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zoom RSS 米国債保有の意味:中国の武器にはならない!

<<   作成日時 : 2010/12/13 14:51   >>

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 さて、ブルガリアの歴史に関し、系統的に連載を開始しているのだが、少し今回は脇道にそれ、国際経済関係について、論じてみたい。論題は、「中国が保有する米国債は、対米脅迫の武器となりうるのか?」ということだ。
12月11日(土)付の産経紙に掲載された小森義久氏の論評「中国の米国債保有で新考察」という記事は、中国に追い越されたとはいえ、同じく大量の米国債を資産として保有する日本国にとっても参考となる意味を有するだろう。
 他国の国債、特に覇権国家の貨幣による国債を大量に保有すると言うことは、相手国への輸出で急成長をした日本国が、貿易収支のインバランスを資本収支上の取引でバランスさせ、米国の対日苛立ちを緩和する手段とした、という70--80年代の「智恵」の産物とも思われるのだが、90年代以降の中国も、この日本のやり方を真似して、米国国債を大量に保有して、二国間の経常収支のバランスを取り、米国の怒りを緩和してきた、とも言えよう。
 とはいえ、結果として積み上がった大量の米国債の残高は、日本の場合は、橋本総理の時に少し「売り」脅しに似た言動を見せたことはあるものの、結局の処は、米国の軍事力に防衛の半分以上を依存している日本国としては、外交的に利用価値のある武器とはなり得なかった。他方で、中国の場合は、核大国として、安保理常任理事国として、米国とほぼ対等に渡り合える立場にあるから、それなりに上手く利用しているのではないか?と思われるのだが、実はそれほど「対米武器」にはなり得ない、というのが、最近の米国議会筋の研究で得られた結論であるという。
 以下、小森氏の記事を要約してみる。

1.ワシントンでは、「中国問題」が連日議論されている 
  小森氏の指摘では、最近はワシントンで、国際問題としては、なんと言っても「中国」が話題で、毎日のようにセミナー、討論会などが目白押しで開催されていて、一日にそういう集会が4件も集中することすらあるという。
 (小生注:70年代後半〜80年代にかけて、米国は日本の経済力の台頭に警戒心を抱き、80年代初頭にハワイにいた頃、小生も米国人と会うと必ず、「米国は、大量生産の工業部門を次々と日本に奪われていく。このままでは、航空機製造業くらいしか米国には残らない。日本も勝ちすぎると、米国からしっぺ返しを受けるぞ!」という、第二次太平洋戦争が再来しかねないような、敵意のこもった言葉を投げかけられることもあり、辟易したものだ。
  小生としては、米国産業の大きな部門を占めている軍需産業では、高度技術の鉄鋼製品とか、化学製品、或いは精密部品、精密工作機械などの供給で、日本がお役に立っているし、日米の経済は今後も補完関係を続けうるだろうと、楽観的に説明するしかなかった。最近の米国にとっては、日本は既に老齢化と、製造業の空洞化で、衰退軌道に乗ったから、安全パイであり、今度は、「世界の工場」に踊り出した中国こそが、警戒し、潰していくべき相手なのだろう。ともかく、競争相手に対する冷静な分析と、長期的戦略での対応という、米国の伝統手法が、そろそろ開始されているようだ。)

2.中国の米国債保有高 
  中国は、2010年7月時点で、香港の保有分と併せて合計9820億ドルの米国債を保有しているという。もちろん各国当局の米国債保有高の中では最大で、外国機関が保有する米国債全体の約25%に当たり、全ての米国債保有者の内でも12%を保有するという。この巨額の中国マネーは、米国政府の財政赤字を埋め、インフレ抑制にも寄与している。
  (注:2010年6月末時点で、日本は約8000億ドルの米国債を保有し、ほぼ中国と同水準だ、との8月17日付日経記事がある。中国(香港を含まない模様)=8437億ドル、日本=8036億ドルである由。)

3.中国の脅し? 
  米国を大企業に例えれば、いわば中国は最大株主の地位を占めたと言え、「中国は米国の弱みを握り、米国は中国に頭が上がらない」という診断が、日本、その他においても多く見られる。
 米国の中国マネー依存が、財政以外の政治、安保、人権などの領域でも、中国に対する姿勢、圧力を弱める威力を発揮する、との認識も生まれている。

 これらの見方を代弁するような動きもある。
(1)中国人民解放軍幹部が、「米国債売り」の威嚇発言をしたことがあった。
(2)温家宝首相は、「中国は米国に巨額の資金を貸している。私たちは、米国が信用を保ち、中国の資産の安全を保障することを求める」と述べたことがある。
(3)国家ファンド「中国投資有限責任公司」(CIC)の高西慶社長は、「米国の経済は中国など諸外国からの支援の上に成り立っている。特に資金支援を供与する国には、叩頭とは言わないが、丁重に対応すべきだ」と述べたという。
 何れも、中国が米国債保有により、米国の上位に立つのだ、というメッセージである。

4.米国は、中国マネーに脅える必要性はない、中国脅威は虚構だ! 
  ところが、そのような米中の力関係に関する見方は、虚構だという主張が、最近の報告書で成された。11月中旬に発表された米国議会政策諮問機関「米中経済安保調査委員会」の2010年度報告書だ。右報告書の中の「中国の米国債保有の意味」の章では、専門家達が、次のような見解を示しているのだ:

@中国の米国債大量保有は、米国への善意でも、影響力増大のためでもなく、対米貿易黒字からのドル資金を、自国内の資本取引規制で一気に集積するというやり方で、人民元の通貨レートを低く抑える効果を発揮させ、輸出を更に拡大する一方、ドル資金の多くを米国債購入で安全なドル表示資産として保つ・・・という自国の経済戦略を動機としている。
A中国が、米国債を大量に売れば、経済の高度成長、輸出大幅増加の継続、自国内の工場や生産機器への投資の拡大、というこれまでの経済戦略の基本が変わり、人民元レートも高騰する。
B中国の米国債大量売りは、ドルの価値を下げ、中国のドル表示資産全体の価値の大幅下落をもたらす。ドルの10%値下がりは、中国のドル資産全体に1500億ドルの損失を産むと推定され、中国自身が巨大な被害を受ける。
C中国がドル資産を売れば、他の外貨への切替が必要になるが、ユーロも円も、中国が従来、米国債に投入してきた水準の資金の受け入れに十分な規模も条件も有していない。現在全世界の通貨取引の85%を占める基軸通貨としてのドルの比重は、あまりにも大きい。

 こうした理由から、同報告は、「米国は中国の米国債大量保有を、圧力や武器として怖れる必要はない」との結論を出した。要するに、中国政府の代表達が、時折米国債の大量売却や、購入停止を、脅しのように提起することは、空疎である、と断じているのだ。

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内 容 ニックネーム/日時
 最近は日本のマスコミだけでなく、ネットでも個人主義のような欧米文明は行き詰っている、これからは環境や共生の時代だと主張する者も見かけます。しかし、私はこのような意見に懐疑的です。欧米諸国がこれまでのような優位は保てなくとも、新興国(中国、インド)のような国々のやり方が国際基準になるとは思えない。
 欧米を非難するのは結構ですが、その類には中国にはかなり幻想を抱く者も一部いる。ある海外在住ブロガーも「米国人に辟易して日本人は中国人になりたがっているはず」と書いていました。たとえ中国に憧れ、同化しようとしても、中国人が日本人に親切にするはずもないのに、煽動にしてもお粗末。

 ただ日本と違いあの国は大量の武器ばかりでなく、莫大な数の人口という「生物兵器」を抱えているから厄介です。人権や人的損害を顧みない国とそうでない国、旗色は悪そう。
mugi
2010/12/15 22:06
mugiさん、
 1970年代、80年代、中国外交官達は、「中国のように貧しく人口の多い国家では、まず国民を食べさせることこそが、第一の人権である。衣食住を10億の国民に保障すること、飢え死にを防ぐこと、災害時の救済に努めること、これが中国政府がやっと何とかカバーしつつある人権だ。それ以外には、貧しい国家として、まだまだ手が回らない」という言い方で、米国の人権要求などに反論していました。
 その頃には、小生も、その通り、まず食わせること、それが最低限の人権で、それを確保して後の「自由」だと思いました。
 でも、今は経済大国ですから、話は違うし、国際常識に従うべきですが、どうもやっていることは、社会主義国としての政策でもない、要するに「皇帝」の時代に逆戻りしているように思う。
室長
2010/12/19 17:54

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