ブルガリア人の名前

 新年おめでとうございます。今年の第1号記事として、ブルガリアに多い名前ということに関して、1月4日付のnovinite.com紙に掲載された記事(http://www.novinite.com/view_news.php?id=146560)をご紹介しようと思う。

題名:30万人を超えるIvan関連の名前を持つブル人が「イヴァンの日=Ivanovden」を祝う
要旨:

1.一番多い名前はIvan:30万人が1月7日にIvanovdenを祝う
 ブルガリアで一番人気のある名前はIvan(注:英語で言えばJohn)とその変種である。1月7日に、Ivanまたはその女性形のIvankaなどの名前を持つ人々は、スラヴ系文化では当たり前の「名前の日(Imenden同じ名前を持つ聖人に因む祭日)」を祝うのだが、最近のブル統計局発表では、Ivan系の名前を持つブル人は、なんと30万人を超えるという。

2.前日1月6日はYordanovdenで10万人が祝う
 他方で、その前日1月6日は、西欧ではDistaff Day(糸巻きの日、女性が糸巻きの仕事を始める日)として知られているが、キリスト教の暦では、Epiphanyとも呼ばれる。Epiphanyとは、公現祭、顕現日とも呼ばれ、東方の3博士のベツレヘム来訪が象徴するように、異邦人に対する主の顕現の日であるという。主がその本質をあらわにする瞬間とも言われる。
 ブルではこの6日は、Yordanovdenで、Yordan、Yordankaなどの名前を持つ約10万人が祝う。なぜYordanの日かというと、キリストが洗礼者ヨハネによって、ヨルダン川にて洗礼を受けた日だから。したがって、この日、ブルの伝統、慣習では、僧侶が十字架を川、池などの極寒の水面に投げ、これを血気盛んな男性たちが競って拾うという、寒中水泳的な行事が各地で行われている。十字架を見事拾い上げた者が、この1年の健康を約束されるという。

3.その他の名前
 ブル統計局(NSI)によれば、ブルガリアには男性名が30000、女性名が38000、合計68000もの名前が存在するという。
★男性名として多いのは、Ivan、Yordanの他には、次があるという:
Georgi(英語名George)=175000人、Dimitqr=131000人、Nikolay=95000人、Petqr=79000人、Hristo=65000人。
 更には、次の名前も多い(人数は明記なし):Aleksandqr、Stefan、Vasil。
 男性名では、上位の20の名前に140万人(38.4%)が集中しているという。

★女性名として多いのは、Ivanka、Yordankaの2傑に次いで次の名前:
Maria=123000人、Elena=56000人。

★ムスリム名で多い名前は次の通り:
Mehmed=16000人、Ahmed=14000人、Mustafa=12000人。

4.姓は?(小生の追記)
(1)姓の作り方は、基本が、名前+ev、ov
 ちなみに、スラヴ語では、クリスチャン名を少し変形させて姓を作るので、ある意味、日本のような特別の姓で氏を現す、ということはない。ブルの場合は、普通は、その家系で知られている先祖の名前がGeorgiなら、これに接尾辞としてevを付けてGeorgievとすれば、姓となる。Ivanなら接尾辞のovを付けてIvanovで姓となる。

(2)skiも稀にある接尾辞
 ブルの場合圧倒的に姓はev、ovで終わるのだが、まれには他のスラヴ語圏のようにskiという接尾語で終わる姓もある。最近も元SDS政権時の外相だったNadezhda Mihaylovaが、最近は再婚した夫の姓であるNeynskiを名乗っていることをご紹介した。

(3)名前+父姓+家姓
 また、ブル人の氏名は、自分の名前+父姓+家姓の3つであり、例えばIvan Yordanov Georgievのようになる。この場合、先祖からの家姓はGeorgievだが、父親の名前はYordanで、自分の名前がIvanと分かる。そして、ブルの場合面白いのは、例えば小学校入学時などに、父姓と家姓のどちらを選ぶかを本人に決めさせて、上記の氏名なら、Ivan Yordanovまたは、Ivan Georgievという2つの名前に絞り込んで通称とすること。閣僚名簿なども、ロシアの場合のように、3つの名前を列記することはなく、2つの名前しか書かないのだ。

(4)姓の女性形
 さらに、もう一つ、普通スラヴ語圏の女性は、姓に+aがあることもユニークだ。例えば、自分の名前がIvankaとして父姓がYordanovなら、女性の場合の父姓はYordanovaとなり、家姓がVasilevなら、これにも+aを付けてVasilevaとなるのだ。繋ぎあわせると、Ivanka Yordanova Vasilevaとなる。もちろん、女性の場合も、通称として、父姓、または家姓のどちらかを選択し、例えばIvanka Vasilevaという2つの名前を使うこととなる。

(5)国際的基準に合わせて、父、または夫の姓をそのまま使う「例外」が増えている
 ところが、女性の姓で+aがあるという、不思議な原則を受け入れない諸国も多いらしく、カナダ、米国、ブラジルなどで活躍するブル系女性の姓は、父親の名乗った姓をそのままつけている例が多い。ブラジル大統領のDilma Rouseffがその例として著名だ。ブル語の場合ならRusevaという女性用の姓を名乗るべきなのだが、ポルトガル語では、女性用に+aという別の姓を名乗ることは許されないのであろう。RusevをRouseffと綴るのは、西欧人が読みやすい綴りとしたせいであろう(語末の濁音は清音となるという、スラヴ語の原則でRusevの発音はRusefなのだ)。
 そう言えば、上記のNadezhda Mihaylovaは、再婚後にNadezhda Neynskiと名乗っている。skiの場合も+aの原理で(この場合skiのiは削ることとなるが)Neynskaという姓(女性用)をブル国内なら名乗ってもよさそうなものだが、EUという西欧を舞台に活躍している(欧州議員だから)彼女の場合は、やはり国際的に通用しやすいように、Neynskiという夫と同じ姓を名乗ることとしたらしい。スラヴ語の伝統は、今後このようにして、崩れていくのかもしれない。
                               (了)

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この記事へのコメント

mugi
2013年01月06日 21:12
改めて新年おめでとうございます。本年も何卒よろしくお願い致します。

 ブルで一番人気のある名前はIvanですか。イワンのバ※でこの名は有名ですが、英国はJohnだし、やはりキリスト教圏ではこの名が一番人気のようですね。Ivanの次がYordanなのは意外でしたが、Dimitqr、Nikolayとはロシアも同じような結果になるかもしれません。

 ムスリム名でMehmed、Ahmed、Mustafaの順に多いのは納得。もしかするとトルコ本国でも、同じかもしれません。
2013年01月07日 19:44
こんばんは、
 今年もよろしく。Yordan、その女性形Yordankaは、上記のように合計10万人程度らしいので、ディミータルとニコライの間に位置する人数ではないでしょうか。
 Ivanは、John或いは、洗礼者「ヨハネ」のスラヴ語版だから、やはり人気の名前なのでしょう。
 女性でMaria、Elenaが多いというのも、少し意外でした。elenというのは鹿のことですが、もしかすると西欧のヘレナと関係があるかも。Mariaという名前はもちろん、聖母マリアですが、それほど多いとも思わなかった。Ivanka、Vasilka、Vaska、Magdalena、Nina、Ekaterina、Elizabeta、Eli・・・などが小生の記憶に残るブルの女性名です。
 ヨハンネス>ジャン>アイルランドのショーン>英語化してシェーンということですから、Ivanと映画の「シェーン」は何と同根の名前らしい。この女性形のヨハンナは>ジョアンナ、ジョーン、ジャンヌ、ジャネット、ジェーンになったというから、要するにスラヴ名のIvankaと同類ということです。(講談社現代新書「世界人名ものがたり(名前で見るヨーロッパ文化)」、著者梅田修、1999年による)。
 案外多くの名前が、ヘブライ語とか、ギリシャ語などを起源としているらしいですが、この講談社の本も、小生手持ちだけど、やはり面倒くさくて、さほど記憶に残っていないです。今少しページをめくって、上記を確認できましたけど。また、著者は、英語、アイルランド語などの名前を中心に関心を抱いて書いているので、スラヴ語名は詳しくないのも欠点です。

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