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<<   作成日時 : 2012/10/07 11:25   >>

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 小生最近少しある病気故に、1週間ほど入院したし、新しいネタ探しにも失敗して、書く意欲が失せていたのですが、天然ガス価格に関する下記の読売記事を見付けたので、早速自分なりに国際的な価格比較をしてみたくなりました。素人の計算ですから、どの程度の信憑性があるか怪しいけど、こういう計算とかがあまり新聞記事として出てこないので、何らかの価値はあろう。小生としては、一般社会に充満する原発全廃論などには極めて懐疑的なので、原子力以外の既存のエネ資源に依存することが「経済コスト的に」いかに難しいか、もっと議論すべきとの立場です。
  きちんと損得勘定して、経済への影響を考えて行動すべきなのに、普通の素人達はすぐに極端に走る。小生は、少しへそ曲がり、慎重派で良識派の市民を自慢したい人間ですから、色々計算くらいはして、かつ、世界のエネルギー市場動向、再生エネの限られた供給能力、なども参考に、考えていくべきだと思う。

  今回、検索により、エネ熱量の換算表なども探しつつ、主として天然ガス価格を比較して、いかに日本国が割高のエネルギーを輸入せざるを得ない窮状に追い込まれているか、他方、米国でここ2--3年突如シェールガス開発が急進展して、いかに天然ガスが、米国で安価となっているか、故に、もし米国政府がシェールガスの対日輸出を許可するならば、日本国としてどれほど助かるか、なども、下記の表から皆様にも考えて欲しいものです。
  しかし、特に小生が強調しておきたいことは、エネルギー安保という視点から、今後も原発能力の廃棄などを軽々に語るべきではない、と言うこと。

1.東電が、米国からシェールガスを輸入へ(2012年10月6日21時25分 読売新聞)
 東京電力が米国産の天然ガス「シェールガス」を輸入するため、複数の米エネルギー関連企業と交渉に入ったことがわかった。

 実現すれば、現在使っている液化天然ガス(LNG)の半額程度で調達できる見込みだ。燃料費の圧縮により、電気料金の抑制につながる可能性もある。2016年にも、東電の11年のLNG輸入量の約1割にあたる年240万トンの調達を目指す。

 東電は米ルイジアナ州でシェールガス開発計画を手がける「シェニエール」「センプラ」などと交渉に入った。

 東電の11年度のLNGの輸入量は前年度比15%増の約2400万トン、購入費は45%増の約1兆5000億円に達した。原子力発電所が停止し、火力発電に頼っているためだ。
  (小生注:この記事から、東電のLNG買付価格(恐らく他の電力企業の場合も、ほぼ同じ価格と思う)は、2400万tが15000億円 →つまり、62500円/tと計算できます。)

2.天然ガス価格の上昇(米国のみは、シェールガス革命で下落)
 更に、小生が試みた検索から次のサイトに行き当たりました: http://ecodb.net/pcp/imf_group_ngas.html。このサイトから、少し長目の視点で天然ガス価格の推移を検証してみましょう。

★天然ガス価格の推移(年次):ドル/1000m3      
            米国       欧州
1985年    no data   137.16
1989年    no data   57.20
1991年    52.23    108.27
1999年    81.40        65.05
2000年    155.07  124.34
  2004年    212.69       135.18
  2005年    319.03       212.94
2006年    242.68       295.65
  2008年    318.90       472.95
  2010年    158.01       296.01
2012年     90.02       438.93

(注:米国では、国産の天然ガスが採取できるので、欧州よりは安価であるが、2010年頃よりシェールガス採掘の成功で、どんどん価格が下落していることが分かる。
   他方で、ロシアからの天然ガス輸入に頼る西欧、中欧などの諸国は、ロシア国有企業のGazprom社の独占体質もあり、かつドルの価値低下などの影響も受けつつ、どんどん価格が上昇する傾向にあることが分かる。)

3.諸エネルギー間の熱量比較
 天然ガスと、これを液化したLNGとの間のコストを比較する方法はないか?と小生はかねてから疑問を抱えつつも、美味い方法を見付け得なかったのだが、検索で次の換算率の表を見付けたので難問が解決した。
★諸エネルギーの熱量表(http://www.iae.or.jp/energyinfo/energydata/data7011.html
MJ=標準単位、メガジュール
LNGは、1kg=54.6MJ
LPGは、1kg=50.8MJ
     国産天然ガスは、1m3-N=43.5MJ
     都市ガスは、1m3-N=44.8MJ
     軽油は、1L=37.7MJ
     ナフサは、1L=33.6MJ
輸入一般炭(石炭)は、1kg=25.7MJ

4.小生が今回編み出した換算モデル
(1)液化コスト+輸送コスト
 天然ガスは、産地から遠い島国の日本では、液化コストを加算して、液状化した上、更に専用のタンカーで中東、インドネシアなどから、はるばる海上輸送費をかけて輸入せねばならないので、欧州大陸、或いは北米大陸のようなガスパイプラインによる安価な輸送は不可能で、その意味でもコストが高くなるのは、一部はやむを得ない事情と言える。

(2)天然ガスと液化天然ガス(LNG)の間の換算
 1立米の天然ガスは、上記3.の表によれば、43.5MJで、他方LNG1kgは54.6MJという熱量だから、天然ガス1立米(m3)=LNG0.7967kgとなる。つまり、天然ガス1000m3=約0.8tのLNGに相当すると考えれば近いこととなる。

 欧州の天然ガス料金は、1000m3当たり2012年に約439ドルということは、熱量でLNG1t分の80%でしかないので、LNGに換算すれば、438.93÷0.8=548.7ドル/tということで、1ドル=78円で換算すれば、価格としては42795.7円/tとなる。

 すなわち、欧州諸国は、ロシアから、LNG換算で1t当たり4.28万円という価格で天然ガスを買い付けていて、他方日本国は、中東などから1t当たり6.25万円(1.の計算)の価格で天然ガスを買い付けている、ということになる。1t当たりで欧州に比べ約2万円も高価格で日本国は天然ガスを買い取っているのだ。

(3)米国産天然ガスに高まる期待
その上、もちろん、「シェールガス革命」後の北米における天然ガス価格が、べらぼうに安いこと(1000m3=90.02ドル→90.02÷0.8=112.5ドル/t、1ドル=78円にて換算すると8776.9円。すなわち、米国では、天然ガスがLNG換算1t当たりたったの8800円弱という価格)を考えれば、日本国としては、何とかして、少しの割合でもより多く、北米から天然ガスをLNGに変換して(注:液化工場などの米国沿岸での建設が不可欠、他方、LNGタンカーは既にかなり多くの隻数が保有済みだ)輸入したいと言うこと。
   (注:カタール、その他の湾岸産油国は、対日LNG輸出で儲けているので、巨大消費国の日本が、あまりに多くを米国から輸入し始めたら、対日安定供給を拒否する、などの対抗策を講じるはずで、エネルギーの輸入先の変更は、必ずしも簡単ではないが、価格交渉上は、米国が北米以外への輸出にどのような態度をとるか(許可するかどうか不明)にも依存するが、有利な要因と言える。
  なお、シェールガス革命に付きこのブログの別記事を参照:http://79909040.at.webry.info/201208/article_3.html



天然ガスが日本を救う 知られざる資源の政治経済学
日経BP社
石井 彰

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。

緊急入院ということに驚きましたが、1週間で退院されたそうで安心しました。

 今回の記事での国際的な価格比較はとても興味深いものです。新聞にはこのような価格比較はまず見られないし、いかに日本が割高のエネルギーを輸入せざるを得ないか、見ただけで複雑な想いです。最近のメディアでは脱原発をがなり立てるだけで、エネルギー安保という視点がまるでない。米国在住の音楽家・坂本龍一氏が、「たかが電気」と放言しているのは、偽善者以外の何者でもありません。

 最近、河北新報でもシェールガスのことが取り上げられていました。エネルギーの輸入先の変更は容易ではありませんが、価格交渉に期待したいものです。
mugi
2012/10/10 21:39
こんにちは、
 大新聞は、優秀な記者を抱えているはずなのに、エネルギー関連で全くこのような価格比較とか、説得力のある議論をしないのが不思議です。週刊ポストでは、増税+社会保障改革に関しても、きちんとした計算を示していないと問題指摘しています。財務省のペテンという議論ですが、それなりにモデル家計などで計算すると、年間の負担増もはっきりするのに、こういう議論をすると、増税反対派に味方する議論が勢いを得る、と言う論法で国民を暗闇に置こうとするらしい。
 他方、ブルでは、冬期の地域暖房の多くを依存する天然ガスというエネルギー価格には、極めて敏感な議論が多い。尤も、価格そのものに焦点を当てた計算が示されていないのは、ブルでも同じですが。
 
 ともかく、欧州はほぼ何処も、冬期の暖房が不可欠で、日本などは比較にならないほどエネ価格には、敏感です。
 今回の試算で、日本では、北米8800円、欧州4万円強に対して、日本は6万円強という天然ガス価格差が存在すると判明し、小生も予想外の米国の安さ、欧州は予想外の高さ、と言うことでも、少し、驚いてしまった。
 それにしても、日本の新聞、マスコミ、などが、米国の7倍、欧州の1.5倍と言う高価格の天然ガス事情を真剣に議論しないことは、おかしい。原発全廃論への反論として使われるのを怖れての「情報隠し」と考えると、理解できるということ。
 もちろん、原子力には、汚染対策、廃炉コスト、使用済み燃料の無害化コスト、などが必要ですが、これらは廃炉を決め手も、どうせ同じ費用がかかるのです。それなら、運転して、当面はエネ安保を確保する方が得策です。
室長
2012/10/11 09:36

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