、早い段階から気付いて、米日太平洋海上権益競争に備える海軍力増強の動きに転じたのだ。

(3)弱くなった覇権国家は、「同盟」をより功利的に考える 
 大英帝国がダントツの産業革命先進国で、世界の植民地獲得競争でもダントツで、国力が充実しきっていた頃は、英国も、下手に「同盟」関係などを他国と締結して、にもかかわらず国益に沿って「違約」することとなったら、格好悪い、と考えるだけの「紳士としての礼儀感覚」があったのに、日英同盟という、禁断のリンゴに手を付けるほど、国力の限界に達していた、というのが正しい理解とも言える。

  そして英国は、日英同盟を継続しないことを決断した後は、英仏協商という、百年戦争の記憶から元来あり得なかった対仏協力関係と、英米同盟とによって、台頭した独、ソ連に対抗するという方向を選択した。
  第二次大戦で、多大な支援を得た米国とは、その後、米英同盟しかもはや英国の生きる選択肢はない、というほど、米国に依存する関係ともなっていたと言える。
  それにもかかわらず、リビアの石油権益を欲しくて、こっそりと対米同盟の絆を汚すような「違約」をしてしまった、というのが、今回報道の深刻な実態であろう。

4.日米同盟関係を、現実的に直視してみよう
  産経の高畑氏が、同盟関係といっても、英米ほど「血縁」と言うほどの関係にあるはずの両国でも、当然視して、関係維持のために、十分な注意と配慮を欠かすようでは、「たった数ヶ月間のちょっとした事件の連鎖でも、崩壊の危機に立ちうるのだ」と警告する気持ちは、小生にもよく分かる気がする。

  他方で、英国の「同盟」に対する上記記述のみでも、十分ご理解いただけると思うが、本来「同盟」と言っても、「利害を共有している限り」、という限定条件付きの側面が根強くあるのが国際社会である。
  米国にしてみれば、敗戦国をここまで立派に更正させてやったのに、「いつまで自らは、血の貢献を嫌がるし、まともな同盟義務を果たさないつもりだ」との対日不満が、時折頭をもたげることがある。

  日本にしてみれば、パパ・ブッシュの湾岸戦争では、多額の金銭を搾り取られたし、未だに沖縄の多くの基地、本土の諸基地などに米軍の駐留を認め、「思いやり予算」まで多額に負担してきた。他方で、在日米軍は、必ず日本の防衛を請け負うと信用して良いのかどうか怪しい面も残っている。(米国は、尖閣列島を日米安保の枠外と言ったことがあるし、海底ガス田に関わる日中の軋轢でも、無視・傍観している。竹島、北方領土問題などでも、立場は不明瞭だ。)
疑心暗鬼、相互不信も、お互い様なのだ。それが国際社会というもの。いざとなったらどこの国も、自国の防衛のみで頭がいっぱいだ!!

  実は、横須賀、佐世保では、米国の海軍艦艇を、本国より技術的に上手に、安価に、更に迅速に修理できるし(工員、技術者の給与も日本側負担だ!)、中東への作戦に際しても、日本基地から発進することは、ハワイ、グアムからより地理的に近くて有利だ。何より、在日本基地からは、朝鮮半島、中国大陸、極東ロシアの3方面への睨みが利く、という意味でも、米軍にとってのメリットが大だから、駐留しているだけだ。だから、万一本格的な日中戦争などが勃発したとしても、米軍は必ず日本軍を支援するとは限らないのではないだろうか・・・?しかし、普通、軍隊とは、圧倒的に巨大な兵力がそこに存在するだけで、相手は攻めてはこないから、ある意味、日本にとっても平和は確保されうるのだ。つまり、米軍駐留は、日本にもメリットはある。特に、張り子の虎とはいえ、核兵器を持つ隣国に対し、核兵器を保有する(かもしれない)米国の軍隊が、日本領土に所在する、ということで、牽制にはなる。だが、多額の「思いやり予算」を何時までも支払う必要があるほど、米軍の駐留をありがたがる態度も疑問だ。小生は、「思いやり予算削減」に賛成だ。どうせ、メリットがなければ、米軍は自ら出ていくはずだ。

  本当は、「同盟」関係でも、常に双方が、実利面で、有益だといえる、利害を共有するような状況を、緻密に積み重ねていかないと、何らかの安全保障としての確実性も怪しいとも言える。もっとも、日本にしてみれば、最近のように中国が軍拡の度合いを深めてくると、やはり本土、沖縄、双方に米軍基地があるという事実は、抑止力として、少なくとも「でっかい張り子の虎」以上に、対中牽制力として、有効ではあろう。要するに、本当に米軍が、日本のために発砲までしてくれるか?などと、あまり心配しなくとも、実戦兵力が存在しているだけで、「金ぴかの張り子の虎」以上に、こわーーい案山子(かかし)役とはなってくれる、ということだ。「本当に愛しているの?、ねえ愛していると言って」などは、安っぽい男女関係にしか通じない話で、ことは国家と国家の安全と利害に関わることである。簡単に「約束」などしないし、約束しても、「違約」もあり得ると覚悟して、自前の国防努力を怠ってはならないのである。
  最近の産経紙には、航空自衛隊は、次期戦闘機選定作業が遅れているので、F2戦闘機(だったと思う)の国内生産を延長する方針だという報道があった。国産戦闘機を、退役していくF4戦闘機の代替機として、当面整備する、ということらしい。戦闘機の不足を長く放置するよりはましだし、高価すぎる外国戦闘機を買い付けてばかりいても、国内の飛行機メーカーが何時までも育たない。国産の安い兵器体系確率を狙って、国内メーカーに開発、研究で頑張ってもらうべきだろう(軍事専門家でもないので、あまり口出しすべきでは無いとも思うが、輸入に依存する兵器というのは、国防の本来の形ではないだろう)。

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内 容 ニックネーム/日時
 我が家でとっているローカル紙・河北新報には、パンナム機爆破事件リビア人受刑者の釈放のニュースは載っておらず、それに対する米国民の反応ももちろんありません。キャメロン英首相の釈明もなし、訪米後に訪印、インドとの軍事経済協力関係の強化を宣言したことだけは殆どベタ記事扱いでした。他の全国紙は不明ですが、産経はやはり異色なのでしょうか?

 そして河北新報は社説でもインドの核管理について文句をつけてますね。「唯一の被爆国日本は〜」と相も変わらず核アレルギーに訴える論調。唯一の被爆国云々のお体裁ぶった欺瞞にはむかつきますよ。河北など社説を書いた記者の名もないし、パチンコ屋と創価学会の広告がやたら多い新聞ですからね。

 ちょっと気がかりなのは、米国のCNNが日本のアダルトゲームを取り上げ、児童ポルノ野放し国とやり玉に挙げたことをネットニュースで見ました。世界で最もこの手のゲームやポルノが盛んなのは実は米国なのですが、何やら日本をスケープゴートにしようという意図がミエミエで、不愉快です。さらに腹立たしいのは香港出身の女タレントが典型ですが、日本国内にも同調者がいること。
mugi
2010/08/01 21:43
mugiさん、
 日米同盟については、日本政府としては重視してきたし、一部マスコミから小泉総理はブッシュ・ジュニアーに対し「ポチ外交」(忠犬・追随外交)をした、などと酷評されました。しかし、同盟がしっかりしている方が、やはり安定感があるし、東南アジア諸国も歓迎している。日米同盟の衰頽は、中国一極体制が、アジアで成立する可能性を増大させるから。

 BPの原油流出問題で、英米同盟がこのように危機的な状況にまでなっていたけど、日本では、マグロの産卵地が原油汚染で被害を受けるという、マグロ資源問題に焦点が当たる有様。マスコミも怠慢というか、産経紙はさすがに、米国、英国での取材陣がしっかりしていて、この問題に切り込んだのでしょう。ただし、米国、英国紙では、結構沢山の記事があるのではないか?なぜ、日本の他のマスコミは見逃すのか?不可思議です。

 また、日米同盟は、今回指摘したように、決して盤石ではないし、沖縄県民の意識は「負担」という、左翼系の感覚が強すぎて、日本政府の金銭的支援で沖縄世論が、ある程度緩和されているだけ、という脆さも感じます。日本国国民自身の国防意識がしっかりしないと、また「同盟」などを当然視していると、危うさは増大します。竹槍主義ではダメだけど、国防意識は、国民の自国防衛への決意、という要素も重要です。自衛隊の予算も、大金を高価な戦闘機、迎撃ミサイルといった武器体系買い付けにばかり使うという、意識は、考え物です。
 小生は自前の技術で、ロボット兵器(模型飛行機に武器を備え、ビデオの目で遠隔操縦)を充実して、航続距離も平壌、北京、上海などを十分カバー出来るような兵器で、しかも安価だけれど、巡航ミサイルなども発射できるもの、を開発し、配備すべきと考えています(攻撃兵器といえるけど、有効な防衛力は、攻撃兵器がなければ成り立たない)。
 
室長
2010/08/01 23:00

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