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zoom RSS ネットアセスメント(総合戦略評価)という戦略手法

<<   作成日時 : 2015/08/03 15:17   >>

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  今回も、小生が溜め込んだ新聞切り抜きの中の、一部の秀逸な記事をご紹介しようと思います。
  まず第一は、小生も全く知識が無かった「ネットアセスメント」という戦略分析手法のことです。日本も台頭する中国の脅威に備え、生き残りを図るためには、このような手法を早急に学び、総合的な戦略を立てて、国防を充実させる必要性があるのです。
  第2は、上記に比べれば小さい範疇の話ですが、安倍総理の国際戦略が、訪米によって大きな成果を上げたことを、日本のマスコミが正当に評価していないという苦情です。

1.米国は、長期戦をネットアセスメントという戦略思考で戦ってきた(6月11日付産経紙、宮家邦彦筆、原題「ネットアセスメントに注目せよ」)
(1)日本も採用すべき手法
  終戦から70年、日本は平和に恵まれたが、世界では民族主義の大波が再びうねり始めた。日本がいかに生き延びるかを考える上で参考とすべきは、米国で生れたネットアセスメント(総合戦略評価)だ。

(2)国力を総合評価、冷戦でソ連に勝利
  この手法とは、国家間の戦略的対立・競争について、長期的趨勢を、軍事以外の人口、統計、経済学などを踏まえて、総合評価するシステムのことだ。
  米国防総省に、ネットアセスメント(総合戦略評価)室=ONAと言う部局が存在する。最近まで室長は、今年94歳になる米国随一の戦略思考家アンディ・マーシャル(以下AM)だった。
  AMは、1973年以来40数年間、ソ連や中国との競争の趨勢につき、軍事にかぎらっず、より総合的視点から正確な分析・評価を国防長官に提供してきた。
  ONAを世に知らしめたのは、冷戦時代のソ連経済に関する評価だ。当時CIAは一貫してソ連の経済力を過大評価していた。AMは早くから統計経済学などを駆使して、ソ連経済の脆弱性を主張し続けた。彼の分析の正確さは、90年代のソ連崩壊が証明した。ソ連はONAに敗れたと言っても過言ではない。

(3)中国に関しても、ONAは冷静に分析している
  冷戦終了後AMの関心は中国に移った。90年代末までに、ONAは「中国が中長期的に強大化し、米国にとっては脅威となり得る」と評価した。
  AMは人民解放軍の軍事評価だけではなく、中国経済、社会、人口動向にまで調査対象を広げた。

(4)日本として学ぶべきこと
  上記のような、総合戦略評価は、今後数十年間日本が直面する大国間の戦略的対立・競争の趨勢を事前掌握し、大国間の衝突を生き延びる知恵を出す上で有用と信じる。

  それでは何をすべきか、筆者が理解するネットアセスメントの特徴を列挙しよう:
@対象は、自国と潜在的敵国との軍事的対立・競争の本質とその長期的趨勢である。
A目的は、敵との対立・競争の長期的趨勢を敵よりも早く特定することにより、相手の長所を避け、短所を攻める準備時間を極大化することだ。
B形式は、一回限りの評価報告ではなく、常に更新される複合的分析・評価である。
C軍事専門家に加え、政治、経済、歴史文化など、異なる分野の専門家の参画が不可欠だ。
  ネットアセスメント(総合戦略評価)を継続的に実施するには、膨大な人的、財政的資源を長期間投入する必要性がある。

(5)正しい質問の設定が肝要
  AMは、「正しい評価には正しい質問が必要」と説いた。

  ここでは、筆者が、対中総合戦略評価に必要と思う「正しい質問」を列挙する:
@中国政府、中国共産党の長期的目標は何か?・・・いま中国は阿片戦争の恨みを晴らしたいだけなのか、それともすべての外国軍隊の中華圏からの放逐まで含むのか?
A中国経済は人民解放軍の軍拡を支えらえるのか?・・・敵に耐え難いコストを課す米国の戦略により、ソ連は崩壊したが、中国にも同じ手法を応用すべきか?
B人民解放軍の情報化戦遂行能力は、米軍をしのぐのか?・・・中国が長距離精密攻撃能力の面で、米国に追いつけば、米国の情報戦の優位は短期間で消滅するのか?
C解放軍は本当に強いのか?・・・・中国は地域覇権を「戦わず」に獲得したいのか?戦争が不可避なら、サイバーと宇宙の情報化戦で、敵の急所を叩き、戦闘前に勝利することを考えているのだろうか?

(6)戦略苦手の日本、しかしもはや時間は残されていない
  米国でもAMほどの戦略思考家は数えるほどしかいない。されば、AMとのその弟子たちが編み出した総合戦略評価を日本が簡単にまねできるとは思わない。
  しかし、我々に時間は無い。今から中国、日米の戦略的対立・競争の趨勢につき、軍事、政治、経済、歴史を包含するネットアセスメントを始めておかないと、手遅れになるかもしれない。

   (小生注:米国のCIAだけでも、日本にはない膨大なシステムであるが、そのCIAすら、対ソ連諜報では相手の能力を「過大評価」して、過っていた、という。その過ちを是正する上で、別の機関、即ち国防総省内の一種のシンク・タンクのような役割を担っていたONAが、正しい回答を示して、レーガン政権の対ソ連攻勢を仕組み、「甘ちゃん」であるゴルバチョフ書記長を手なずけて、冷戦終結へと持ち込んだ、と言うのが正しい歴史であるようだ。
  残念ながら、小生はONAについてはこの論文で初めて知った。そして、この論文を読んで、民間シンク・タンクすらまともに発達していない日本だが、何とか早急にこういう組織を立ち上げて、戦略評価の手法を磨き上げ、対中国競争で手遅れとならないように頑張るべきだと思う。とはいえ、一番重要なことは、戦略研究成果を政府の対中政策に反映させていくことであろう
。)

2.安倍総理の米議会演説(4月29日)の意義:「安倍訪米のポイントは歴史認識にあらず、対中外交戦に米国を巻き込んだ意義こそ大きい」(5月22日付週刊ポスト誌、長谷川幸洋(ゆきひろ)筆)
  安倍晋三首相の訪米をたんに成功と評価するのは正確ではない。大勝利と言うべきだ。誰に勝ったのかと言えば、中国である。だが、マスコミをその核心部分を正確に認識できていない。読売新聞でさえ、米議会での演説を「大戦『痛切な反省』」(4月30日付)と報じた辺りにも、そのことは滲み出ている。
  そうでは無い、演説のハイライトは、日米がかつてたがいに戦った戦争の傷と痛みを乗り越え、いまや対中国戦略で歩調をそろえた点にこそあった。

  安倍総理は、演説で傍聴席に招いたローレンス・スノーデン海兵隊中将と栗林忠道硫黄島守備隊司令官の孫、新藤義孝衆議院議員を紹介し、二人の握手を「歴史の奇跡」と評した。米国の議員たちは立ち上がって拍手で応じた。

  その上で首相は、「太平洋からインド洋にかけての広い海を自由で法の支配が貫徹する平和の海にしなければならない」と述べた。「中国の無法を許さない」と言う強いメッセージである。
  その首相の対中認識は、オバマ大統領との会談でしっかりと共有された:大統領は、「中国は、東アジア、東南アジアで力を拡大しようとしている。中国のやり方は、間違っている」と言い切ったのだ。

  オバマ政権の対中認識は、中国が一方的に防空識別圏を設定した2013年11月を境に、再び対中警戒感を高める方向に変化した。
  今回の首脳会談では安倍総理が、安保法制見直しをテコに、揺れていた米国を再び日本の側に呼び戻す役割を果たした。他方、中国は、米国取り込みに失敗した。だから「勝利」なのだ。
  
  (小生注:この論文筆者の長谷川氏は、東京新聞・中日新聞の論説副主幹であるらしい。この両紙ともに、相当左傾した怪しげな記事が多いらしいのに、週刊ポストで毎週論陣を張る長谷川氏の視点は常に現実主義的で、空想的平和主義からは完全に離れた、立派な論説を特徴としている。)

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