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zoom RSS 先進国不況・停滞に対する日本式療法

<<   作成日時 : 2012/01/05 12:25   >>

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読者の皆様あけましておめでとうございます。今年も、色々書いていきたいと思っています。
 昨年末から、今年年初に当たり実行したことは、昨年度貯め込んでしまった新聞切り抜き記事の項目別クリアファイルへの整理とか、切り抜き作業が渋滞してしまった英国旅行期間中の産経新聞の山と格闘することでした。
 そして、その作業を通じて、一つの注目すべき記事に遭遇しました。これは、昨年12月9日(金)付産経紙に掲載されていたリチャード・クー氏(野村総合研究所主席研究員)の特別講演要旨です。
 この講演は、先進国におけるバブル後の経済政策としては「日本の教訓を生かせ」と主張する、珍しく日本の経済政策を肯定的に評価する内容で、しかも説得力があるように思えるものです。

 経済問題に関しては、インフレ警戒、財政均衡(緊縮財政)重視型の視点と、逆に、政府は思い切ってジャブジャブお札を刷って、銀行、企業にお金(公的資金)を供給して救済し、景気回復を迅速にすることで、不況を乗り切れるとする、蛮勇型との二つの言説、理論が産経紙の記事でも並行して流れる有様で、なかなか我々素人には、どちらの選択肢が正しいのか分からなくなることが多い。
 その中で、リチャード・クー氏の説明は、なかなか理論的にも分かりやすい分析で、これまでで小生としては一番納得がいく説明に見えるので、ご紹介したい。もちろんこれを読んでも、現下の経済的諸問題の解消方策は、必ずしも見えては来ないのだが、少なくとも現下の問題の根っこは見えてくる。

1.流動性供給は増えているが、マネーサプライ(通貨供給量)は増えていない!
 08年9月のリーマンショックから、日本では鉱工業生産が回復基調にあったが、東日本大震災で再び落ち込み、現在急速に回復しつつはあるが、もたついている。理由は、輸出先である海外が原因。

 先進国経済を見回すと、米国の鉱工業生産は、未だに05年の水準だ。西欧では、ドイツだけが過去のピークに戻ったが、フランス、スペインの鉱工業生産は1997年の水準でしかない。

 マネーサプライも回復していない。各国が量的緩和策を採ったから、お金は市場にジャブジャブだと思うだろう。確かに中央銀行が供給する流動性は大きく伸びた。もっともこれは、中銀が国債などを買い取って銀行に資金供給するもので、民間企業がすぐに使える金とは違うのだ。銀行が貸し出し、借りた人が使ったお金が銀行に返済金として戻ってきて、また貸す。銀行預金が増え、民間が自由に使えるようになったお金が増えてこそ、これがマネーサプライと言える。実は、この民間が自由に使える段階での資金が、ほとんど増えていないのだ。
 本来、中銀が流動性を1割増やせば、マネーサプライも1割増えるのだが、リーマンショック後はそうではない。米欧は、マネーサプライがほぼゼロと言うほど低迷しているのだ。景気が良くなるはずがないのだ。

 過去の例で見れば、日本が97年金融危機に直面し、日銀がマネタリーベース(資金供給残高)を増やした。米国の学者達は、この「量的緩和で日本経済は良くなる」と主張したし、日銀はこの圧力に押された。だが、マネーサプライの増加は極めて緩やかで景気は回復しなかった。日本が経験したことが今、世界中で起きている。

2.世界でも稀な成功例=日本
 普通は、貯金する人と、お金を借りる人が双方にいて、銀行経由でマネーサプライが増える。ところが、ゼロ金利でもお金を借りる人がおらず、むしろ金を返す人ばかりがいる。借金返済と貯金で銀行にお金が集まってくるが、借りる人がおらず銀行からお金が出ていかないのだ。
 日本企業の借金返済が多かった時期は、返済資金が年間30兆円、家計部門の貯金が20兆円、合計50兆円分の所得が減って、毎年GDP(約500兆円)は1割減ってもおかしくはなかった。ところが、それでもGDPはバブル期のピークを下回らなかった。政府が借金して使ったからだ。

 結果として巨額の政府債務の累積を抱えたとはいえ、これは世界でも最も成功した経済政策の一つなのだ!!
 政府が借金して使わなかったなら、GDPは大幅に落ち込んだはずで、極めて安い買い物と言える。どんなに大きなバブルが発生して崩壊しても、当初から正しい財政政策で対応すれば、GDPは維持できると言うことを、日本が世界で初めて示した教訓なのだ。

  (小生注:1989年のバブル絶頂期以来今日まで、GDPが約500兆円規模でほぼゼロ成長の期間が、これまで約20年も続いていて、普通は「失われた20年」と称される。また、今ではGDPの200%を超えてしまった政府の累積債務については、やはりこれ以上赤字を増やさず、最低でも財政収支均衡(赤字国債の新規発行ゼロとする)に持って行かないと、日本国債は誰も買い手がいなくなって大暴落し、金利が急上昇し、円という通貨の為替レートも大暴落して、超インフレ時代がやってくるとの危惧が主張されている。
 
  この普通の見方に比べると、クー氏の主張は超肯定的で、びっくりする意見ではあるが、先進国全体として、経済停滞が普通で、経済規模の拡大はもはやない、という病原がはっきり見えてきたので、「GDPを維持できたと言うだけでも、大成功だ」、という視点は、興味深い。

  もっとも、GDPの200%を超えた赤字国債の累積を前にしても、まだまだ緊縮財政への転換に反対する意見、成長万能神話に基づく無責任な意見が多いことには、呆れる
。)

3.悲劇のユーロ圏
 債務危機はユーロ圏以外では起きていない。ユーロ圏でも、実は家計と企業が貯金している。にもかかわらず、ポルトガル、アイルランド、スペインの金利が下がらない、そこがポイントだ。

 例えばスペインの投資家は、ドイツ国債も買えるし、オランダ国債も買える。だから、スペインの財政赤字大きくて心配になると、スペインの貯蓄が大量にドイツに向かう。同じことがポルトガルやギリシャでも起きる。国内で貯蓄を産み出しているのに、資金が外国に逃避して、政府が借金しようとしても国債の金利が上がりすぎて、国債が発行できないのだ。
 よって、政府は資金調達できず、財政再建を進めようとする。民間が借金を返済し、政府も財政再建すれば、経済はデフレスパイラルに落ち込むのだ。

 数年前には、資金の流れは逆で、独仏の銀行は、猛烈な勢いでスペインやポルトガルの国債を買っていた。バブルだったからだ。それが崩壊すると、資金は一斉に逃げる。政府が借金しなくてはいけなくなったときに、資金がないという破滅的な資本移動が起きているのだ。これがユーロ圏の問題だ。

 解決策はある。ユーロ圏の全ての国が、国債を自国民にしか売ってはいけないとのルールを導入することだ。貯金が国内に残って、金利が下がれば、債務危機にはならないのだ。日本のように、不況に陥っている国では、財政出動が必要で、財政再建を優先すべきではないのだ。残念なことは、ユーロ圏で財政出動すべきだ、という声が聞こえてこないことだ。
 日本では、1997年と01年にマイナス成長があった。97年に橋本政権、01年に小泉政権が財政改革に取り組んだことが原因だ。財政出動で支えられていた経済が支えを失い、税収が落ちて、財政赤字が増えた・・・・失敗だったのだ。
 ユーロ圏では、日本の教訓に学び、今の債務危機を乗り切るためには、財政出動すべきなのだ。財政再建に凝り固まれば事態は更に悪化し、世界中に不況が波及してしまう。

  (小生注:確かに、世界的な大不況を前にして、今の段階で西欧では財政再建にばかり議論が及び、経済安定化への積極策、展望が語られないのは、困ったことだ。しかし、実際には、バブル期にも、民意に迎合して国債を発行し、赤字を拡大しつつも歳出を増やし、好景気を演出していた、という失政があったのだ。

  だから、不況期に冷水を浴びせ、少し節約癖をつけておかないと、何時までたっても放漫財政を平気でやって、国民を甘やかすことになる、という議論にもそれなりの真実がある。重要なことは、きちんとした徴税体制を整備、再確立し、財政規律を締め直し、借金依存という悪弊を絶ちきることだ。こういう緊縮型の方が、普通の経済感覚・家計感覚からは、むしろ理解しやすい理論である。
  ともかく、ギリシャのように規模の小さい経済の場合、国債市場の規模も小さいから、危ないという警報が出ると、一斉に皆が資金を引き揚げるから、金利はとてつもなく急上昇してしまう。

  元来が、ユーロという統一貨幣の利点は、EUという大きな経済という信用で、小国ギリシャでも、安い金利で国債を発行でき、借金できるということだったはず。ところが、自国の貯金が、ドイツ国債に向かい、自国の国債を買わない、という、そういう欠点も秘かに抱えていたことが判明して、ユーロ圏の危機となっているようだ。
  危ないことに気がついた市民が、今後益々自国の国債など買うはずはないだろう。また、EUは、資金も、人も、預金も、自由に移動できる共通市場なのだから、「国債は自国民しか買えない」という新たな制度へと転換することは、理論上から言っても、困難を極めるはずだ
。)

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