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zoom RSS ゼロ成長時代の経済対策とヘリマネーで債務を解消?

<<   作成日時 : 2016/05/27 17:59   >>

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 伊勢志摩G7サミットは、わがふるさと三重県で首脳会談が行われたこと、伊勢神宮に世界の首脳が参拝したことなど、それなりに意義深い点があったのかもしれないが、最近小生が感じているところでは、いよいよ世界経済は、成長の限界に突き当たったし、今後は成長に期待しての甘っちょろい未来は夢見ない方が良い、ということ。
 結局、小生が行き着く結論は、江戸時代のようなゼロ成長経済の中での、資源節約的で、人口も増えない、しかし庶民の楽しみとしての文化が繁栄する社会の再来を期す、と言う心構えだと思う。
 結論を先に書いてしまったが、最近の小生の手法により、小生が注目した新聞切り抜き記事のご紹介を中心に、以下に論じていきたい。

1.豊かなゼロ成長の時代4月6日付産経「正論」欄、榊原英資(さかきばら・えいすけ)筆、題名「先進国が迎えたゼロ成長の時代」、http://www.sankei.com/column/news/160406/clm1604060010-n1.html
 全文は、上記URLで参照願いたい。
 以下は小生流の要約:

  ルネッサンス以降の欧州史を概観し、資本主義経済の発展史の締めくくりが20世紀の米国経済だとした後、21世紀なると突然先進諸国は成熟局面に入り、低成長、低インフレの時代に移ったという。

  数値的には、先進諸国の一人当たりGDPは4--5万ドルに達し、夫々が豊かさを享受しているが、2010--14年の期間の平均成長率は、日本が1.61%、米国が2.16%、英国が1.60%、独が2.02%、仏が1.01%と1--2%程度に収斂した。インフレ率を見ても、2010--14年の期間の平均で、日本が0.39%、米が2.02%、英が2.96%、独が1.66%、仏が1.55%だ。
  要するに、伊を含めた先進各国の2010--14年期における平均成長率は1.3%、平均インフレ率は1.7%で、成長率、インフレ率の双方ともが0--2%の枠内に収まっているという。

  近代資本主義は、より遠くへ、またより速く発展することで展開してきたが、もはやフロンティアは消滅し、より遠く、より速く前へ進むことが不可能となった。かつて先進国のフロンティアであったアジアもアフリカも、世界経済に組み込まれてしまい、新たなフロンティアが出現することは無い。

  地理的のみならず、産業分野的にもフロンティアは開発しつくされ、新たな分野が大きく花開くことは無くなった。よって利潤率は低下し、利子率を大きく減少させることとなった。
  「長い16世紀」の低利子率は、農業投資がいきわたり、山頂までブドウ畑が作られて、もはや利潤を生む投資先がなくなって生じた現象だが、今回は、「長い21世紀」である・・・・フロンティアの消滅で、より遠く、より速く進むことが不可能になったのだ。
  近代資本主義の終焉だ。「豊かなゼロ成長の時代」と言うものだろう。そして人々の関心は、モノから次第に環境や安全へ、そして健康へと移ってきている。

  (小生注:「ミスター円」と呼ばれる榊原氏の論文で、経済史を概観して、今の時代は地理的フロンティア、技術的イノベーションの両面ともに陰りが生じ、経済規模の拡大、成長にはあまり期待できな時代だから、借金を増やしてでも成長へとアクセルを踏む、と言うこれまでのケインズ式手法は役に立たない、と警告している。既に十分富裕な先進国としては、社会安定のためのきめ細かな政策などで、何とか民主主義を守っていくべきだということであろう。

2.チェコ人学者の借金を否定する経済論5月19日付朝日新聞、トーマス・セドラチェクと朝日編集委員大野博人による対談、題名「しじみの経済学」
  『善と悪の経済学』がベストセラーとなったチェコ人学者Tomas Sedlacek氏(39歳)へのインタビュー記事。国家が借金して経済成長を先取りしようとすることに否定的考え方を示す。成長よりも、資本主義体制がもたらす自由にこそ意義があるという。以下は小生が要約:

 ―――成長戦略は空回りして、借金が増える・・・借金はまるでお酒、成長への欲望を膨らませすぎると、豊かな社会すら壊すとあなたの本は警告する。
  「この本は、チキンスープのつもりで書いた。日本だとシジミ汁かな。二日酔いの翌朝に、酔い覚ましに飲むものです。借金とお酒は似ています。金曜の夜にバーに行く、お酒がおいしい、お酒からエネルギーをいっぱい貰える。でもそれは誤解です。お酒からエネルギーを貰っているのではなく、翌日土曜日の朝のエネルギーを金曜夜に移動しているだけ。借金も同じ。金がなくなると銀行や友人から借りたり・・・・しかし実際には、私自身の未来から現在に金を移しただけ。
  豊かであればあるほど、借金に傾く。飢えたから金を借りるというより、食べ過ぎたからもっと欲しくなる。豊かな国の問題は、借金を作りすぎて崩壊するということ。成長しないからではない」

 −――お酒がもたらす元気、借金がもたらす経済成長、それらは大きな勘違いと言うことですね。
  「ケインズの時代には、経済を「麻薬」で覚醒させるかどうか、ためらいがあった。でも今では、低い金利で借金を増やし、経済を覚醒させようという経済学者がとても多い。もはや「麻薬」の注入自体についての議論は少ない」

 ―――財政問題も本質は同じと言うことですね。
  「金利が低いから借金しやすく、債務残高がどんどん重くなる時代になっています。それでも成長していません。国がGDPの7%の借金をする。それを注入して、成長率が1%--2%ほど伸びる。そしてそれを多くの経済学者が成功と考えている・・・ナンセンスです。国の借金は、時間とエネルギーを操作するためのトリック」

 ―――日本国の借金は途方も無く大きくなっています。
  「日本は苦しくて借金したのではなく、経済成長をより速くしたかったためにこうなったのではないか。成長を早めるために債務を増やし、ある日全てが崩れる。ギリシャは遅れているのではなく、先駆的なのです。しかし、今の問題は、もはや注入できる麻薬すら底をついていることです。だから皆が途方に暮れている」

 ―――チェコはかつて共産主義国でした、その経験からの影響は?
  「1989年11月のビロード革命は大きな経験でした。想像を超えるエネルギーを国民の間に感じた。当時の私たちが信じたのは、民主主義と資本主義。その土壌があって初めて自由、経済、文化などの成長が実現すると思った。
  しかし、今では考え方が逆転しています。経済成長が無ければ資本主義も民主主義も崩壊すると。私にとっては自由を意味する資本主義こそが大切であって、経済成長の順位は低いです。しかし多くの人々は、成長資本主義を信じている。少し前から、たくさんの政治家が一党独裁の中国に注視している。GDPが伸びるのなら、民主主義をちょっと抑えても良い、という人々すら出てきた。私は、「マジかよ、本当にGDPのためなら自由を失ってもいいのか」と呆れました」
   
  (小生注:さすがは、共産主義時代の絶望を生き抜いたチェコ人の経済学者である。資本主義経済が、社会主義と言う統制・計画経済には無い、人間的な経済環境、自由主義と表裏一体の存在だということを知っている。
   昔小生も、米国人に説明したことがある:「政治的自由よりも、経済的自由こそがまず重要です。社会主義国では、個人が商売をできない。これが意味することは、例えば、政府の指導に逆らって、勝手な著書を執筆し、売ろうと思っても、印刷してくれる会社もないし、例え本が刷れても、販売網が無いし、「作家協会(官製組織)」から(反体制派として)除名されて、収入がなくなり、生きていけなくなる。せめて商売の自由があれば、国営系組織から馘首(かくしゅ)されても、自分で商売して食っていける。この可能性すらないのが社会主義国で、クビになったインテリたちは、親戚の好意にすがるとか、女の紐(ヒモ)にでもなるしか、生き延びる手段は無いのです」と。
   既に経済成長しすぎて、先進国となった諸国では、低成長、低インフレ(デフレ)で構わない、工夫しつつ、増えない給与の中でも、楽しく生きていけるように、心豊かになるように努力すればよいのだと思う。例えば、小生に言わせれば、昔は、日本の家屋は狭くて、断熱材も無く、煖房も効かなかったし、エアコンも無く、寒い、暑いに対抗するには精神力しかなかった。そういう中でも、高度成長のため、低賃金で、一生懸命働いてきた。まだ「青山」のような安い洋服店は無く、背広代で一月の賃金が消えることもあった。テープレコーダー代も、一月の賃金に相当した。今の時代の若者たちは、成長の夢が無いと言うが、生活水準、生活内容を見れば、団塊世代の時代に比べ、ずっと良い生活水準で生きられていると思う
。)
  

3.『時間稼ぎの資本主義・・・いつまで危機を先送りできるか』5月22日付朝日新聞の書評欄、ヴォルフガング・シュトレーク著、鈴木直訳、みすず書房、評者:諸富徹(もろとみ・とおる)=京都大学経済学教授、題名「脅かされる国民福祉と民主主義」

  各国の中央銀行は競って量的緩和策に乗り出したが、問題の根本治癒には至らない・・・時間を買って危機を先送りしているだけだ、とドイツ・フランクフルト学派のシュトレーク氏は断じる。著者が注目するのは、債務国化した先進国財政だ。1980年代以降のインフレ鎮静で、知らぬ間に債務を帳消しできなくなった国家は、増大する社会保障経費を賄うために、「目に見える増税」に訴えるほかなくなる。
  だが、企業や国民の抵抗の前に、それを果たせず、国債依存度を高めていく。しかも、公債は、低成長時代に安全な投資機会を提供する形で、投資家にとって好都合ですらある。

  ところが、ギリシャの債務問題に端を発した欧州ソブリン危機が示したように、国家がデフォルトを起こし、投資した資金を回収できない恐れもある。投資家の関心はそこで、いかなる危機でも国民の抵抗を押しのけて、年金や医療を削減し、借金返済を確実にさせることに向けられる。「我々が生き残るには、これしかない」と、国民に圧力をかけ、押し通してくれる政府だ。債務返済への国際圧力がいかにすさまじいかは、ギリシャのチプラス政権の辿った運命を見れば明らかだ。

  著者は、国民福祉よりも、金融資本の利害が貫徹される欧州の現状を、市場による民主主義への深刻な挑戦と受け止める。各国は共通通貨ユーロの下で、為替レートによる経済の調整権限を奪われた。富裕国が貧困国を助ける欧州次元の財政調整が夢物語である以上、ユーロを終焉させ、各国の通貨主権を回復させることが、民主主義に基づく経済運営を回復する方途だと著者は結論付ける。
  「欧州統合」はもはや、かつての輝きを失ってしまったのだろうか。
    
  (小生注:政府の施策次第で経済が良くなる・・・と言う風に考えて、国債を発行したり、財政出動したりと、色々なカンフル剤を打つことは、1.2.の論文によれば、もはや有効な経済施策ではなくなっている。結局は「時間的先送り、或いは、次の世代の負担を増やしつつ、富を先取りする」ことでしかない、と見られるようになってきたようだ。政府が借金して、経済へのテコ入れをすることが、努力する政府として評価された時代は、すでに終わりつつある、ということであろう。

   他方では、「欧州経済統合」の大義を掲げて導入した「共通通貨ユーロ」は、低金利の魅力故に、倫理観の低い南欧では、無駄遣いを産み、債務超過による「国家デフォルト」の危機をもたらした。そして、国際金融資本の要求は、そういう南欧諸国に対し、緊縮財政を強制し、債務返済を強制することであった。

   むしろこれからは、グローバル経済化がもたらした多国籍金融資本などの過剰融資を警戒し、夫々の国家の国民が、自らの主権の下に経済へのコントロール権限を増やし、自国の紙幣を発行したり、或いは、輸入を規制するために関税を高めたりと、ナショナリズムに基づき、経済運営すべきだ、と言う視点らしい。要するに、ユーロの放棄、国民経済体制への逆戻りだ。

   とはいえ、アジア、南米、アフリカなどの新興国が、近代的工業国家へと成長していく原資を提供したのも、グローバル金融資本であるから、先進国と後進国では、グローバリズムへの評価も必ずしも一つでは無かろう。   ただし、後進国への投資を先進国よりも積極的に行ったのは、むしろ新興国の一つである中国であったような気もする。中国の対外過剰投資も、資源の爆買いも、成長神話に基づく、過剰投資であったとすると、すでに後退局面となってきているのは、やむを得ないと言うしかない
。)

4.トランプノミクスと言う難題5月22日付産経「日曜経済講座」欄、田村秀男編集委員筆、http://www.sankei.com/economy/news/160522/ecn1605220007-n1.html
  この論文は、小生にとっては全体としてなかなか難解な部分が多いのだが、無理に要約すれば次の通り:

(1)トランプ氏が提唱している政策は、「中間層以下への減税と富裕層への増税、財政支出拡大」ということ。トランプ理論では、「政府債務返済のためには、紙幣を増刷すればよい・・・基軸通貨ドルは世界の誰もが必要とするので、いくら増発しても暴落するリスクは少ない」と言うことであるという。(注:これも、下記(2)のヘリマネー理論の一種だという。

(2)伊勢志摩サミットでは、日米欧が展開してきた金融緩和策の限界を見て、金融と財政の両輪を組み合わせる方向へ進もう、と言うのが基本方向だ。
  中央銀行が資金を発行して、政府が発行する国債を買い上げる一方で、政府は財政出動して景気を刺激する。
  その場合、中央銀行が償還期限まで国債を保有し続けることにすれば、政府は対民間債務を増やさなくても済む
  それは財政資金を貨幣(マネー)に換えるヘリコプターマネー政策とも呼ばれ、米欧の金融専門家は、議長国日本に実験させたがっている*
  ヘリマネー理論自体は、故ミルトン・フリードマン教授や、ベン・バーナンキ前FRB議長が提唱したほど学術的権威がある。
  
(3)金融と言うのは、難解な金融用語と理論に彩られた複雑な装いが凝らされてはいるが、本来金(きん)の裏付けのない紙幣に頼っているだけに、極めて繊細だ。そこに権力者が、露骨に政治介入すれば、通貨の信用が損なわれる。トランプ流で実行されてしまうと投資家は不安におののいてパニックとなり、長期金利は上昇し、企業の設備投資と家計消費が急激に落ち込むと、多くの金融専門家は怖れている。

  (小生注:上記(2)の*部分で言及されている米欧の金融専門家たちの陰謀らしき記述が気になる。
   政治、経済、社会情勢が相対的に安定しておれば、例えば日本国の現状のように一定の安定感があれば、国債を中央銀行に毎年80兆円も買い取らせ、必要資金は日銀券の増発と言う形で、毎年順調にこなしていけば、インフレも特にないままに、日本国政府が発行した国債は、満期まで日銀が抱え込んでくれて・・・・そして、いつの間にか、1000兆円にも上る政府債務が消えてしまう・・・・そういう実験を、固唾を飲んで世界の金融専門家が見守っている、と言うことであろうか?
   一応、国債は、日銀の資産項目に一時的には仕分けされ、残っているとしても、日銀券の発行で、国債は買い戻されたのであるから、日銀と政府の壁をいったん剥がして考えてみれば、日銀資産である国債を、ある日思い切って一気にゼロ評価してしまえば、1000兆円の政府債務が魔法のように消えてしまってくれるはず・・・と言うのが小生の憶測ですが。はてさて
。)

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  今回は、経済に関する小生流の「新聞切り抜き」を集めて、検討してみたい(記事は小生が勝手に要約している)。   本当はかなり多くの経済関連記事を貯めたのだが、実際に読者にご紹介すべきと考えたのは、以下に集めた程度でしかない。この方が、量が減って読みやすいであろうし。 ...続きを見る
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2016/09/06 18:09

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