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zoom RSS ボリーソフ首相誕生3年前の米大公電(その一)

<<   作成日時 : 2011/08/21 01:22   >>

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最近(8月18日付)のNovinite.com紙(ネット英字紙)は、またもやWikiLeaksを引用してボリーソフ首相に関する記事(「アルマーニに身を包むタフ・ガイ」との題名)を掲載しているところ(http://www.novinite.com/view_news.php?id=131252)、この記事にて引用されている、今年5月26日付の同じくWikileaks記事の方(http://novinite.com/view_news.php?id=128597)が面白そうなので、この5月記事を下記にほぼ全文翻訳してみることとした。
  なお、この公電の期日は06.05.05で、ボリーソフのGERB党が総選挙に勝利したのは09.07.05であるから、丁度「3年強も前に」、既に米大はボの勝利、首相職への就任の可能性を強く意識しており、さすがというほか無い。
  もっとも、ボが持つ暴力団的背景(SIK組親分衆の一人だった)と、未だに続いている犯罪組織との提携関係についても、決して忘れてはならない、そこは注意しつつも、しかし、この人物は米国の国益上有益なところも多いから、うまくつきあって、善導していくべきだ、との報告内容である。

1.06年5月5日付在ソフィア米大発公電 
  当時の駐ブルガリア米大使John Beyrleが、Borisov首相の正体についての観察結果と、同人とどうつきあうべきか、に関して本国の国務省に提言した内容。このテキストは、Balkanleaksサイト、及びwww.bivol.bgサイトでも読める由。

2.題名 
   「ブルでもっとも人気のある政治家:大いなる野望、怪しげな絆」

3.要旨 
  ソフィア市の現職市長にして、元内務省将軍であったBoyko Borisov氏が、国政の中心部に進出しつつある。新しい政党を設立し、同党はあっという間にブル国の主要政党として躍り出た。
  ボ氏は、今秋の大統領選に出馬するとの噂を直ちに否定した。どうやら同氏は、より権力基盤の強い首相職に目標を置いているようだ。
  これまで同氏は、我が大使館と、法の執行(警察事案など)に関連して緊密に協力してきたし、少なくとも公には、親米的態度をはっきりと表明してきている。
  とはいえ、同氏は、過去において深刻な犯罪活動に関与していたし、現在もLukoil社、ロシア大使館とも緊密な関係を維持している。

4.主要な経歴
  05年11月、同氏はソフィア市長に選出された。その前は、内務官房長として、治安・警察諸機関を2001--05年の期間(小生注:シメオン内閣時代)統括していた。
  内務官房長時代に、同人は、自ら麻薬取引犯人らを逮捕したり、自動車泥棒達を逮捕したりして、メディアに対し英雄的なポーズを繰り返して、国民的人気を博した。
  ボは、かつて自らを「ブルの最大の資産」と自賛したが、いずれにせよその平明な言葉と、飾らぬ行動ぶり、及び国家のエリート層に対する鋭い舌鋒で、一般大衆に受けている。すなわち、同人は、過去5年間、常に国民から60%強の支持率を誇り、政治家としてNo.1の人気を誇ってきている。もっとも、内務省における対犯罪組織対策の実績は、成功も失敗も含み、そこそこのレベルでしかないのだが。

5.一種の現象!
  3月27日、ソフィア市裁判所は、ボリーソフ氏が関連する政治団体「ブルの欧州的発展のための市民達(英語:Citizenns for the European Development of Bulgaria、ブル語の大文字を採った略称ではGERBゲルプ党)」の政党登録を認可した。
  英語では、奇妙な音に響く名称だが、ブル語では愛国主義と親欧州的価値観を巧妙にバランスさせるものだ。なおGerbという単語自体は、盾、紋章という意味で、愛国主義、国家主義を連想させるものでもある。
  欧州に言及することで、同党は、反EU極端主義の政党Ataka党との差別化を図っている。

6.裏の党首 
  ボ自身は公式には、GERB党の共同設立発起人でも、メンバーでもなく、市長職に専念している振りをしている。他方で、同人は、GERB党の広報官のように振るまい、全国を旅して、GERB党の各種イベントに参加して、種々の政治的公約を述べている。そして、その努力は効果を発揮しており、たった5週間で、この「市民協会(政党)」は、全国世論調査でトップの座に躍り出た!
  4月24日付の世論調査結果では、アンケートされた市民の22%が、「ボリーソフの政党を支持する」と答え、昨秋(04年秋)の世論調査ではトップだった「ブルガリアのための連合(BSP主導の連合会派)」は、19%と2位に転落した。

7.もう一つのナショナリスト政党Ataka党、及び中道右派から支持層を奪った 
  GERB党の自然現象にも似た、あっという間の上昇気流は、極右政党Ataka党から支持層を奪い取り、この故にAtaka党は、1月の11%という高い支持率から7%にまで落ち込んでしまった。
  更には、近年指導者層個人間の軋轢が元で、どんどん内部分裂を繰り返して小規模政党化し、野党としての勢力が著しく弱体化した中道右派諸政党(注:SDS、DSB、NDSVなど)からも支持層を奪っている。
  要するに、ボリーソフの、ナショナリスト・タフ・ガイ的信用と、親欧州的美辞麗句、及びポピュリスト的なスタイルが、多くの政治観察者らをして、ボこそはブルの右派系を纏め上げうる唯一の人材と見なすようになっている。

  ボ自身、益々自信を深めており、最近同氏が我が大使(米大使)と会ったときも、「Ataka党などは崩壊させてやる、NDSV(エンデセヴェ、シメオン元国王の政党。元来ボもこの政党に所属していた)は溶解しつつある」などと述べていた。
  ボ氏によると、「唯一連合会派を形成しうる政党はSDS(セデセ、90年代に政権を何度も取った右派系政党)である」由。この政党は、最近は世論調査で支持率が5%以下で「終わった党」ではあるが、「ブランドを生かしてやる」意義は残っているという。

(一部省略)

8.米軍基地設置における影響力ある同盟者
  ボ市長はこれまでも何度も、「米軍基地のブル領土における設置を含めて、自分は米国との緊密な関係を支持する」と述べている。
  5月5日付ブル紙1面特集ページ記事でも、同人は、「防衛協力協定」について、ブルの外交政策における「勝利」だと称賛し、共同訓練、米国投資の利益に言及している。基地協定反対論者に対しては、「国益に配慮して、口を慎め」と呼びかけてさえ居る。

  もっとも、時々ボは、特に政府の基地問題に関連する政策の、国民の間の不人気さを刺激するために、余計なコメントもする。4月5日Haskovo市で演説したときには、「自分は基地協定を支持するけど、こういう事案は、国民投票で民意を問うべきだった、国民投票をしなかったことは根本的な間違いだ」などと述べている。その後のコメントでも、政府を批判するために、更に辛辣に基地問題を扱った:「イラク問題では、政府はブル部隊を直ちに引き揚げるといいながら、実際には引き揚げなかったばかりか、更に追加部隊を派遣した」、「その上、彼ら(政府)は、アメリカに基地を無償提供して、代償として何も取らなかった」と非難したのだ。

  我が大使からボ市長宛の書簡で、上記のようなコメントについて、きつく注意したところ、ボはその後のスピーチなどで基地問題について辛辣なコメントを避けるようになった。
  そして、その結果として、上記5月5日の特集記事で、我が大使の「基地がもたらす効用などに関する意見」を大幅に引用しつつ、自らが基地協定を支持するとの立場を明白としたのだ。
   (小生注:米国としては、Sliven県東部、Kotel郡南東部に所在する、Mokren村から1km付近の「Novo seloブル軍射撃訓練基地」(注:共産主義時代からの伝統というか、ブル地図には、普通軍関係基地に関しては、何らの表示もされていない。このNovo seloという基地名も新聞報道で初めて判明した)を、両国間「防衛協力協定」にて、米軍の射撃訓練基地としても活用したかった。この基地は、空港が所在するBurgas県にも隣接しており、中東を睨んだ、事前の軍事作戦訓練基地としても有用。最近の報道では、今年8月末〜9月、米テネシー州州兵達と、ブル軍のMP(軍警)部隊・特殊部隊との共同訓練プログラムが、この基地で行われる予定という。
  BSP主導の3党連立政権(スタニーシェフ首相<05−−09年>)時に、この基地協定を締結したのだが、ボは、次の選挙への野心もあり、政府批判、愚弄を重視するポピュリストの立場から「基地提供には、代償をしっかり取るべきだった」とか、米国大使館から見れば、余計なノイズを発していたので、書簡で注意喚起をして、基地賛成との特集記事インタビューを引き出した、ということらしい。
  米大使が、旧東欧の政治家らに対して、どういう日頃の工作をしているかを窺わせるエピソードとも言える。また、日本の政治家らに対しても、同じように、秘密書簡で<または口頭で>警告、注意喚起がなされている可能性もあろう。Wikileaksによる米公電のリークは、少し過去の話が多いとはいえ、基本的な米国務省、米大使館の機能ぶり、行動様式を教えてくれるので、なかなか参考になる資料だ。)

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