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zoom RSS 旧共産圏にはびこる犯罪産業

<<   作成日時 : 2012/04/08 10:50   >>

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  旧東欧圏では、ソ連の頸木から解放され、かつ経済が自由化されたが、結局は一時的には経済混乱状態となり、人々は生存のために犯罪に走り、犯罪が一大産業となったことは、記憶に新しいし、しかも未だに、これらの犯罪産業が、国内の失業率緩和、西欧諸国への移民のかなりの部分を占めていることは周知の事実である。
  今回は、このような旧東欧圏の「犯罪産業事情」について、ご紹介しようと思う。

1.ハンガリー大統領の学歴違法取得事件
  学歴詐称という犯罪が、旧東欧圏で蔓延り、大きな問題となっているようだ。最近(4月上旬)ハンガリーの大統領Pal Schmittが、ブル人スポーツ研究家Nikolai Georgievの論文からの盗作により、博士号を取得したという、一種の学歴詐称(剽窃)が暴露されて大統領職からの辞任を余儀なくされたスキャンダルがあった。

2.ブル女性総裁の学歴詐称
  もちろん、ブルガリア本国でも、同様の現象は頻繁に報道されている。ブルの農業基金(農業への補助金を扱う機関)総裁だった女性Kalina Ilieva(写真を見ると、結構美人だ)も、ベルリン工学・経済学大学卒という卒業証書を偽造していたことが今般判明し、起訴された由( http://www.novinite.com/view_news.php?id=138289)。
  この女性の学歴詐称については、ドイツ当局が調査した結果、何と彼女は件のベルリンの大学では、一度も聴講すらしたこともなく、自らがコンピュータを使用して卒業証書を偽造したらしいという。

  他にも、これまで、ブルにおいては、次官などの高官に就任した人物が、その後、金で簡単に卒業証書を買えるような、いい加減な大学(ブルのBurgas市に所在した)の卒業証書に基づいて、一種の学歴詐称していたりした事例があった。
  ある大臣に関しては、最近一時ジャーナリストが、学歴詐称を疑い記事にまでしたが、その後、きちんとした学歴が米国の大学当局によって「証明」された事例も存在する。

3.学歴詐称は、競争社会を生き抜く手段
  要するに、学術論文をコピー&ペーストして博士号を取得したり、金で簡単に卒業証書、学位証明書を売る大学が存在したり、或いは外国の大学卒業証書を、コンピュータ技術を自ら駆使して、自分で偽造する(今回のブル農業基金元総裁の事例)などで、学歴詐称して、高官の地位を得たりすることが、結構頻繁に出現しているのだ。

  これら、学歴詐称の原因としては、突如「身分制」の旧社会主義国(高官になれるのは、ノメンクラトゥーラという旧共産党組織が所有する、元革命家家系などの名簿に登録された人々のみだった)から、「自由競争制」の資本主義・自由主義国家へと体制移行した結果、人々の生存本能、出世本能も刺激され、IT技術の進歩もあり、自らの経歴詐称、学歴詐称、などを繰り返し、高官としての地位を獲得し、賄賂を得られる高収入の地位を獲得するという非合法手段も流行ってしまったと言える。

  結局は周囲を見回し、筋肉系マフィア(その一部は、旧警察組織でスポーツジムに入り浸り、格闘技などを習得していた人々。ボリーソフ首相もその典型である)が金持ちとなる社会風潮を見て、学歴、経歴詐称により出世を急ぎ、本音としては大いに金儲けに邁進する、という「道義よりも金」、という風潮が広がっているのだと言える。

 
4.犯罪組織による年商は、35億Lv(17億ユーロ)に上る
  最近ブルの民間団体CSD(民主主義研究所)が発表した数字(http://www.novinite.com/view_news.php?id=138163)によれば、ブルの上位12の犯罪組織の年間売り上げを合算すると、約35億Lv=17億ユーロ(注:Lv=レフ、複数はレヴァというのがブルの貨幣単位で、1Lv=約1/2ユーロ)に上り、これはGDPの4.7%に相当するという。

  すなわち上記から逆算すると、ブルのGDPは約362億ユーロとなる。
  ちなみに、最近の報道によると、ブルガリア経済の主要指標は次の通り:
    11年度のGDP=385億ユーロ(1ユーロ=110円と仮定すると、4兆2千億円)。
     11年度成長率=1.7%。
     同年の一人当たりGDP=5168.7ユーロ(57万円)。

なお、イタリアなどの灰色経済部分は、GDPの1--2割と言われるから、ブル経済の灰色部分が4.7%というのは、低すぎる数値で、恐らくはこの数倍規模であると見るのが正しいであろう。(今回の調査も、「主要12の犯罪組織」に限定した、売り上げ推計にすぎない。)

5.犯罪組織の売り上げが大きい、犯罪の「業種」別分析
上記の記事では、業種別分析も行っており、次のようになる。
(1)オリガーキー
  オリガーキーと呼ばれる企業犯罪が、特に社会的な脅威である。(これは一般的な記述で、特にこの業種に関しての売り上げ推計は存在しない。)

(2)セックス・サービス業
  セックス・サービス産業が、12.6億Lvと「業種別」では最高の売り上げを稼ぎ出している。もっとも、不況の影響もあり、この業種は縮小傾向にある。
(3)麻薬販売
  ブル国内の麻薬販売売り上げは3.5億Lv。
(4)VAT詐欺VAT=付加価値税、日本の「消費税」に近い
  VAT詐欺からの収入は7億Lvと見積もられている。
VAT詐欺の頂点は08年で、その後は、公安当局の措置により、右犯罪は低下傾向にある。とはいえ、VAT詐欺スキームの結果、今でもVATによる税収の約1割が失われていると推計される。

(5)非合法シガレット販売
  一番伸びが著しいのは、非合法シガレット市場で、最近3年間で3倍の規模となったほど。10年度には5億Lvの規模となり、要するに国内シガレット市場の4割を占めるほどだ。
  国内には、15000人の販売人がおり、消費者も50万人に上るという。もっとも、11年度には、この非合法市場は2割ほど縮小した。
     (注:元来シガレット価格は、社会主義時代にも、低い給与額(月額平均賃金が、1万円ほど)に比して結構割高な設定(高級品で100円、低級品なら50円)だったが、最近は、EU本部からの強制で毎年物品税が引き上げられ、高額となってきたので、闇市場が蔓延るのは当然だ。特に、ブル、マケドニアなどは、タバコ葉を大量に生産していて、自由化後は、闇の小規模タバコ工場も増えて、偽マルボロなどが製造されてきた。市民の間の順法精神も低いし、失業率も12%を超えて高いから、闇タバコの販売人などは、格好の裏商売と言える。麻薬販売ほどの危険性もない。もちろん非合法シガレット市場では、密輸されたマルボロ、その他の米国製タバコも多く扱われているはずだ。)

(6)非合法燃料販売
  燃料(ガソリン、軽油)市場における非合法燃料は、合法市場とほぼ同量といわれるほど。物品税収入から6億Lv、VAT収入から4.7億Lvが、国庫損害となっている。
(7)資金洗浄
  ブルの犯罪組織の大部分は、合法ビジネスも経営しており、その結果、資金洗浄が容易でもある。西側諸国に比べ、ブルでは、犯罪組織の合法ビジネスへの浸透度は、相当大であると言える。

(8)その他
  上記の他に、人身売買、密輸、通貨偽造(偽札)、或いは世界中に進出しているブル人のATM詐欺(偽造カードによる現金引き出し)、オレオレ詐欺、高級車窃盗、など、ブルガリア、或いは旧東欧圏では、数多くの犯罪産業が繁盛している。

  そして、これらの犯罪の多くは、実は、EUの中の西欧諸国に出稼ぎに行ったブル人により、現地の西欧で実行されている事例の方が多い
  最近ツヴェターノフ内相も、「ブル人犯罪者は、外国で稼ぎ、Western Unionなどの送金業者を通じブル国内に送金する」と述べている。要するに、ブルの犯罪者達も、結構ブル国内経済の繁栄に貢献している(?!)とも言える。

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ブルガリア研究室
2012/05/18 13:28

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。

 ブルで学歴詐称が蔓延っているのは興味深いですね。背景に社会の激変があるにせよ、日本でも学歴、経歴詐称は珍しくないし、殊にネットではそれが容易です。拙ブログにもその種の嘘つきがコメントしてきたし、医師や元教師と詐称していた。元教師と名乗っていた女は喝と称し、方々で偉そうに説教していましたが、実は糖尿病で医者通いだったことを最近知りました。日本人は豊かになって…が口癖の人物の正体は無様です。

 ブル人のATM詐欺(偽造カードによる現金引き出し)が世界的に有名なのは初耳です。日本では中国人に比べ一般に知られていません。
mugi
2012/04/11 22:00
こんにちは、
 体制大変革の90年頃は、日本で言えば敗戦直後の昭和20年で、謂わば戦後の闇市からのスタートでした。筋肉系ヤクザが輩出し、これらヤクザに美人モデルなどが殺到して愛人となりました。
 犯罪産業こそが、唯一効率よく稼げる経済業種となり、その後社会が安定してからも、そのまま生き残っています。
 小生の想像では、麻薬取引がダントツと思っていたら、実はセックス産業が稼ぎ頭という。そういえば、アルバニア・マフィアが蘭、ベルギーで稼ぐのも、身内(大家族)の女を売春地帯で働かせる、と言う報道があったと思う。ブルの売春産業は、実態としては、ジプシー女性とかを働かせている場合が多いとは思うけど、やはり一番手っ取り早く稼げるらしい。
 学歴詐称というのは、実力主義の時代になったけど、学歴がないとやはり高官ポストなどに就く資格を疑われるから、手っ取り早く「証明書を買う」と言うことになる。中国社会も、どんな種類の学歴だろうと、すぐに「買える」と聞いたことがある。
  しかし、筋肉系ヤクザ出身のボリーソフ首相などは、内務省学校(大学相当)の学位はあるらしいけど、ブル上層部では珍しく、外国語能力がほぼゼロ(恐らくロシア語は出来る)でも、自分で政党を立ち上げ、総選挙にも自らは出馬もせずに、子分らの国会議員の推戴を得て首相職を手に入れた。トップにまで上り詰めれば、学歴詐称も要らないというか。
  しかし、小生には、今のブルガリアの政情などは、まるで幕末維新の志士達を見るようで、ボリーソフのような人物も大好きです。ボの極妻にも、益々活躍して欲しい!
室長
2012/04/12 08:46

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