ブルガリア研究室

アクセスカウンタ

zoom RSS エネルギーを巡るブルガリアとロシアの対決

<<   作成日時 : 2011/07/31 22:24   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 0

 最近のNovinite.comネット英字紙報道によると、7月27日(水)から、ブル政府は断固たる決意の下、ブルにおける石油業界をほぼ独占するロシア系企業に対し宣戦布告した模様だ。

この戦争により、当面少なくとも数ヶ月間は、ブルガス市に所在するブルガリア国内唯一の精油所が一時操業停止状態となることから、夏のバカンス時期にもかかわらず、石油製品の供給不足(特に、航空機用ジェット燃料)が生じる虞も出ていて、政府は市場の監視、石油製品の需給関係モニター、黒海沿岸のVarna空港、Burgas空港用に、ジェット燃料の国家備蓄を開封するなどの対策が採られている由。

 そもそも、1989年年末から始まった自由化後も、ブルガリアはロシアのエネルギー企業(天然ガスはGazprom社、石油はLukoil社、原発用燃料棒もロシア製)に経済の首根っこを押さえられた状態が継続してきており、このようなエネルギーの対露依存に関しては、自由化後のブル戦略を黒幕として指南している在ソフィア米大使館(米大)も、再生可能エネルギーの導入、ブル経済のエネルギー効率の向上などに尽力して、依存度を削減するように助言してきた由(最近、WikiLeaksのバルカン版で、08年10月の米大公電が暴露され、この趣旨の勧奨を米大がブル側にしていたことが明らかとなった)。
 この、エネルギー戦略に関わるブルガリアとロシアの対決に関し、少しご紹介する。

1.ブルガリア側の宣戦布告
  本件ロシア系企業とは、Lukoil Bulgaria社で、ブル蔵相、税関長などが、1年以上前から法律による規定に基づき、このロシア系企業に対して、技術的な対応をすべき旨警告してきた(本当の機器装着期限は6月26日)にもかかわらず、また6月には1ヶ月以内に対応すべき旨再度警告したにもかかわらず、ル社側が順法精神を示さず、原油タンク、及び石油製品タンクのそれぞれに、必要な容量計測用の電子計測機器を装着する作業をなかなか開始せず、遂に堪忍袋の緒を切らしたブル税関当局(Vanyo Tanov税関長)が、ル社の原油精製、石油製品販売両ライセンスを一時停止する旨通告したのだと息巻いている(7月27日)。

 もっとも、ブルガス市のNeftichim精油所(ル社がオーナー)の構内から外に、既に出荷された石油製品の在庫に関しては、ル社は今後も販売が可能と説明された。

2.ル社側の弁明
  Valentin Zlatev・Lukoil Bulgaria社CEOは、上記のブル政府側態度に対して、7月22日に行われたSimeon Dzhankov蔵相、Tanov税関長らとの会談・交渉では、2011年年末までに毎月少しづつ機器設置を遂行し、年末時点で完了すればOKというような感触での話し合いであり、何らせっぱ詰まった時期をせかされたと言う認識はなかったので、全く心外なことだと主張。

 電子計測機器も、結構多額な投資を要する(これまでに装着した分で16百万Lv、まだ装着してない部分のみでも11百万Lvの費用がかかる由。なお、1ユーロ=2Lvの固定相場制)し、技術的にすぐ同時に設置が可能というほど容易な作業でもないし、更には、製造免許、販売免許も取り消されたから、当面精油所の操業そのものを一時停止するしかない。

 その上、一時操業停止してしまうと、精油所の再開には、最低でも1ヶ月半の時間と、7百万Lvものコストがかかるのだ。
 たしかに未だに電子計測器の装着は完了していないが、これまでのシステムでもきちんと在庫燃料の量は把握できていたし、歳入庁との間でもトラブル無くやってきたし、原油の輸入量、石油製品在庫量などに関して、税関当局がいうような、数量把握が不十分だ、というような事態は、何ら存在しなかったのだ。当社が密輸企業だとの一部報道は、事実無根も甚だしい。

なお、Z社長は、過去11年間ブル企業としてのLukoil Bulgaria社は、ブル国家に対しての最大の納税者であったし、最大の輸出業者で、しかも投資者でもあったと、その功績を自賛した。納税総額で213.3億Lv、投資額では23.5億ドルだ。

3.背景説明
  Novinite.com紙に掲載された他の報道では、元来Zlatev・Lukoil Bulgaria社社長は、ブルガリア歴代政権の「後部座席」を占める黒幕的存在(影の政府司令室)で、特に現在のBoyko Borisov首相とは仲がよい(30年来のつきあい)とされてきたので、今回の唐突な「対決」は、単なるショーの一種と見る向きも多く、特にスタニーシェフ前首相(野党BSP党党首)などは、「一体何を見せようという猿芝居だ?」と皮肉っていたほど。

 しかるに、ボ首相は、「自分は、首相職に就任すると同時に、従来の友人関係も、緊密な友情なども、もはや何ら関係はない、自分は国益のみに奉仕する」と宣言したはずだと、これらの論調に不快感を示し、ル社側は法律を遵守するのみで、これ以上何ら交渉の必要性も、猶予もあり得ないのだと突き放した。

要するに、一般の見方としては、ル社が従来からロシアの石油資本の立場、利害を代弁して、しかも裏金献金などでブル政府を影から糸を引いて操ってきたのだから、今回の猿芝居は一体何事だ、と見ていたら、どうやらブル当局側は本当に激怒しており、ル社を屈服せしめるべく、全力対決している、ということが段々判明してきたと言うこと。

4.タイミングいいBalkanLeaksによる米大公電の暴露
  今回の、ブル国エネルギー戦略の成否をかけたロシア側との対決には、凍結されたベーレネ新原発建設工事を巡る、ロシア側との訴訟合戦(露側が、原子炉機器に関するブル側の支払期限無視、未払い問題を、国際仲裁裁判所に提訴したのに対し、ブル側も、ベ原発旧機器買い取りに関する支払いが露側から未払いのまま放置されている、として逆提訴した)との絡みでの、両国間の対決の延長との見方もある。

 何れにせよ、ブルとしては、米国の勧奨(本件漏洩公電で、米大が常々ブル政府に対し、エネルギー面での対露依存を引き下げるようにと勧めていたことが暴露されている)に従って、対露依存度を引き下げる必要性もあり、かつ、米国の勧奨によって、ブル国内における「エネルギー取引の透明度を向上」させようという政策を、断固推進する決意を示している、と見ることが妥当なように見える。
  (注:米大公電については、次を参照:http://www.novinite.com/view_news.php?id=130697)。

  なお、次回は、本件関連の「ブルのエネルギー戦略」に関する漏洩米大公電の内容をほぼ全訳したので、その内容をご紹介します。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
Lukoil Bulgaria社の大型投資
1月25日(水)付のNovinite.com紙掲載記事( http://www.novinite.com/view_news.php?id=136072)は、Lukoil Bulgaria社とブル政府の間の昨年夏以来の「対決」に終止符が打たれ、Burgas市所在の同社精油所に、新たに15億ドル規模の新装置建設投資がなされる、との記事である。 ...続きを見る
ブルガリア研究室
2012/01/28 12:16

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
エネルギーを巡るブルガリアとロシアの対決 ブルガリア研究室/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる