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zoom RSS 女系天皇容認論の危険性

<<   作成日時 : 2015/11/15 10:46   >>

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   『女系天皇問題と脱原発』(飛鳥新社、2012年12月)と言う本を最近読んだ。3年前の初版であり、Book-Offで510円と格安だったし、小生が尊敬している西尾幹二氏と旧皇族竹田家の末裔竹田恒泰(つねやす)氏の対談だから、面白いはずと言うことで買ったのだ。
  4部構成で、それぞれ興味深い、しかも深い洞察が込められた論点であり、小生としても大いに参考となったので、小生なりに要旨をまとめてみようと思う。

  とはいえ、原発問題に関しては、既に建設済みの原発設備に関しては、冷却用電源についての安全対策を強化して、稼働すべきと言う小生の論点とは真逆の視点だから、この点に関しては、省略させていただく。また、雅子妃問題に関しても、小生は同情心の方が強いので、コメントは差し控えたい。

1.第1部:天皇後継を巡る政治的策謀(副題:基準は歴史である)
(1)民主主義、平等主義の戦後イデオロギーで、伝統的な国柄、皇室制度が破壊されようとしている
  議論の中心は、女系天皇を認めるべき・・・と言う方向へと小泉総理時代に発足した「皇室典範に関する有識者会議」を誘導しようとした元官房副長官の古川貞次郎氏(及び、同氏の厚生省で2期後輩の羽毛田宮内庁長官)と園部逸夫元最高裁判所判事を中心とする人々に対する反対意見。民主化、男女平等と言う名分のもとに、種々の女系派戦後知識人が蔓延り、東大法学部の宮沢俊義博士の系列で、内閣法制局も自由平等と言う方向性での法改正に懸命となってきて、皇室制度を改悪しようとしてきたらしい。

(2)天皇の本質は、宮中祭祀により国家、国民の安泰を祈ること・・・男系天皇と言う伝統と歴史を否定すれば、信仰と結びついた皇室が変質する
  元来日本の皇統は、男系の万世一系で続いてきた・・・そういう事実、その伝統、歴史を無視して、女系も可能とするという風に、西欧の王家風に、現代風に変えようとすること・・・東大法学部系の平等主義者たちに対する反対論が展開される。
  小生も、この点に関しては疎かったのだが、日本の歴史上例外的に8名の女帝がいたと言っても、これは緊急避難的な措置で、女帝たちも必ず男系天皇擁立へと努力してきたという。つまり、男系天皇と言う継続性を無くしてしまえば、天皇家の伝統も歴史も否定され、国民の信仰対象としての天皇家、と言う根幹が揺らいでしまうということ。左翼系の合理主義で、簡単に女系天皇などを認めたら、伝統と歴史に支えられた皇室ではなくなってしまうし、万世一系でもなくなってしまうという。

  特に、竹田氏が述べていてハッとさせられた視点は、要するに、この男系制度では、天皇の后に関しては、古来民間女性(藤原氏、平氏、徳川氏、その他)の採用にも道が開かれているが、皇室、皇族に外部から男性を入れることに関しては徹底的に排除している・・・すなわち、女性にはオープンで、男性には閉鎖的であるという視点だ。

(3)女性宮家創設論は、女系天皇と言う陰謀の生き残りを図る仕掛け
  また、近年の皇室における男系維持の困難性に関する危機意識を煽って、愛子内親王殿下にも継承権を与えるという形で、女系天皇に道を開こうとして、陰謀を巡らせたのも、古川元官房副長官らの、終局的には天皇制廃止への意図を含んだ陰謀だ、と言う。

  紀子妃殿下が悠仁親王殿下を産まれたので、女系天皇論は影を潜めていったが、未だにこの陰謀に加担した人々は、女性宮家を創設することで、天皇候補の皇統を増やすという議論をしているという。しかし、女性宮家が、民間からの男性を婿に取れば、従来からの外部からの男性を忌避する、排除するという方向性とは整合性が無くなってしまうという。

  更に、女性宮家創設論者が根拠とする「天皇と皇后の公務負担軽減」と言うスローガンにも問題があるという。憲法が定めるのは、天皇の「国事行為」のみであって、皇族の「公務」と言うものは何らかの法律によって決められたものではない、という。陛下の「ご公務」を、陛下の入院時などに「代行できるのは第一に皇太子殿下、そして皇太子が無理な場合には秋篠宮殿下」、のお二人のみだ、という。
  つまり、女性皇族の「ご公務」と言うのは、公的性格を帯びている活動をそうお呼びしてはいても、法律に決められたものではなく、民間人が勝手にそう呼んでいるだけだ、という。要するに、天皇、皇后両陛下の「ご公務」を、女性宮家の創設で、より多くの皇族方が「代行」して、ご負担を軽減する・・・と言うことは元来あり得ないこと(ウソ)と言う。

(4)本格的に皇統を増やす対策
  竹田氏は、皇統を増やすためには、男系で続いている旧皇族を皇族にお戻りいただく(旧宮家の一部を再興する)とか、三笠宮家、高円宮家などの女性皇族が、戦後GHQにより廃絶された旧皇族の男子を養子に迎えて(薄くなった男系の血液を、皇室からの新しい血液で濃くするという効果がある)、男系の皇孫を増やして緊急時に備える体制、なども提言している。

(5)秋篠宮家、悠仁親王への支援策の必要性
  また、現在の皇室典範には、「皇太弟」という規定も無いので、今上陛下が亡くなられ、今の皇太子殿下が即位された後に、秋篠宮殿下が東宮に入るということにも、現時点では、きちんと道筋が記されていない、と言う風に法的欠陥があるという。
  また、悠仁親王が皇嗣として、今上陛下が御存命中から、陛下の身近で宮中祭祀を見学されたり、帝王学を受けられるという、そういう体制にもなっていないという。そもそも、秋篠宮家に対する皇室手当は、東宮への予算の1/10でしかなく、秋篠宮家の従業員数は5—6名と東宮の1/10規模だし、悠仁親王に対する帝王学のために、学者、有識者を家庭教師的に招く予算さえ乏しい(十分ではない)、ということらしい。

2.第2部:女系天皇容認論の黒幕(副題:「天皇」の原理とは何か?)
(1)黒幕名簿
  理論的中枢は、元皇學館大学学長・古代史権威である田中卓(たかし)氏であり、これに追随しているのが、所功(ところ・いさお)京都産業大学名誉教授(田中の教え子)、神道研究家の高森明勅(あきのり)氏、「ゴーマニズム宣言」の小林よしのり氏だという。

  竹田氏は、天皇の存在を、科学的視点などで「解剖」してしまうと、2千年以上日本の国柄の中心として機能してきた「天皇」の原理を破壊する危険性を指摘し、「伝統」を護る、と言う視点から、慎重に対処していくことが好ましいと警告している。

(2)天照大御神は神様であり、天皇ではない
  女系論者たちは、そもそも皇室の祖先神であるアマテラスが女神であり、日本の歴史上女系天皇には違和感がないと言うが、アマテラスはあくまで神様のことで、人の世となって以来、古事記に天皇として記載されているのは全て男系の天皇だと、西尾、竹田両氏とも男系天皇が連綿と受け継がれてきた皇統史の歴史、伝統を崩す議論に反論している。「古代から続く原則を一つでも曲げれば、制度自体が危うくなる」とも西尾氏は警告する。

(3)神道の祭祀は、男系子孫が継承してきた
  また、西尾氏は、大名家、商家などで養子とか、婿取りなどの形で「家」の継承には拘るが、男性血脈の継承には必ずしもこだわっていない、という日本国における普通の常識とは異なり、天皇家=皇室のみは、男系血脈に拘って来たのは、これが信仰の形式だからだと説明される。「唯一例外的に絶対化されたもの」ということは、信仰の対象だからだと言う。

  更に竹田氏は、古事記に書かれた三輪山信仰の起源の話を重視する。崇神(すじん)天皇の時代に、疫病が流行り、三輪山の神様に何が原因かと問うたところ、「私を祀るのは、天皇とかその一族ではなく、私の直系の子孫でなければだめだ」と言った。そこで、神が言及したオオタ・タネコ(息富多・多泥古)と言う名前で捜索すると、彼が大物主の直系子孫だと判明し、このオオタが三輪山を祀るようにしたところ、疫病が止んだという(p.88---89)。
  つまり、祀りと言うのは、男系の子孫がこれを行わなければ意味がない、先祖は納得しないという認識が、三輪山信仰の発生時からあった・・・つまり、男系継承は、朝鮮半島を経て、中国思想が入ったからではなく、古来の日本の習慣として存在したという。更に竹田氏は、この事例を敷衍して、天皇はまさに「祭祀を代々継承しているところにその本義がある」、故に男系でなければならない、と強調している。また、出雲大社の祭祀も、男系によって継承されてきている、と言う。

3.小生のコメント
  上記の二つの部における議論は、完全に小生を納得させてくれる議論であり、両氏の対談で、きちんと今の皇室の在り方を継承していくべきことが分り、感服した。このブログの読者にも、本書を読まれることをお勧めする。

  ところで、本書には、残りの二つの部があり、一つは「第3部:雅子妃問題の核心」、もう一つは「第4部:皇室を戴く国の「原発問題」」となっている。
  冒頭でも述べたが、小生自身は、皇室問題には、実はあまり関わりたくないし、雅子妃には相当ご同情したい気持ちの方が強いので、指摘された問題に関し、コメントはしたくない。更に、原発問題に関しても、両氏の議論は相当説得力があるとは思うが、小生としては、経済合理性の面で異論があるので、やはりご紹介する気持ちにはなれない。

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。

 女系天皇容認論の危険性のことは、私も遅まきながらネットで知りました。私自身、皇室問題には疎い上に関心もありませんが、「ゴーマニズム宣言」の小林よしのりは、最近は右翼でも保守でもなく、マスコミの子飼い文化人になっています。尤も私は未だに小林よしのりの作品は見たことはありませんが。

 雅子妃に私はあまり同情は感じませんが、ネットでは様々な情報が飛び交っています。実は小和田家のルーツが北朝鮮系で、創価と繋がりがあるという噂まであり、拙ブログにもそんな長文コメントがありました。尤も書込み主は東京女子医科大学卒業、旧華族出身の医学博士を自称しており、詐称とデマでしょう。
http://blog.goo.ne.jp/mugi411/e/941f057bf9a9b99d8a596d1c7f8b8fc2#comment-list
mugi
2015/11/17 21:25
こんばんは、
  小生も小林よしのり氏については、奇妙な漫画を描く人、程度にしか知りません。
  皇室問題について、小生は実はそれほど興味もないし、関わりたくないのですが、週刊誌で色々勝手なことを書いているようなので、何かまともそうな意見を一応読んでおくか、と言うことでこの本を読みました。
  西尾幹二という人に付いては、ブログ(http://www.nishiokanji.jp/blog/)を時折読んでいて、偉い学者さんだ、といつも感心していたので、この対談でも、「天皇制」については、ほぼ納得できる議論をされています。
  まあ、皇太子殿下、雅子妃の双方に対し、西尾氏がかなり厳しいご意見を述べてもおられるのですが、そこの点は小生には少し辛い気持ちになる感じです。
  また、原発問題に関しては、今後も原発技術を進化させうる可能性もあるはずで、科学者たちが言うように、電力問題を総合すると、放棄すべき技術ではないと思う・・・この点は理系の科学者たちの議論の方が納得できるのです。
室長
2015/11/18 01:12
小林よしのり氏は「ゴーマニズム宣言」「戦争論」などで旧来のサヨクの欺瞞(慰安婦等)を暴いて、「ネトウヨ」を発生させた人です。
保守再生には大貢献したのですが、今は言論人が陥るリベラルの罠に嵌まったようにも見えます。
 
女系天皇論は難しいですね。
例え、愛子内親王殿下が即位しても男系の女帝です。男系旧宮家出身者が皇配になれば問題ありませんが。(過去の女帝は当然男系であり独身か夫が皇族の場合のみ。)
ただ、皇族の若い男系男子は悠仁親王殿下しかいないわけで、もし皇嗣が得られない場合はどうしましょうね。いわれるように、旧宮家の男児を出生時に皇室の養子にする(皇位継承候補者として育成する)くらいしか、案にありません。
# 竹田恒泰氏に関しては「もう露出するな」と思います。息子が皇室の養子になる可能性に対し自覚が無い。(皇帝や王が傍系から養子となって即位した時に実父が存命の場合、非常に厄介になります。そのために人畜無害な人ほど良いわけで、朝鮮末期の大院君のように政治的意志を持つと最悪です。)
 
原発問題は安保問題です。核技術(特に技術者)の確保が第一です。
核兵器で脅された場合、法的には NPT から脱退可能で堂々と核武装しても問題ないのですが、核武装が比較的短期間で可能かどうかで安全保障は全然違います。
同様に ICBM, SLBM に使う固体ロケット技術も(色々な圧力にもめげずに)確保しています。(H-IIA/Bロケットの固体ロケットブースタ SRB-A)
# 理系の人間として原子力制御に白旗を揚げるのが反対ということもありますが。
motton
2015/11/18 15:49
こんにちは、
 小林よしのり氏が、保守派再生に貢献した人ということ、なかなかいい評価かも。一旦有名となるとリベラルへと傾向が変わるというのは、不思議な流行ですね・・・日本のマスコミで生き残るには、リベラルでないと呼ばれないからでしょう。
  この対談で、両氏、特に竹田氏が考えているのは、三笠宮家、高円宮家などが旧宮家の皇孫男子を養子にして、宮家の存続を確保するとか、更に進んでは、高松宮家を再興するとか、そういう形で、男系子孫を増やしていくことです。秋篠宮家の二人の女王が婿を取って、いずれかの旧宮家を再興するという案もありかも。
  竹田恒泰氏自身は、「古事記完全講義」(学研)などを出版していて、神話を知るためには、分り易い手引きとなっていますし、やはり言論人として今後も皇室問題などにつき見解を述べていく学者としての道を選んでいるようです。こういう人がマスコミの偏向を正していくことは必要だと思う・・・なかなか同氏も結婚しそうもないし。
  原発を核兵器開発の可能性と絡める議論には、小生は距離を置きますが、電気自動車の普及など、益々今後電力を使う時代となる、とも思うし、福島で事故を起こしたのは、国産ではない米国から輸入した古い原発だった(国産原発の方は何とか爆発などの事故には至らなかった)というし、最新型の原発は、より安全となっているという。ともかく、原発ほど大気汚染しない、CO2排気を出さない発電所は無いわけで、理系の人々は今後も原発を再稼働させるべきと言う意見が多い。放射能に関しても、年間50ミリシーベルトまでは安全、と言うのが国際的常識だという。除染費用を過大に使用するのはもったいないのです。
室長
2015/11/19 10:59

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