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zoom RSS 「円高と日本の進路」:ケインズ流政策は既に無効

<<   作成日時 : 2011/10/21 16:17   >>

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円高と日本の進路」について


9月23日付のこのブログ記事で、小生は、円高を押さえ込む方法は、簡単には見付からないので、円買いの為替介入などは無意味だ、むしろ海外企業の買収など、円高を利用する戦略を選ぶべきだと推奨した。
  また、ケインズ流の、公的資金注入による景気浮揚策も、財政規律無視の政府借金の拡大も、もはや有効ではない、と論じてきたつもりだ。その理由として、小生は、現在の先進国不況は、労賃の安い新興国に成長拠点が移動しているので、先進国では需要の伸びも、購買力の増大も、一時的現象程度の弱いものでしかあり得ず、基本的には、先進国は共通して衰退軌道に入っているからだ、と論じてきた。

   ところが、今日(10月21日)、新聞切り抜きと整理をしていたところ、10月12日付産経「正論」欄で、著名な経済学者中谷巌(なかたに・いわお)氏(現在は三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長との肩書きである)が、根本的にはほぼ同じような視点であるとは思うが、もはやケインズ流政策でのGDP成長回復などというのは不可能との議論を、実に明快な形で論じておられるのを発見した。毎日、一応は新聞に目を通してはいるのだが、普段はささっと流し読みして、詳しく読まないことも多いから、見逃したようだ。
  この中谷論文は、極めて的確な視点(小生も、これまで読んだことのない)を含んでおり、読者の皆様にも参考になると思うので、下記に要旨をご紹介したい。

★題名:「超円高には、大胆な発想の転換を」
1.ユーロ危機は本当に収まるか?
 ドイツ、IMFが事態収拾に努めてはいるが予断を許さない。ギリシャ債務危機救済に失敗すれば、イタリア、スペインにも波及して、EUは空中分解するだろう。

2.アメリカもリーマン・ショック後遺症に苦しんでいる
 FRBが昨年(2010年)、6千億ドルもの米国債を引き受けるなど、大規模な景気対策を断行したが、経済は低迷を続け、巨大な財政赤字だけが残った。
 その結果、世界一安全なはずの米国債が格下げされ、格差是正を求める「貧民」デモがウォールストリート、全米に広がっている。

3.日本は、先進国で先頭を切った
 「失われた20年」を経験した日本は、欧米より20年も早く、「先進国病」を患った。この間日本は、不況脱出のため、積極財政金融政策を採り続けたが、名目GDPは逆に減少した。もはや伝統的なケインズ政策は効かないのだ!欧米経済も今後、日本と同じ道を辿るだろう。

   (注:小生同様に、中谷先生は、もはや不況時は政府が財政出動せよ・・・赤字国債で資金調達して、これを民間部門にじゃぶじゃぶ供給せよ・・・という議論では、どうにもならない、そう言う経済構造・経済段階へと変化している、という立場だ。未だに、ケインズ先生お勧めの、政府資金の注入で景気浮揚すれば、税収も増える、などという、既に失敗を重ねた政策を主張する人々が、産経紙の編集員にすら居ることが、小生には不可解だ。亀井静香先生も、相変わらず、財政出動せよ、と古い理論を唱える。ケインズ流政策は、既に無効なのに!)

4.成長のフロンティアが消えた
 何故、先進国経済は軒並み長期低迷に陥ったのか?一言で言えば、産業革命以来、西洋資本主義が成長の源としてきた「世界のフロンティア」が消滅したからだ。

(1)植民地領土の消滅
 領土的には、植民地主義が終わった第二次大戦後から、フロンティアは消滅し、先進国の資源支配力は弱まった。

(2)米国による世界的な「金融空間」の創出
 しかし、戦後の覇権国家米国は、グローバル資本が自由に国境を越えて流通することが可能な「金融空間*」という、新たなフロンティアの創造に、暫時成功した。
(*中谷注:水野和夫著『終わりなき危機−−君はグローバリゼーションの真実を見たか』参照)
「金融空間」の創出により、米国は、世界中の資本を呼び寄せ、成長経済を維持することに成功したのだ。

(3)「金融空間」も崩壊 
 しかし、アメリカに富をもたらした「金融空間」も、リーマン・ショックで既に崩壊した。
 その結果、今や先進国にとっての「成長のためのフロンティア」は消滅したのだ。これが先進国経済低迷の根本的原因なのだ。 

(小生注:中谷先生は、米国ウォール街の「金融の天才達」、或いは、ヘッジファンドという、金持ち達が不正に蓄財したタックスヘイヴン(課税回避地)資金を利用する、PC技術を多用するプログラムで成立している、新金融技術=金融詐術による、怪しげな投機市場(裏金融市場と言うべきか)を、「金融空間」などと、少しきれい事の用語に置き換えておられる。現職が、「三菱UFJ系企業」に雇用されているから、「金融詐術空間」などとは書けないからだろう。

  しかし、有り体に言えば、実は実需と成長分野への投資、金融提供という元来の普通銀行、投資銀行的あり方から、大きく乖離して、ヘッジファンド的な、リスキーな投機市場で、偽りのリスク査定とかで投資家らを騙しつつ、住宅投資とか、商品市場で、滅茶苦茶な形での投機を煽ったりして、裏金融市場を膨張させ、レヴァレッジと言っては、手持ち資金の何倍もの金額を投機に回させたりした、冒険主義的な金融技術至上主義のあり方が、当然のようにバブルがはじけて、崩壊した、というのが、リーマン・ショックの実態だ。
  元来の健全な銀行業界から遊離した、冒険主義的金融市場、裏金融市場こそが、この「金融空間」なる用語にひそむ実態だった。雲散霧消して当然なのだ。・・・本当は、未だに租税回避地には、相当金額の蓄財(裏金融の原資)が眠っているが、今は金持ち達も虞をなしていて、投資をしないし、むしろ投資を引き揚げさえしている。)


5.円高のみが残った−−ドル安、ユーロ安は当分続く
 先進国経済が低迷し、世界の金融市場が激震する中で、円の対ドル・レートは、第二次大戦後の国際金融秩序を決めたブレトンウッズ協定以来、360円→76円台へと、実に4.7倍にもなった。
日本は、巨額の国家債務を抱えているが、それでもドル、ユーロに比べれば信用できる、ということなのだ。その理由は、日本が「対外債権国」だ、という単純な事実の反映でもある。国家債務は大きいけど、当面、欧米ほどは危なくはない、ということなのだ。だとすれば、当分円高は続くと見るべきだ。

6.円高の日本は何をすべきか?
 3点のみ指摘する。
(1)円高を利用せよ
  円高を悲観するのではなく、これを積極的に活用すべきだ。国内産業空洞化を防ぐために、円安に誘導すべきとの意見が強いが、これは不可能だ。欧米経済の深刻な状況を見れば、為替介入が意味を持たないことは自明。

  ここは、発想を変えて、円高をとことん活用するという考え方に転換すべきだ。
例えば、円高によって安価となった海外資産(企業)をM&Aで積極的に取得すべきだ(買収すべき)。
  確かに、日本企業がグローバル経営に乗り出すのは、日本の経営資源の貧弱さから、生やさしいことではないが、腹を固めるしかない。

(2)高齢化関連産業を振興せよ
  高齢化先進国としての日本は、医療、介護、福祉、教育、文化などの分野で、最先端の商品・サービスを開発する、という発想を持つべきだ。
  従来自動車・家電という若者向け輸出商品の開発に集中してきた経営努力を、高齢者向け商品・サービスの開発に振り向けるのだ。
  世界に先駆けて、高齢化社会の先端産業モデルを創り上げるのだ。

(3)環境技術、再生エネルギー
  既に多くの識者が強調しているところだが、環境技術、再生エネ技術に磨きをかけ、日本が世界に不可欠の国家となることだ。
  何れにせよ、日本人に出来ないことではないと思う。

(小生注:円高を利用せよ、とは前回小生も指摘したが、小生には、モノヅクリ産業しか視野になかった。
  確かに、今後の成長分野として、医療、介護、福祉、教育、文化という風な分野を見据えていけば、技術開発、或いは、システム開発で、それなりに日本人は能力を発揮できるだろう。

  最近のTVなどでも、介護分野で必要なロボット技術などを開発し、効率化していけば、女性介護士などが、腕力をセーブしながら、老人の入浴介助を円滑に出来ると、将来の方向を示していた。筋力補助ロボットで、歩けない老人が、歩けるようにもなる、と言う方向すらあるらしい。(ちなみに、この技術は、半ロボット軍人=筋力人工強化軍人、という軍事技術の分野とも重複するらしいのだが)

  文化でも、アニメ映画などが国際社会で受けているのは、日本人の「優しい系の心」を描く姿勢が、各国の若者に共鳴されているのだろう。
  教育では、公文式などが、外国進出もしているらしい。

  工夫すれば、あらゆる分野で、新しい産業を開発できるはずで、家電企業も今後は、医療、介護、ロボット、或いは、再生エネルギー分野、などに、もっと開発努力を傾注すべきなのだろう。
  そう言えば、省エネ住宅などの住宅関連技術でも、日本は世界進出できるのではなかろうか?現地の安価な素材を活用して、各国の気象条件にあった住宅、或いはオフィス建築物を開発していけば、住宅産業も海外進出できるし、外国で開発した安い建材などは、国内に輸入も出来るだろう。)

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論点3で、日本は、不況脱出のため、積極財政金融政策を採り続けたが、名目GDPは逆に減少した。
と書かれていますが、
公共事業は阪神・淡路大震災があった1995年以降は減り続けているのが現実です。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_32.html#Kensetsu
リンクされている国土交通省のPDF概要と要点3ページ目、
「建設投資額(名目)の推移」をご確認ください。
スだまり
2011/10/22 12:48
スだまり様、コメントありがとうございます。
 この項も中谷先生のご意見なので、小生は必ずしも責任は負えない。
 ただ、小生の考えでは、不況脱出のための積極財政とは、90年代初期の公共投資ばかりではなく、その後の、財政均衡策をとらず、赤字を垂れ流しを続けることも入っている、と思う。単に建設国債とか、公共事業のことばかりとは言えない。もっとも、あまりに公共事業費をバンバン使ったので、95年には息切れしていたと思う。
 既に、日本政府は、毎年収入の倍近い歳出を続けています。消費税の増税に踏み切れないし、所得税増税にも踏み切れないで、だらだらとポピュリズム・民意迎合主義政治をしているから、政府支出のカットが出来ず、社会福祉、子育て支援、などの歳出ばかりが膨らむ。今現在も、やはり日本は、赤字依存の積極財政のママ、不況の中にある。結果として、GDPの200%という途方もない累積赤字を抱えているのは、世界でも日本だけです。
 小渕総理が、世界一の借金王と苦笑しつつも公共事業投資したのは、米国の圧力もあったろうけど、恐らくは、ケインズ理論で、景気回復すれば、税収も増え、収支均衡に戻れる、という甘い期待があったと思う。だけど、実は景気回復はなかったし、税収も増えなかった。
 今、米国も、西欧も、金融機関に公的資金投入すれば、金融緩和すれば、なんとか今回の金融危機を乗り切れると考えている。ところが、先行した日本の経験では、もはや少しぐらい金融緩和しても、景気回復も、不良債権の帳消しも、すぐには達成できない。だらだらと何年もかけて、ようやく少し帳簿が整理できるだけ。

 中谷先生は、先進国にはもはや「フロンティアがない」から、公的資金投入しても、日本の失われた20年と同じで、何ら景気は上に向かわないのだ、と断言しているのです。
室長
2011/10/22 15:28

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