西欧諸国の本音は、対ロマ差別感情!

 昨年後半から英国、オランド、ドイツなどで盛り上がり、新年になっても消えないEU域内西欧諸国における対ブルガリア、ルーマニア就労制限撤廃反対論、警戒論に対し、この議論の根本は、西欧諸国に普遍的に残存する、対ロマ差別感情が本音だと暴露する記事が1月6日付のnovinite.com紙に掲載され、注目に値するので下記1.にご紹介する。
 この記事の原文は、Carnegie Europe(米カーネギー財団系のNPO)紙にJudy Dempsey(NPOのweb紙編集長)が寄せた記事。
 この記事は、西欧諸国の大衆紙、或は右派系政党が呼びかけている、ルーマニア、ブルガリア人に対する就労規制延長論、或は、両国人による社会福祉資金受益への制限・特別規制論は、結局のところ、これまでの中・東欧諸国からの移民労働力が西欧にもたらした利益の部分を無視した感情論に過ぎないこと(現実には、相対的に安い賃金でもしっかり勤労する上に、他方で本国の大学卒で、才能溢れる人材が多く、西欧諸国の経済成長にも寄与した)を指摘している。更には、突き詰めていえば、結局は、これら両国に多いロマの人々の大量到来への危惧という、対ロマ差別感情が本音であると非難している。

 他方で、一応より理性的議論を装う対ブル人移民、就労の自由化への反対論の一つとして、ブル国における農地の外国人への販売自由化規制を延長したブル国会の動きを、「EU加盟国としての就労の自由の権利を追求しつつも、他方で、農地の売買自由化というEU法制への適応義務を回避する『偽善主義的』な動き」という、英国紙の批判記事が、novinite.com紙に掲載されている: 下記2.参照。

1.西欧諸国の「偽善性」:本当はジプシー差別なのだ!http://www.novinite.com/articles/156997/Europe%27s+Hypocrisy+Over+Bulgaria+and+Romania
(1)10年前に嫌われたポーランド系は、今では問題視されていない
  04年に、ポーランドと他の中・東欧圏7か国がEUに加盟し、数十万人の労働者たちが西欧へと押し寄せた時、起きた現象というのは、これら8カ国の若く、働く意欲に満ちた人々が、厳しい職種(労働環境)を厭わずに、懸命に働いたが、それでも彼らが、西欧の現地の人々から好かれるということはなかった・・・・中・東欧の青年たちが、現地の人々の職場を奪うとして非難されたのだ。
  しかし、その後の年月の中で、ポーランド人たちは、西欧各地にポーランド系共同体を築き上げ、現地でポ語新聞を発行し、ポ系人のための学校まで立てた。ポ本国に帰国した人々は、西欧への出稼ぎでためた資金で、自分自身、或は自分の子弟に対して、より良い住宅、教育を提供できた。結局、総合的に評価すれば、開放的で統合されたEUというものが、西欧諸国にとっても、或は新規加盟諸国にとっても利益をもたらす、というのが教訓として得られた結論なのだ。

(2)今度は、ブル人、ルーマニア人が嫌われている?
  さて、10年後の今、西欧諸国における大衆迎合主義者たち、或は反移民政党などは、今年正月からはEU全域での就労規制を完全撤廃されるブル人、ルーマニア人に注意を向けている。
  英国の大衆紙は、ブル・ル人たちは、英国の社会福祉制度から利益のみを引き出すであろうと警告し、批判的論調を煽っている。ドイツでも、メルケル首相率いる保守政党は、大衆迎合的論調を展開している。欧州議会のキリスト教民主党は、社会福祉サービスを受益する人々には、指紋採取の義務付けを提唱している。

  このような、ブル・ル人に対する差別的待遇は、恥ずべきことであり、偽善的態度でもある。

(3)ブル・ル両国の才能ある人材は、これまでも積極的にスカウト
  両国が07年にEU加盟を認められて以来、ドイツの求人機関は、ブル、ル両国の医師、看護師らをスカウトしまくり、ドイツ国内の病院・介護施設スタッフを確保してきたのだ。もちろん、工業、或はハイテク分野でも、専門家らをレクルートしてきた。
  このように、大学卒の、ブル、ル両国の最良の才能を有する人材が、ドイツ、その他の西欧によってスカウトされ、頭脳流出が本国社会に深刻な影響をもたらしている中で、ブル、ル両国、或は他の東欧諸国がこの頭脳流出に関し、憂慮を表明したり、反対することはなかった。
  この頭脳流出の結果は、過去10年間にルーマニアの人口は▽(マイナス)12%にも上り、総人口は激減して1800万人へと減少したほどなのに、である。

(4)本音はロマへの差別
  なぜ、今西欧では、ブル、ル人の移民を恐れているかというと、これからは単純労働者の受け入れ、自由化が始まるからだ。特に恐れられているのが、少数民族系のロマたちが、自由に移民してきて、社会福祉上の権利を主張することだ。
  要するに、ロマたちには、欧州市民としての、平等な権利を与えるのは嫌だ、ということなのだ。ブルには約40万人のロマが、ルーマニアには62.1万人のロマが存在すると推定されている!!
  最近の世銀、その他の報告書では、ブル、ル両国のみならず、ハンガリー、チェコ、スロバキアの3国においても、ロマたちは悲惨な環境の中で暮らしているという!!

  ルーマニアの右翼政党青年部長が最近、ロマの女性たちは不妊手術を実施されるべきだと主張したが、この発言はさほど大きな非難の反応を呼び起こさなかった。ことほど左様に、欧州では、ロマに対する差別感情は、広範な支持を得ているのだ。

  ちなみに、今回のロマに対する恐怖感情は、19世紀および20世紀初頭に、東欧圏内から西欧へ移民した貧しく、宗教主義的な、元ゲットー在住のユダヤ人達に対する西欧諸国の差別感情と、まさしく一致する現象だと思う。ユダヤ人と、ロマたちは、その後ホロコーストという同じ惨劇を体験したのだ。しかし、ロマたちに対する差別感情は、未だに継続しているのだ。

2.英国紙が、ブル国が外国人への農地売買禁止を延長して、EU指令に違反している、他方で、就労の自由化という面では、EU法を根拠に、自由化の利益を追求しているとして、偽善主義も甚だしいと非難!!http://www.novinite.com/articles/156992/British+Media+Blasts+Bulgaria+for+%27Appalling+Hypocrisy%27
  注:記事内容は、上記表題でほぼ明白なので、繰り返さない。下記に、農地の外国人への売買自由化が、かなりセンシティブな問題であることを説明する。

(1)対外条約が国内法に優先するので、法的には問題だが、政治的には追及しなければならない課題
 ブル国における、本件農地売買の外国人への自由化延期法令の採択は、確かにEU指令に違反し、EUへの加盟条件をも無視するもので、違法性が高く、行政裁判所による判決で、最終的には廃棄される可能性が高いものだが、その反対要因は下記に記す通りだ。ちなみに、現BSP主導政権は、DPSというトルコ系少数民族を基盤とする政党との連立によって成り立っている。

(2)国内少数民族が、農業で何とか生業を得ている
 そのDPSの基盤となっているトルコ系市民、及び同じくDPSが取り込んでいる少数民族であるポマック(ブル人系のムスリム)、或はロマ(ジプシー)たちは、かなり多数が農業(タバコ葉生産農家、畜産・放牧業、生薬採集業を含む)を生業としており、零細農家としての彼らを庇護するため、DPSとしては、農地を高額で買い取り、大規模農業生産を志す西欧諸国の大規模農業企業の進出を嫌う。実際には、西欧諸国からブルまで来て、大規模農業を行おうという動きが顕著であるわけではないが、国内の零細農家にとっては、心理的脅威として、農地売買の外国人への自由化は許しがたいことなのだ。

(3)シリア難民の受け入れさえ拒否する極右政党の存在
 またブル国内には、外国人嫌いを助長する扇動を得意とする、Ataka、VMRO(ヴェメレオ)などの極右政党も存在しており、彼らの扇動で、この問題は火を噴きかねないという要素もある。その上、Ataka党は、現BSP主導政権にとっては、今のところは「隠れ与党」として政権を支えている存在でもある。

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この記事へのコメント

mugi
2014年01月11日 21:19
こんばんは。

 今回の記事では日頃、第三世界に人権思想を訓辞している西欧諸国の本性が伺えて興味深いものです。またも英国紙が干渉してきましたが、これぞ英国人の偽善性が如実に表れていますね。
 ご存知かもしれませんが、BBCの「ニュースナイト」という生番組のキャスターのパックスマンが日本の駐英大使に、「尖閣を中国にあげれば?」、「地域全体、世界全体を危険に陥れるほどの価値が尖閣にあるの?」「日本が軍国主義を復活させようとしているのか?」と言っていたそうですよ。だから私は英国が大嫌いなのです。
http://newsphere.jp/politics/20140110-8/

 ブルが外国人への農地売買禁止を取っているというのは、日本人としても共感できます。ただ、ブルではマイノリティが心理的脅威と感じている事情があるとは知りませんでした。やはりこの辺は日本とは違います。
2014年01月12日 08:22
こんにちは、
 ヒトラーが台頭していた時に、戦争を嫌うが故に、融和外交を繰り広げ、ナチスの勢力拡大を助長したという失敗を犯したように、英国も大衆感情に迎合しては失敗する愚作を結構やらかしています。これが民主主義の限界ではないかと思う。軍事面では、一つ獲得すればさらにその先もう一歩ということで、沖縄が危うくなる。沖縄の次は大東島とか小笠原となるでしょう。フォークランドで踏ん張って、断固妥協しなかったサッチャーも、最終的には褒める人ばかりではない。
 農地の外国人への販売は、不動産の販売に比べて、ナショナリズムからの反発も受けやすい。大規模農業(小麦、ヒマワリ栽培)が一番盛んなのは、ドブルジャ平原のあるドブリッチ県(Varna県の北隣)ですが、このドブルジャの大規模農場では、すでにマフィア資本が大規模農場を経営しています。彼らとて、当面は外国資本の進出は望まないはず(もっともマフィアですから、値段次第では売る可能性もある)。
 ともかく、農業は、労働集約的要素が強いし、単純労働が多いので、少数民族系、特にロマの人々にとっては生きていくために欠かせない産業です。彼らは、普通は自分の農地を持たないけど、農業労働者として雇われて、夏場を過ごす。

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