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zoom RSS 核兵器と札束外交

<<   作成日時 : 2012/02/18 10:35   >>

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最近の習近平中国国家副主席の訪米関連報道を見ていて、小生としては幾つもの疑問がわき起こってきた。主として、中国外交に関して、日本のマスコミ報道が、自国の外交当局に対する場合と、余りにも異なった反応、対応をするからだ。
  要するに、自国の外交には、何時も厳しく批判し、特に対米外交での「譲歩」に関して手厳しいのに、中国が日本国以上に「叩頭外交」に徹しているのに、そのことを決してあげつらうことをしないことが、全く不可思議なのだ。
  この小生が感じる不可思議さ、そしてその不可思議さにさえ鈍感らしい、日本国の識者、マスコミなどの、奇妙な心情、感性にこそ、日本国の国際常識の無さ、不可解な対米劣等感覚を見る思いがする。
  では以下に、小生の違和感とそれに関する解釈に関して、論述する。

1.大国中国の首脳が訪米する度に、札束を献上する不可思議さ
(1)習近平次期主席=2兆円
習近平中国副主席(次期中国国家主席)の訪米が、完了したようだ。この訪米において、中国が米国内の貿易不均衡、人権無視(チベット、ウイグル族に対する弾圧問題など)に対する不満を緩和するために、ばらまいた金額が、大豆輸入など米国産品買付約束に使われた2兆円もの資金である。

(2)胡錦涛=3兆7千億円
 また、1年前の2011年1月に胡錦涛国家主席が訪米した際にも、ボーイング旅客機200機の買付などのために、3兆7千億円もの大金が使われたという(http://blog.livedoor.jp/amuro001/archives/2412958.html)。

2.大国中国も、外交で何時も米国に負けているのか??
 さて、何故小生が今回、このような中国による「気前よい対米札束外交」を取りあげるかというと、従来日本国内での議論で、日本国の「対米追従外交の愚策」と国内世論の厳しい批判を浴びてきた、対米経済交渉における「何時も負け続ける日本外交」という、そういう議論について、上記の2つの中国の例を「反面教師」として対照してみるべきではないか?と言う疑問に駆られたからだ。

 そもそも、日本の国内の議論、マスコミ報道では、日本国は「外交小国、いつも対米敗北外交」という趣旨での議論が普通で、国民の脳裏には、何時も日本は損してばかりだ、米国の「理不尽な」要求に対して、日本国首脳(或いは外交当局、経産省、財務省)は叩頭するばかりで、何らの有効な反撃もしていない、との不満の声が高い。しかし、よーーく上記の2例を見て欲しい。他方で、日本国の首相が、政権就任直後に、ほぼ毎回のごとく訪米し、米国大統領に対して挨拶を繰り返してきているが、その際に、何らかの巨額の「お土産、挨拶料」を携えていった例があるだろうか?

3.中国の札束献上には、何故日本国のマスコミは静観するのか?
 要するに、これまで日本国内では、「対米譲歩」という、日米外交の中での「後退」が報道される度に、国民は表面諦めつつも、「腹の底では、憤りにふるえてきた」、という戦後の歴史を繰り返してきたと思う。そして、その際の、対米切り札の無さの根源としては、核兵器を持たず、また強大な軍事力を持たず、その故に、「防衛を対米依存している」から、このような苦渋を常に甘受させられるのだ、という議論が主流だったと思う。だから、日本国も憲法改正して、軍備を合法化し、核兵器も自主開発して、米国の「外圧」などは決然と跳ね返して、独自外交する能力を、基盤を持たなければならない・・・これが、日本の右派の立場であった。

 他方で左派はというと、中国、またはロシアというユーラシア勢力への不可思議な「憧れ、期待感」を心底に持つ故に、「軍事力も、核兵器も不要だ。中国、ロシアと友好関係を築いて、仲良くしていけば、何ら防衛力など不要」という、夢想的平和主義の立場から、何事によらず、「対米追従、対米叩頭外交」が問題の根源として、非難してきた。

 ところが、上記2例の、中国の「対米隷従、叩頭外交、札束外交」の事例を見ても、日本のマスコミには、そのようなコメントは一切見られない。自国の政府が同じ事をやったら、国民はどう反応するか、という視点が全く欠けているのだ。これは実に不可思議なことだ。自国の外交は、けちょんけちょんに貶すけど、中国なら、対米叩頭しても、日本国のマスコミは、結構なこととして(?)、傍観している気がする。

 あるいは、2兆円、3兆円の金を出しても、米国世論を緩和するためには、中国としても「必要経費」を出しただけ、と静観するというのだろうか??湾岸戦争の戦費のツケを数百億ドル後払いさせられて、「兵士の生命、血を出し惜しみする国は、キャッシュディスペンサー扱いされても当然だ、今後は日本も自衛隊を戦地に送らないとダメなのだ」と言う議論が沸き起こったことも記憶に新しい(注:この議論自体は、小生も賛成)。それでは、今回の中国の札束献上は、どう解釈するというのだろうか??また何故、中国国内からは、同種の疑問が出てこないのだろうか(どうせ、中国国内に議論の自由はないにせよ)??しかも、中国は、ごちごちに核武装している「核大国、国連常任理事国、P5」ではないか!!

4.核兵器大国が、どうして「札束」で、ご機嫌取りするのか??
 結局小生には、核兵器大国で、日頃「元の切り上げ要求」にも、断固屈しない中国が、何故「要人訪米」の度に、巨額の札束攻勢で、米国世論対策をするのか、未だに不可解だ。

 この理由としては、次のような論点があり得るかも知れない:
@中国は昔から、北狄、西戎などの武力勢力、蛮人国家に対して、黄金、銀、絹布などの「献上金」を支払うことで、「平和」を得てきた歴史的記憶があり、そう言う伝統的な手法に頼ってしまう。すなわち、自国の国力が相手を上回る軍事力整備に成功するまでの「時間を金で買う」伝統から、こういう発想となる。
A実際には、USTR(米国通商代表部)が、「元切り下げをしないなら、それへの慰謝料として、米国から買い付けろ」と圧力を行使しているので、嫌々応じている。(注:小生としては、プライドの高い中国が、圧力に屈して、札束を切るとは思えない。)
B中国人の発想では、要人が外国訪問したときに、余りにも激しい「反中国デモ」の波を浴びるのは、国内政治発想で耐え難い屈辱であるので、要人に「恥をかかせないために、それなりの土産代」を持参させるのが、臣下(共産党官僚)達の務めだから。
Cいくら核兵器を持つとはいえ、核戦力、実際の核兵器使用技術では、未だに米国に大きく劣る上に、通常戦力では未だに大きく立ち後れているから、当面は自重し、札束で米国の警戒心を緩和しておく必要性を感じているから。
D結局は、核兵器は、自国防衛を確実にするための最後の「張り子の虎」であり、使えない兵器だから、いくら核兵器を所有していても、中国が米国の圧力を完全無視できるほどの、外交的優位を確保できるわけではないから。  

 特に小生としては、上記Dの視点を今回の事例から感じてしまう。そもそも、北朝鮮が核兵器を所有していても、それを安易に使えば、米国は本格的に核兵器で報復するであろうから、結局は使えない。(もちろん、北朝鮮が日本に核を打ち込んだら、自動的に米国が核兵器を使うか?と言えば、必ずしも自動的とは言えないかも知れない。しかし、日本領土に自国兵を展開している米国が、何もせずに傍観することはあり得ない。)

 イスラエルも、所有する核兵器を、イランのウラン濃縮工場破壊のために使うかというと、恐らくそれはなく、通常兵器(ただし、地下への貫通弾を使うだろう)での爆撃となるだろう。何故、イスラエルが、核兵器を使わないか、というと、この兵器は、自国存亡の危機に瀕したとき、最後の防衛手段としてしか使えない、という種類の兵器だと自覚しているからだ。北朝鮮とて、同様であり、例えば、国内の反体制デモが勢いを増して、金正恩(キム・ジョンウン)体制崩壊という危機に陥ったとしても、やけっぱちに核兵器を国民相手に使用するとか、或いは、援助金を拒む日本、韓国にぶち込む、ということは、やはり考えにくいことだ。

 もっとも、核兵器というのは、究極の「心理兵器」であり、どういうときに使用されうるか、どのような使用基準となっているか、ということは絶対の秘密だし、結局は各国とも、最高司令官(元首など)の判断に依存するはずだ。だから、核兵器の効用と言うことは、なかなか、見極めが難しい。しかし、今回の中国の「札束外交」ぶりを見る限り、結局は国際外交の場で、核兵器といえども、さほど日本国民が羨ましがるほどの「効能」はない、と見るのが正しいのであろう。

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タイトル (本文) ブログ名/日時
中国の対独札束外交
  9月2日付産経紙国際欄に、「対中蜜月を欧州憂慮」という記事がある。この記事では、今年8月末(30日、31日)に行われたメルケル首相の訪中が、ある意味中国の札束を狙って行われた「支援要請」の外交であり、確かに、@ユーロ圏諸国国債購入継続約束の取り付け、Aエアバス旅客機50機受注の取り付け(総額60億ユーロ、約5900億円)という成果を得たものの、他のEU諸国の一部からは、中独両国の強すぎる提携関係には、中国が欧州情勢に対して影響力を強めることを警戒する声が出ているという。 ...続きを見る
ブルガリア研究室
2012/09/06 11:18
今回は、習近平訪米に札束外交無し?!!
 小生は、昨年2月に、習近平(Xi Jinping、当時は国家副主席)の訪米関連ニュースで、手土産に2兆円もの札束を米国に献上したこと、それ以上に先代の胡錦濤訪米の際(11年1月)には、3兆7千億円もの札束が献上されたことに注目して、中国は、人権問題、貿易不均衡などに対する米国の不満を和らげる意図で、札束外交をやったと指摘した(http://79909040.at.webry.info/201202/article_5.html)。 ...続きを見る
ブルガリア研究室
2013/06/12 11:50

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。

 今回の記事は私も完全に同意します。もう日本のマスコミには全く期待しておりません。提灯記事を書くだけの輩だと思っているし、これでは識者やマスコミがテロや弾圧に遭っても、憐憫の欠片も感じないでしょう。

 我が家ではずっと河北新報をとっていますが、この地方紙も酷いものですよ。元日に東日本大震災で支援した各国の記事が載っており、各国の国旗の絵もついていました。しかし、何と台湾の国旗だけは白旗状態でした!台湾の国旗だけが真っ白けなのは唖然としたし、元日から不快な想いにさせられました。
 核問題に関しても、中国には見ざる聞かざるなのにインドには実に厳しい。「賛中侮印」とは私の造語ですが、この姿勢には腹立たしい限りです。2010年9月に、実はNHKニューデリー支局長が、インド政府により同国滞在のための査証更新を拒否されていたそうですね。元ネタは産経ですが、これもネットでなければ分からなかったはず。
http://d.hatena.ne.jp/dcdc/20100926/1285494096
mugi
2012/02/19 20:14
mugiさん、おはようございます。
 大新聞には、小生以上の知性を持つはずの、エリート社員がいっぱい居るはずなのに、なぜこれほど明白な中国の対米「叩頭外交」に気づき、これを見て、「譲歩」を迫られ、苦しめられている、或いは苦汁を飲まされたのは、日本国のみではない・・・・・という、簡単な、そして国際政治の単純、冷酷な原則を論評しないのか、不可思議千万です。
  覇権国家、世界を牛耳っている国家が依然として米国であり、台頭中とはいえ、まだまだ差を埋められない中国が、抜け目なく「札束」という、東洋人にとっては一番大切なものを使ってでも「平和」を買い取っている、そこの点を見なければ、世界の中の力関係に盲目といえる。

 日本のマスコミも、しっかりと世界の中の力関係を国民に教え、日本国も、それなりに努力して、米国との関係を良い方向で保つことが必要なのだ、中国さえも、これほど神経を使っているのだ、と、そういう論旨の記事があちこちにあってしかるべきだと思うけど、全くそれがない。不可思議すぎます!!

 格下の韓国には、「歪曲歴史」で攻められても、十分に反論さえ出来ない、そういう「譲歩」ばかりしているし、中国には遠慮して、「叩頭外交している」という真実を論評も出来ない、これでは日本のマスコミは、どこに目があるのか??と、バカにされて当然です。
室長
2012/02/20 09:28

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