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zoom RSS トルコのエルドアン首相が窮地に陥った背景

<<   作成日時 : 2014/02/07 21:23   >>

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 最近トルコにおける警察・検察による汚職摘発でエルドアン政権が大打撃を受けている情勢を横目で見て、ブルガリアにおけるSotir Tsatsarov検事総長が、12年12月20日に検事総長に選出されたのち、主としてGERB党の醜聞にまつわる検察捜査などでGERB党を追い込み、13年5月の早目(2か月ほど前倒しされた)の総選挙によるBSP(社会党)主導政権誕生をもたらした経緯との類似性に小生の関心が集まっている。

 トルコの政情に関しては、これまで詳しくフォローしておらず、小生自身はあくまでもブルガリア専門と自認しており、トルコに関して何らかの政情分析するのは、さすがに自信はないのだが、そうはいっても「バルカン専門家」の立場からは、何らかのコメントをすべき立場のような気もする。

 そこで、初めから断わっておくと、小生がこれから書く分析は、一応は産経紙の切り抜き記事を中心に、分析らしく見せるが、根本のアイデアは要するに、最初に書いたように、「ブルガリアにおける検事総長のあまりに突出した、政治的動き、そしてそれが、ボリーソフ前政権(内務官僚・警察官僚中心の、ロシアのプーチン政権に似た勢力)を嫌った恐らくはCIAによる裏工作で、Tsatsarov検事総長を使って、検察によるブルガリア内政への干渉を行わせた。すなわち、米国がボリーソフ政権の独裁化、強権政治への進化を阻止すべく、社会党(BSP)政権に勝利させるべく、ブルの内政を誘導した」との推論に基づき、どうやら、同じような論理、手法で、米国・CIAは、エルドアン政権がイスラム系の思想でトルコ内政を「世俗主義からイスラム主義へ」と変化させるのを嫌って、内政干渉しているのではないか、との視点で書くこととする。結論が先にあるし、トルコ情勢には詳しくない非専門家の独断的推論だから、トルコ専門家によるご意見、コメントを戴ければ幸いだ。

1.エルドアン首相の人物像(12年11月19日付朝日新聞、中東アフリカ総局長石合力氏の記事)
 イスタンブールの市長から中央政界に進出し、03年の首相就任以来、目覚ましい経済発展と民主化を成し遂げたのがレジェプ・タイップ・エルドアン首相(58歳)だ。イスタンブールの中流家庭に生まれ、イスラム聖職者養成学校にも学んだ首相は、アラビア語を話せる。
 市長在任中に、イスラムに関する詩を朗読したことが、宗教的扇動罪に問われて服役した。01年に、イスラム主義者らで公正発展党(AKP)を結成した際には、被選挙権剥奪のまま党首に就任した。

 AKPは、既成の世俗中道政党が汚職と経済失政で国民の信を失う中、いわば「第3極」として登場し、02年の総選挙でいきなり第1党になった。11年の総選挙では議会の過半数を占めた。エルドアン氏のカリスマ的魅力に加え、イスラム色を控えた中道右派として高い経済成長率を維持し、世俗派にも支持を広げた。

 外交では、アラブ、イスラム諸国とも関係を強化し、リビアやシリアなど地域問題で主導権を握った。ポピュリスト的な言動もあるが、アタチュルクが目指した西欧化、世俗化とは違う手法での近代化、民主化は、トルコ革命に続く「第2の維新」とも言える。

 だがそのイスラム的な市民運動の上に浮いた形で広く支持を集めるモデルにも転機が訪れている。AKPには公職4選禁止の内規がある。3期目の首相任期が15年に迫る中、14年の大統領選への転出説が浮上している。大統領権限を強化する憲法改正もささやかれ、「21世紀のアタチュルク」による独裁になると懸念する声も出ている。比較すべきは、ロシアのプーチン大統領なのかもしれない。(小生注:エルドアンも、米国が心配するプーチン体制へと進化する恐れがあった。これは、ブルのボリーソフ政権に似ている。)

 9月末、首都アンカラで開かれた政権奪取10周年の党大会で、エルドアン氏は言った「我々の最初の成果達成目標は(革命100周年の)2023年だが、本当の目標はマラズギルトの戦いから1千年後の2071年だ」。
 成長率を維持すれば、2050年にはトルコは英国に次ぐ欧州第2の経済大国になるとの予測(英貿易投資総省)もある。セルジュク・トルコが東ローマ帝国を撃破した11世紀の戦いに、エルドアン氏はどんな思いを込めたのだろうか?

2.トルコ混迷:首相対イスラム団体、政権打撃避けられず(13年12月26日付産経紙、在カイロ大内清記者)
 閣僚の息子らが絡む大規模汚職事件が摘発されたトルコで、警察や司法に強い影響力を持つ国内最大のイスラム団体とエルドアン首相の対立が深刻さを増してきた。25日には、息子が訴追、もしくは拘束された内相、経済相ら閣僚3名が辞任するなど、来年の地方選、大統領選に向けて政権への打撃は避けられない情勢だ。通貨リラが対ドルで急落している他、25日には株価も下がるなど、影響は経済にも広がりつつある。

 トルコ警察が、建設事業を巡る贈収賄事件の一斉摘発に乗り出したのは今月17日。事件では辞任した閣僚二人の息子を含む24名が訴追された。エルドアン氏は翌18日、「(捜査は)国家内国家を作ろうとする連中の汚い作戦だ」と述べた。

 首相が暗に非難したのが、イスラム団体「ギュレン運動」だ。イスラムの価値観に基づく学校や予備校を多く運営し、その出身者を捜査・司法当局や財界に送り込んできたとされる。(注:北朝鮮も韓国の予備校生などに資金援助して、大学の法学部などに入学させ、左翼系の法曹人を多数誕生させたという。韓国司法界が、第二次大戦中の強制徴用問題などで、過激な判決を下し、日本企業に賠償を命じているのも、これら北朝鮮が司法界に送り込んだ左翼系学者のせいだ、との説もある。)

 エルドアン氏側は、捜査に関わる警察幹部らを大量更迭する強権も発動した。ギュレン運動などが、捜査を通じて政権転覆を図っていると見て、排除に乗り出した見られる。
 これに対し、組織を率いる、米国亡命中のイスラム指導者ギュレン師は、21日の声明で、名指しは避けつつも「神の怒りを買うだろう」と、エルドアン氏の対応を批判した。

 摘発前の11月、エルドアン氏は教育改革の一環で予備校を規制する考えを表明していた。国内の予備校の1/4を運営するとされるギュレン運動が標的との見方が一般的で、対立にはこうした伏線があったと見られる。

 イスラム系の与党AKPを率いるエルドアン氏は、03年の首相就任以降、世俗主義の「守護者」を自認する軍の政治的影響力を殺ぐことに力を注いできた。イスラムの価値観普及を目指すギュレン運動もそれに協力してきたとされる。その結果、軍をはじめとする世俗勢力が弱体化し、AKPは好調な経済を背景に、政治基盤を強化した。こうした中で、エルドアン氏がギュレン氏と対立するのは、体制内に根を張るギュレン運動を自身への「脅威」と見做しているためだ。
 官・財界に強い影響力を持つギュレン運動を敵に回したことで、今後の政権運営が困難となる可能性がある。

  ★産経紙注:ギュレン運動:
   トルコ東部エルズルム出身のイスラム指導者フェトフッラー・ギュレン(Fethullah Gulen)師(72歳)が率いる社会・教育団体。「ヒズメト」とも呼ばれる。トルコ国内や中央アジアを中心に活動を展開、ネットワークは100カ国以上に広がるとされる。トルコのイスラム国家化を志向しているなどとして、危険視された同師は、1999年、病気治療名目で米国に事実上亡命した。トルコ検察当局は、00年,同師を被告不在で訴追したが、08年無罪となった。

3.政権派NGOのテロ支援疑惑(14年1月16日付産経紙、在カイロ大内清記者)
 トルコからの報道によると、同国警察は14日、シリア内線に乗じて台頭する国際テロ組織アルカーイダ系勢力を支援したなどとして、エルドアン政権に近いイスラム系非政府組織(NGO)「IHH人道支援基金」などの強制捜査に乗り出し、職員ら少なくとも23人を逮捕した。トルコではエルドアン政権を巻き込んだ汚職疑惑の捜査も進んでおり、今回の事件は政権への更なる打撃となるほか、同国のシリア政策の変化につながる可能性もある。

 現地メディアは、逮捕者に複数のアルカーイダ工作員が含まれるとしている。トルコでは最近、IHHのトラックが支援物資を装って、シリア反体制派に武器を運んでいたことが発覚した。
 IHHや政権側は反体制への武器支援を否定しているが、野党などからは、反体制派民兵らを領内に保護するなど、強硬な反アサド姿勢をとるエルドアン首相に批判の声が強まっていた。そんな中、トルコのギュル大統領は14日、各国大使らとの会合で、「シリアに対する外交・安全保障政策は再考が必要だ」と発言、エルドアン氏と距離を取り始めた、との見方もある。

 一方捜査を受けたIHH側は、捜査は「組織てな中傷キャンペーン」だと批判し、エルドアン氏と対立するギュレン運動が黒幕だとの見方を示した。ギュレン運動は、トルコ国内で多数の学校、予備校を経営し、官界、財界に出身者を送り込み、司法・治安機関にも強い影響力を持つとされる。ギュレン師は、かつてエルドアン氏と友好関係にあったものの、昨年以降、関係が極度に悪化した。

 エルドアン氏は、自身周辺の関与も取りざたされている大型疑獄事件捜査は、ギュレン運動が背後で糸を引くものだとみて捜査当局者数百人を更迭し、対決姿勢を強めている。今回のIHH関連捜査でも政権側は、捜査指揮官を解任するなど介入姿勢をとっている模様だ。

 IHHは、2010年5月、ハマスが実効支配しているパレスチナ自治区ガザ地区に支援船団を派遣し、イスラエル軍の急襲を受けたことでも知られる。
 域内のイスラム勢力と関係強化を進めるエルドアン氏の政策の「実行役」を担当してきた面もあるだけに、今回のテロ支援疑惑は、政権の求心力低下にも繋がりそうだ。

4.そのほかの報道の要旨
 13年5月には、クルド労働者党(PKK)戦闘員らが、政権側と和解し、トルコ領内から自主的に国外退去した。同6月には、イスタンブール市内の公園の一つを、オリンピック競技用会場として開発するとの政権側意向に、市民らが反発して、大規模なデモが勃発した。
 また、同10月には、エルドアン政権が、中国製の防空システムを買い付ける交渉を中国企業と行っていて、米国、NATO、EUなどが懸念しているとの報道もある。

5.小生コメント
 要するに、基本的には、エルドアン政権が、一種のイスラム主義政権として、反米、反イスラエル的な動きも見せているらしい模様だし、上記3.の場合は、シリア国内のアルカーイダ系反政府勢力に対する武器支援までしていたという。
 そういう風に、イスラム過激派的動きを秘めているのがエルドアン政権だとすれば、米国・CIAが、何らかの動きをした可能性はあろう。特に、4.最後の中国製防空兵器システムの導入(恐らく価格の安さと、中国との関係強化の両面を考えての動き)意向は、NATO加盟国としてのトルコの立場に鑑みれば、米国としては許せない行動と言えよう。

 米国が、米国在住のギュレン師とその部下たちの組織を使って、特にトルコの司法界、警察内部でギュレン師の系列の人々を動員して、ブルガリアにおける検事総長を使ってのG党への嫌がらせとG党潰しのキャンペーンを総選挙直前までやらせて成功した事例も参考に、工作を仕掛けた可能性が考えられないか、というのが小生の推理だ。トルコでも、エルドアン政権が、ロシアのプーチン独裁政権に近い基盤を整備することを阻止する作戦であろう。

 ブルガリアの工作でも、米国は、旧共産党勢力である社会党(BSP)を勝たせて、プーチン並に「シロヴィキ(旧KGBに当たるブルの旧DS、警察)」勢力を結集して独裁化方向を狙ったボリーソフのGERB党を潰した。トルコでも、AKPがプーチン体制的な基盤を築き上げる前に、米国としては、米国在住のギュレン師という、もう一つのイスラム勢力を使って、エルドアン陣営潰しに動いている、という可能性を小生としては推測するのだ。
  (小生注:ちなみに、最近の田中宇氏の分析でも、エルドアン首相が米国のトラの尾を踏んでいる可能性につき言及している。エルドアン氏自身が、最近「在トルコ米大使館の内政干渉」を批判しているのだという。)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。

 ブルから見たトルコ情勢は面白いですね。私はトルコ専門家ではなく、トルコ語も話せないタダの中東オタク歴女に過ぎません。しかし、貴方の「米国・CIAは、エルドアン政権がイスラム系の思想でトルコ内政を「世俗主義からイスラム主義へ」と変化させるのを嫌って、内政干渉しているのではないか」という視点に完全に同意します。

 明らかに米国共和党系のシンクタンクに所属しているブロガーが昨年、「トルコの中国製ミサイル導入は由々しき事態である」という記事を書いています。この人物はシンクタンクの代弁者だし、記事は米国人のホンネでしょう。
http://newglobal-america.tea-nifty.com/shahalexander/2013/10/post-d8b2.html

 また、このブロガーは「安倍首相の参拝、そして靖国とアル・カイダの類似性」という香ばしい記事も書いています。
http://newglobal-america.tea-nifty.com/shahalexander/2014/01/post-a848.html

 日本にも様々な工作を仕掛けている可能性が大いにあり得ます。米国と距離を置こうとする「独自外交」の姿勢を示せば、直ちにつぶしにかかるのが米国。
mugi
2014/02/08 21:03
こんにちは、
 ブルガリアのBorisov前首相は、元来が旧内務省内の消防畑の将校でしたが、抜擢されてDS(旧秘密警察)のUBO(要人警護局)要員となり、しかも、独裁者Todor Zhivkovの直属護衛官だった人物です。護衛官への昇進には、ボがブル国内で柔道チャンピオンだったことが影響していると思う。いずれにせよ、自由化後の一時期警備会社Ipponを立ち上げ、一種のマフィアとして活躍していたが、その後警察組織に戻り、シメオン内閣時には、内務官房長という警察制服組のトップとして、メディアを使い有名人となり、シメオン内閣後は、ソフィア市長に当選、GERB党を創設、そして09年の総選挙で勝利して13年2月まで首相の座にあった。G党政権は、内務省・警察官僚中心の政権で、しかもボによる巧みなメディア操作もあり、次第にプーチン的な独裁者として基盤が固まる危険性があった。

 米国・CIAは、この「プーチン型」独裁政権、自主独立派が大嫌いなようで、エルドアンがイスラム主義的民主主義という形で、経済政策でも成功をおさめ、政権基盤を固め、米・イスラエルには背を向け始めたのを見て、潰そうと動いたのでしょう。産経紙記事でも、エルドアンが、プーチン式の権威主義体制を固めだしたので、米国が危惧している。同じイスラム主義の「ギュレン運動」がエルドアンと対立するようになった、というような書きっぷりです。「プーチン式」と噂され始めると、要するに裏で米国が動いているということかも。
室長
2014/02/09 15:03

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