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zoom RSS 中東和平交渉が、秘かに進展している?

<<   作成日時 : 2013/09/06 23:12   >>

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 オバマ大統領が、突如シリア空爆を言い出したことは、謎を呼んでいる。田中宇氏による下記の分析を、小生は中東専門家ではないが、非常に面白いと思ったので、概要と、小生の観測を記しておきたい。
 中東情勢は、裏読みしないとよく分らないのだ。
 もちろん、中東については全くの素人だから、小生の観測が当たる確率は低いとみていただいて構わない。ただ、情報を読むときには、表よりも裏を読もうとすることが大切だ、ということを教訓としてほしい。

1.シリアのアサド政権は、むしろイスラエルにとってはありがたい存在
 シリアにおける内戦が、政府軍優位の内に推移していること、シリアのアサド政権が、シーア派分派のアラウィ派(シリア全人口は2100万人、この人口の12%のみがアラウィ派で、76%ほどがスンニ派だという)に立脚していること、などから、イスラエルも「化学兵器使用」という「赤線=Red Line」越えの事態に、米軍が警告するために、限定的な空爆で懲罰することに賛成だ、という風に思われているが、そうではないという。
  (注:そもそも、国連の化学兵器調査団がシリア国内にいる期間に、しかも首都ダマスカスの一部地区で、アサド政権が化学兵器を使うというのは、利害損失を鑑みればおかしいという。しかも内戦の形勢は政府軍有利で、焦っているのは反政府側だから、益々状況証拠としては、反政府側の演出が怪しまれている。)

 実はイスラエルにとって、アサド政権は、ゴラン高原のイスラエルによる占領状態を容認してくれる、ありがたい政権だという。
 だから、イスラエルが、アサド政権の崩壊、その後のアルカーイダ主導政権の樹立(この政権は、ゴラン高原に対する軍事圧力をかけてくるはず)などという事態を歓迎するはずがないという。

 つまり、イスラエルは、米軍によるシリア空爆には、反対で、だから米国内においてもユダヤ系団体は、シリア空爆には賛同していないらしい。
 オバマも、イスラエルの真意を知ったから、議会の承認を要請し、時間稼ぎし、しかも最終的には、空爆を中止できる環境を整備しているのかもしれない。米軍部自体が、シリア空爆作戦に大反対している。

 また、イスラエルは、米国が中東から漸次後退していること、米国の中東での覇権主義が消滅して、今後は孤立主義が米外交の主流となることなども、計算に入れて、今現在、こっそりとエルサレムでパレスチナ側と「中東和平」を交渉中だという。
  (注:ちなみに、シリアの隣国には合計200万人の難民が流出し、その内50万人強がトルコに逃げてきた。更にブルガリアには、トルコからシリア人が1日当たり50人以上という数で越境、流入している。年末までに、ブルに滞在するシリア難民は1万人規模となると予測されていて、ブルもEU、国際赤十字、その他からの資金援助を要請している。まさに、かつてのベトナム難民のような状況らしい。)

2.世界が気付かない間に、中東和平交渉が進展している?
 実は、エルサレムのどこか秘密の場所で、ネタニヤフ政権と、パレスチナのアッバース議長の間で、ひそかに和平交渉が進展しているという。イスラエルとしても、何らかの方法で、パレスチナ人による独立国家を承認して、長期的な和平環境の実現を模索しているという。

 更に、この秘密交渉では、米国政府が派遣した仲介役インディク氏は、過激すぎる発言でパレスチナ側を刺激しすぎるという理由で、ネタニヤフに迷惑がられ、エルサレムに滞在していても、秘密交渉には出席を拒否されているという。ネタニヤフ、アッバースの両名が本格的和平を狙い、交渉を裏から主導しているらしい。真剣な交渉であるからこそ、ユダヤ右派に加担してはいるが、過激派過ぎるインディク氏は、むしろイスラエルのネタニヤフにとっては、迷惑な人物なのだ。

3.アラブの春の停滞と、揺り戻し
 (注:この項は、必ずしも田中宇氏の分析と一致しないかもしれない。小生が考えて書いている。とはいえ、田中氏の分析に多くを依存しているけど。)
 そもそも、中東における各国の思惑は、従来から表と裏の双方の側面があり、表向きの議論、声明などは、必ずしも額面通り受け取ってはいけないという。

 アルカーイダが、元来アフガニスタンにおけるソ連軍を潰す目的でCIAが育てた過激派集団であるが、いつの間にか反米・テロ集団に宗旨替えしたように、サウジという中東情勢の影の資金源も、幾度もいずれかの側に資金援助したり、資金を切ったり、他の当事者の支持へと乗り換えたりと、複雑極まりないのだ。

 最近一番この複雑さが如実に見られたのが、エジプト情勢で、軍部のクーデーターでムスリム同胞団が切られた。米国は、軍事クーデターによる民主革命の終結という事態に表向きには、一応は激怒して、対エジプト軍資金援助年間10億ドルの支出を切ったが、他方で裏では、親米国サウジにエジプト軍部に対する資金援助を肩代わりさせたらしい。

 結局は、エジプトがムスリム同胞団の支配下、汎アラブ宗教革命の路線を貫けば、スンニ派による宗教革命政権ということで、イランと同じような政体になってしまいかねない。このように、アラブ諸国が、本当の民主主義ではなく、宗教革命政権に次々に牛耳られていく形勢となれば、これはイスラエルにとってもかえって危険な状態だ。表向き、イスラエルとムシール政権は、それなりに協力しているかに見えることもあったが、実のところは、イスラエルは、この宗教的政権を警戒していたはずだ。だから、表向きムシール政権の倒壊を米国も、イスラエルも歓迎しないふりをしているだけなのだろう。

 シリアで起きていることも、実は同じような「アラブの春」という「ホメイニ革命」に似た現象に対する揺り戻しとして、再度元の状態に近い、中東の勢力均衡状態を回復していきたい、という動きなのかもしれない。そして、究極の目的が、イスラエルとパレスチナによる合意の成立、パレスチナ国家の独立達成、という最終目標なのかもしれない。イスラエルとしても、国内のパレスチナ住民の多産、パレスチナ系人口の増大には脅威を感じているはずだから、最終解決策としては、パレスチナ国家の独立を承認し、共存の道を探る方がよかろう。

 サウジ、ヨルダンのような親米国としても、従来から言われるように、本当のところは、王政維持の最後の頼みは、中東にイスラエルという軍事国家が存在し、反王政クーデターなどの際には、イスラエル軍が介入してくれるという、最後の憲兵隊としてのイスラエル軍をきちんと残しておきたいはずなのだ。だから、表向きパレスチナ支持、支援を看板に掲げながらも、ずっとこれまで強力なイスラエル軍が中東に存在する状態を維持したがったのだ。今後も、本音は今のままの「複雑怪奇な中東」でよいのだ。だから、パレスチナ国家が独立して、新規に独立すれば、サウジも、ヨルダンも、それなりにこの新国家を支援していくのかもしれない。だが、それは、イスラエル国家が消滅すればよいとか、イスラエル軍が無くなればよい、ということでもない。パレスチナの過激派は、潰していきたいはずだ。 パレスチナの過激派を潰すには、独立させるのが早道なのだ。

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コメント(8件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。

 シリア情勢への田中宇氏による分析は面白いですね。イスラム主義者の反体制派がシリアで政権をとるよりも、現アサド政権の方がイスラエルにとっては組し易いはず。化学兵器を本当にアサド政権側が使用したのか、私も疑わしいと見ていますが、水面下で田中氏の分析のような交渉が密かに行われていることは考えられますね。

「アラブの大義」を掲げるアラブ諸国が一同団結出来ないのは、イスラエル建国以前からだし、隣国との領土問題を抱えていない中東諸国はないそうです。ネタニヤフがかつて「アラブの大義など、ちっぽけなものだ」と嘲ったことがあるのは、それを熟知しているからでしょう。パレスチナとの交渉では、むしろユダヤ右派の時の方が上手くいくとか。

 末尾の「パレスチナの過激派を潰すには、独立させるのが早道なのだ」には、苦笑してしまいました。イスラエルではアラブ系住民の占める割合は増加の一途だし、パレスチナ国家の独立を承認、そこに移住させるほうが得策ですよね。仮にパレスチナ国家が独立しても、特に経済ではイスラエル頼りとなるはず。
 本音と建前の落差が大きく、面子を重視するのが中東世界だと言った研究者がいました。腹芸も大切であり、それを怠ると交渉が上手くいかないそうです。
mugi
2013/09/07 21:45
こんにちは、
 G20でロシアと米国がシリア懲罰に関して立場が縮まらなかったとか、米議会でも、未だに結論が得られないなど、オバマ大統領のシリア空爆への説得が難航しているようにも見えるし、しかし、空爆実施への動きが止まっていないようにも見える。不思議です。
 しかし、建前と本音の落差の大きさが中東外交の本質と考えると、分り易くなる部分が大きいと思う。

 サウジなどは、反イスラエルの運動に資金援助もするし、自国の教義も、イスラム過激派ですが、王室の本音は、現在の王室の安泰、将来についても王制維持が最大目的ですから、中東の憲兵隊としてのイスラエルを完全排除する意思など、本当は無いと思う。ヨルダンの王室も、国内にパレスチナ系移民が多いから、この脅威に対抗するには、最後の頼みはモサド+イスラエル軍です。

 アッバース議長は、元来が穏健派で、独立達成を至上目的と考えているはずです。ガザからは、イスラエル人入植地を完全撤退させ、現地に残るユダヤ人はパレスチナ国籍となるか、或はイスラエルに撤退するかの選択肢しかもらえない予定という。西岸については、入植地の扱いをどうするか、どの程度イスラエル側が西岸におけるユダヤ教聖地を諦めるか、或は聖地だけは認めてもらうのか、など難問が山積と思うけど、どういう交渉になっているか、皆目わかりません。
 それでも究極の目標は、双方とも意外に近いのかも。

室長
2013/09/08 11:40
中東情勢はよくわからないのですが、
田中宇氏については以下のような批判を頭に入れておくと良いかと思います。
http://blog.goo.ne.jp/mujinatw/e/82690a83f7689a90c673670dce3c6271
http://tomtom.iza.ne.jp/blog/entry/548761/

↑でも批判されていますが、特に中国関連になると孫崎享氏のような中国に都合のよい主張でどうにも気持ち悪いんですよね。
例えば、http://tanakanews.com/130515japan.htm なんですが、こうした記事でインドや NPT の脱退条項が出てこないなんて有りえない。出さない理由は何なのか?

また田中宇氏のいう「多極主義」というのは、WWI 後にアメリカが孤立主義になった時とほぼ同じもので、これは岡崎さんが http://www.okazaki-inst.jp/2013/07/post-105.html で述べているように極めて危険なんですよね。

motton
2013/09/09 18:49
mottonさん、
 田中宇氏の議論の多くが、眉唾、或は、小生の論点とかけ離れていることは十分承知しています。
 それでも、中東に関しては、同氏が意外と面白い見方をするし、米国政治への、或は英国政策についての視点も、裏読みの側面からは、それなりに参考になります。

 ともかく、世界のネット情報を読みこなすことは小生にはできないけど、田中氏は一応各種の英字紙をすべて読んでいるようで、その点も評価できる。結論は異なることが多いにしても、参考意見が満載なのが田中氏のブログです。小生は有料記事も購読していて、参考にさせてもらっています。
 まあ、眉唾しながら付き合っていくべき評論家ですが。
室長
2013/09/10 11:07
 田中氏を激しく非難しているブロガー「むじな」も胡散臭い面がありますよ。昨年Lixさんが「むじな」と原発問題でやり取りしたことを記事にしていますが、理工系のLixさんの方が正論に感じました。
http://blog.goo.ne.jp/aqua_regia13/e/6382a7de69c94bd523b1d6afee535098

 Lixさんは理工系の大学準教授だそうで、まず詐称ではないと思います。原発問題となれば、その人の左派ぶりが分かりますよ。
mugi
2013/09/10 22:03
田中宇氏についてはお節介が過ぎました。すみませんでした。

シリア情勢ですが、ここにきて大きくロシアが関与してきましたね。
シナリオがあるかのような手際の良さです。
motton
2013/09/11 12:07
mugiさん、mottonさん、
 いろいろご教示ありがとうございます。小生は、田中宇氏のブログを読み始めて既に10年ほどにもなります。分りにくい記事の時もあるし、意外に明快な論旨の時もある。ともかく、確かハーバード大学に学んだ、それなりのインテリ、情報屋としてのキャリアのある人です。多極化という議論も、それなりに当たっているとも思う。ドル価値の暴落も予言した。
 とはいえ、小生は、そう簡単に米国が衰退して負けるとも思えない。むしろ国内体制の脆弱性、中国史の救いのない暗さ、国民自体が政府を信用できない体質など、長期的には負けて当然の国と思う。裸官などという言葉があり、家族、一族を欧米に分散して居住させたりして、特に資金を外国に持ち出し、本人も何時でも国外逃亡を図れるように準備している国が、長持ちできるのか??やはり日本の方がまともだし、亡命先に想定されている米国、カナダなどの方が、よほどまともな国なのです。
 田中氏は、時折北朝鮮とか、イランなどの肩を持つような記事も書くけど、恐らくは何らかの意図があるのかも。米、英両国に厳しい側面があるのも、田中氏の記事の特徴ですが、それでもさほど偏向記事と言えないことも多い。今回のイスラエル、パレスチナによる秘密交渉などは、少なくとも日本では新聞報道もなく、本当に交渉しているのならば、田中氏のブログを購読していて得したと思える記事です。
 ロシアは、ソ連の時代から、中東に武器を売ったり、石油、天然ガス輸出という自国の利害とも深くかかわるから、相当な諜報網を築いているはず。モサドとロシア諜報機関との関係も昔から、ロシア系ユダヤ人人脈を通じて深い。ロシアが地中海に海軍を派遣し、シリア情勢を監視している。中東の産油国をけん制する軍事力として、シリアを抱えておくことはロシアの国益になるはずです。
 
室長
2013/09/11 17:28
(続)
 ともかく、中東がある程度混乱している方が得(石油価格が上がる)なのは、ロシアもそうです。米国のオバマ大統領だけが、少し「正義感」「人道主義」に左右され過ぎかもしれません。米国政治は、時として、「宣教師的、十字軍的」役割を背負いたがる悪弊があります(キッシンジャーは、米国の理念外交を基本的には否定する)。
 英国在住の例のtnaさん(http://tna6310147.iza.ne.jp/)も、最近シリア情勢につき、解説書を書き始めました。こちらもご注目ください!
室長
2013/09/11 17:39

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