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zoom RSS 親中幻想が消滅した米国は、「内向き」傾向で更に劣化するのか?

<<   作成日時 : 2016/04/28 14:53   >>

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 さて、早くも4月下旬となり、このブログの室長としても、少しは老体に鞭打ちつつ、何かを書かねばと言う気分になった。
 以前から、時折買っては棚の中で腐っていた月刊誌の記事で、注目すべき記事を発見した(注:以前にも読んだのだが、さほど注目せず、切り抜きのまま放置してきたもの。時間を経て読み直すと感動する、と言うこともあるものだ)ので、下記に要旨を紹介しつつ論じてみたい。

 小生が注目したのは『正論』の平成25年(2013年)9月号に掲載された、冨山泰(とみやま・やすし、「国家基本問題研究所」評議員・元時事通信外信部長)氏が書いた「日本再生への処方箋:米中関係について」と言う論文だ。
 米国の対中関与政策に関する歴史的推移に関しては、実は櫻井よしこ・北村稔・国家基本問題研究所編『中国はなぜ「軍拡」「膨張」「恫喝」をやめないのか』(文春文庫)に主として依拠しているという。
 以下に要旨(骨子のみ)と、小生のコメントを記す。

1.冨山論文の骨子
(1)「責任大国」への誘導を模索
  リチャード・ニクソン大統領が71年7月15日に電撃訪中を発表し、それまでの封じ込め政策を転換して以降、対中関与政策の一環した狙いは、主敵としてのソ連を牽制するために、「敵の敵を利用する」ことであった。
  ジミー・カーター政権(77--81年)で米中国交は正常化された。

  ところが、89年6月の「天安門事件」で、ジョージ・H・W・ブッシュ(父)政権(89--93年)は、制裁措置を発動した。更に、東欧の社会主義諸国が相次いで倒れ、91年12月にはソ連邦が解体し、ソ連に対抗する「中国カード」は不要となった。
  ジョージ・W・ブッシュ(子)政権(01--09年)時には、01年9月11日のアルカイダによる米同時テロ事件に伴い、ウイグル独立派の「イスラム・テロリスト」から得られた情報が中国から米国に提供され、中国は「対テロ戦争のパートナー」となった。

  05年9月、ロバート・ゼーリック国務副長官からは、中国に対して国際社会の「責任あるステークホルダー利害関係者)」になるよう促す演説が行われた。これは、中国が経済大国、軍事大国への道を歩んでいることへの警戒心の反映と言えた。米国防総省は02年から『中国の軍事力』と言う年次報告書を毎年発行するようになった。
  06--08年、ホワイトハウスや国防総省が発表した安全保障関連文書には、中国との将来の軍事的対立に備え「ヘッジする保険をかけ危険を分散する)」必要が繰り返し論じられた。つまり、ヘッジが、ステークホルダーと並ぶブッシュ(子)政権の対中政策のキーワードとなった。

(2)アジア回帰に踏み切ったオバマ政権
  バラク・オバマ政権(09年〜)となっても、当初はブッシュ(子)政権の対中協調路線が踏襲されたが、09年12月のコペンハーゲンでのCOP15会議で、中国は温室効果ガス排出削減の検証をめぐって米国と激しく対立するという、責任ある大国らしからぬ行動をとり、10年3月には北朝鮮による韓国哨戒艦「天安」魚雷攻撃事件に際して、中国が北朝鮮を庇い国連安保理の非難決議が出せなかったなど、中国の対米敵対的態度が鮮明となって来た。

  更には、南シナ海で、中国が一方的に領有権を主張し「核心的利益」と米国に通報すると、これを認めないヒラリー・クリントン国務長官が10年7月ARF(ハノイ)の場で、「南シナ海の航行の自由は米国の国益」と言い切り、中国外相と激しい応酬となった。
  その上、東シナ海の尖閣諸島沖で、10年9月には中国漁船が海上保安庁巡視船に体当たりする、と言う事件さえ発生した。米中関係は、冷却化が進行した。
  11年秋クリントン長官は、米外交誌に論文を寄せ、「アジア回帰=リバランス政策」を表明した。

(3)挫折した米国のステークホルダー路線
  もともと米国の対中関与政策には、3つの(間違った)思い込みがあった。@中国の経済発展を助ければ、中産階級が育って発言力を増し、政治的民主化につながる。A中国が経済的、軍事的に強大化する危険よりも、国内問題の解決に失敗して弱体化し、アジアの安定を損ねる懸念の方が大きい。故に、米国は関与を通じて繁栄した開放社会の発展を助け、国内混乱の芽を摘むのが良い。B中国関与を続けることで、中国が台頭しても、国際社会のルールを守るように誘導できると考えた。

  「責任あるステークホルダー」路線は、生みの親であるゼーリック氏自身が11年に中国を「気乗りしないステークホルダー」と呼び、誘導作戦の失敗を確認した。とはいえ、グローバリゼーションが進行し、経済の相互依存が強まった今日、封じ込め政策に転じることは不可能だ。

  古代ギリシャのトゥキディデスは「新たな大国が国際社会に登場する時、既存の大国との戦争は不可避」と予言した。11年末にイラクから撤退し、アフガニスタンからも米軍撤退が始まって、10年間余りの戦争に幕を閉じたいオバマ政権は、中国との新たな軍事的緊張を抱え込みたくは無かった。「安全保障のジレンマ」と言う理論もある:二つの国家が互いに相手の軍事力強化を敵意の表れと解釈して、自らも軍事力を強化すると、結局は敵対関係を現実のものとしてしまう・・・。

  クリントン長官が、オバマ第1政権限りで退陣し、後任がジョン・ケリー国務長官となると、明らかに「リバランス政策」を放棄して、対中協調路線に回帰するような発言が目立ち始めた。要するに、オバマ第2期政権では、「中国を敵に回さない配慮」が顕著となったのだ。

2.小生コメント
(1)内向きへの傾斜は、オバマ政権開始以来の路線
  上記冨山論文は、2年以上前の論文とは思えないほど小生にとっては新鮮に見える。米国のオバマ政権としては、国内世論(特に民主党支持層)が「内政重視、民生重視」を要求し、益々「内向き傾向」が強まる中、元来オバマ自身も、対外戦争をやり過ぎたブッシュ政権を批判して大統領選に勝利したのだから、オバマケアなど、国内の貧困対策、社会福祉向上と言う方面への傾斜はやむを得ない面もあった。

  軍事予算を削減したいから、対外的な緊張を高めたくない、中国の台頭にもできる限り目をつぶりたい・・・と言うのがそもそものオバマ政権の態度だから、その腰の引け方を見て、中国が図に乗り、南シナ海、東シナ海で傲慢な「大国風」を吹かせ、東南アジア、日本を完全に敵に回してしまった。米国の警戒心も呼び起こしてしまった。

(2)次期米政権は、もっと内向きとなる危険性・・・しかし、結局超大国の地位を捨てることなど、どの米国政治家にとっても、その愛国心とプライドが許さないであろう
  そして、今の米国大統領選の動向を見ていると、クリントンは左派のサンダース候補と対立、競争する中で、自分自身が左傾して、国内貧困対策などを優先せざるを得ない傾向にあるように見える。つまり、軍事予算をさらに削減する可能性があろう。もっとも、幅広い外交経験を持つから、極端に対中国融和路線を取ることの危険性も承知しているはずだ。

  同時に共和党のトランプ氏の場合は、初めから対外軍事的関与に否定的だから、中国が付け入る余地が増える恐れもある。もっとも、過激な演技が好きな性格から、中国が傲慢に出れば、激怒して、過剰反応する可能性もあるから、中国はむしろトランプ氏を怖れているのではないか?とも思う。

  つまり、小生自身は、結局はどちらが大統領となっても、最初の1年ほどは対中融和を試みても、2年目には堪忍袋の緒を切って、対中警戒路線に戻ると思う。ニクソン以来の歴代米政権が、結局は何度も中国に対して善導とか、融和とかを試みてきたものの、何れの試みも中国側から踏みにじられ、苦汁を舐めさせられたのだ。
  第二次大戦を通じて、太平洋全体を手中に収めた米国が、今更西半分(かつて日本が支配)をよこせという中国に我慢できるはずが無い。ましてや、中東、アフリカに対しても中国は手を突っ込み始めた。放置できる時間幅は、ほとんど残っていない。

(3)日本の政策は?・・・中国の膨張主義に、徹底抗戦するしかない
  日本としては、米国の歴代政権が、当初は対中融和路線を試みるが、結局は裏切られ、対決路線へとかじを切らざるを得なかったことを、キチンと踏まえて、新政権の当初の態度などに一喜一憂することなく、冷静に構えていくべきであろう。

  もちろん、日本国自身として、国防体制の強化に励むべきだし、兵器の改良、先端技術化にも取り組み、無人兵器を特に増強していくべきだが、他方では、あまりに「好戦的」と見られることは相変わらず避けていくべきであろう。中国は、相変わらず、対米対決路線を裏でこつこつと固めつつも、表面の宣伝戦では、日本の「軍国主義」を非難し続ける戦略を取るに決まっているのだ(中国自身の危険性から目を逸らす作戦)。

  米国の国内世論の一部も、相変わらず、米国内に増え続ける中国、韓国系市民の工作で、対日批判を続けると見るべきで、こう言った「歴史戦」に対しても、日本としては大きな注意を払って「正しい歴史認識を広報」していかねばならない。
  要するに、日本は辛抱強くあらねばならないし、挑発に対しては、きっちりと反論していかねばならないのだ。

  他方で、一番の前線は、尖閣諸島、南シナ海での海空軍による神経戦となろうから、この方面において、米軍とも協力しつつ、執拗に中国の勢力拡大阻止に努めていかねばならない。
  日本としては、焦らず時間の経過を待てば、米国の理性は必ず戻ってくる、というのが小生の読みだ。

(4)中国の対外的威圧態度の要因
  ちなみに、歴史的に見て中国は常に対外的には威圧的で、高慢な態度に終始する。自らを「中華」と規定し、諸外国は「夷狄」と見做すからだ。
  歴代中国王朝の大部分が、実は、支配階級が「夷狄」出身の征服者たち(異民族)であったか、或は、中国人であっても、反乱軍の首領たちであって、少数の支配階級が大多数の平民、市民を搾取するという、そういう図式は2千年以上全く変わっていない。だから、中国の対外政策と言うのは、周辺国夷狄政権に対して「朝貢」を要求したり(朝貢使節団が中華政権に対し、服従の例を取るのと引き換えに、持参した貢物の価額を数倍上回る貴重品を賜って、返礼とする)、華夷秩序で服属する属国の王に対しては、中国の皇帝から「○○国王」としての衣冠、王号を授与したりするのを基本とする。つまり、平等な外交関係と言うものを知らない。これは、国内において政権そのものが民意を信用できないから、対外的な威信を飾りたて、異国の人々も政権に対して服従していることを見せつけることで、対内治安にも役立てているからだ。つまり中国には、純粋な「外交」は存在せず、「国内対策の一環が、外交」であるにすぎない。

  要するに、国民としての一体的感情=国民国家としての近代的体制などは、相変わらず成立しておらず、支配階級対被搾取階級・被支配民族と言う関係しか国内に存在しないから、対外的な威信に拘り、諸外国に対して威圧的、高慢な態度を常に取り、自国民の服従も得ようとするから、近代的、現代的な国際関係を築き得ない、と言うことなのであろう。

  中国の人民解放軍も、結局は共産党という政党に直属する武装勢力なのであり、その兵力は、必ずしも対外的な用兵に限定されてはいない、と言うか、実際に一番肝要な使用方法は、国内における反対、反乱を鎮圧する対内武装兵力としての用兵が重視されている、とも言える。

  対外的には、高価な近代兵器で武装していると見せかけ、威圧すればよいのであって、本格的な戦争は、実際にはできるだけ避けて、小国相手以外には用いない・・・という張子の虎的な側面がある。実際に兵力、武力が必要なシチュエーションとしては、国内の反対勢力の弾圧、デモなどの鎮圧、支配階級の利権の擁護なのである。

  つまり、中国は過去の古代王朝体質から未だに脱却できておらず、この故に、国民国家としての同胞意識、自民族・国家への愛国心に立脚した、本格的な「近代国民国家」の段階には、ほぼ永遠に近づきがたいので、常に国内的な弱点を抱えており、その規模の割にはもろいところがある、と見て間違いはないであろう。とはいえ、デジタル時代のハイテク技術で、徐々に成功度を高めている国家であり、米国、日本などに対するサイバー戦争も激しさを増している。我々も油断などしている余裕はない、と言える。

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
 おはようございます。

 米国の内向きはどうやらこれから進んで行くのでしょうが、これは我が国にとって自立した国家にもどるよい機会だと思います。安全保障やアジアでの金融の動き方が以前とは違い、地域リーダーとして米国の了解のもとに動いているように見えます。宮沢首相のアジア基金が米国に潰された時とは大違いです。

 ところで、今まで米国(政府ではなくNGOかもしれません。)は彼らの価値観(民主主義・LGBTなど)を世界展開してきました。内向きになるということは、その各国の文化を作り替える様なことは少なくなるということでしょうか?ただ内向きになると国連やNGOの力が強くなると、リチャード・ハースは2008年に「無極化の時代」という論文のなかで述べています。この”国連”の時代になるなんてことは、あると思われますか?
都民です。
2016/04/29 07:19
こんにちは、
 自立、独立と言う言葉にとらわれて「しめた!」などと思うのは、バカですね。国際社会の安全保障と言うのは、小生がこれまで時折繰り返してきたように、ヤクザ世界の論理とほぼ同じもようなもので、つまりは、非常に単純な利害関係と、同時に単純明快な臣従関係の両側面が存在する社会です。故に、単純に自立すれば得と言うことでは全くなく、むしろ危険となるでしょう・・・だから、二国間、多国間の同盟、安保協力体制の構築が欠かせないのです。日本独自で、絶対安全な国防体制を構築できると考えるのは、安易です。

 米国が、民主主義とか、人権主義を掲げてきたことは確かですが、中東などで石油利権を握るときには目をつぶってきました。米国国内でも、LGBTに非寛容な宗教的立場もあるし、LGBTの人権擁護を国際社会で推進してきたとは思わない。米国が内向きとなって、国連とかNGOの力が強くなるとも思えない。また、米国が内向きとなっても、徐々に逆の動き(中東での巻き返しの動き)も増えたのがオバマ政権だった。例え、トランプ政権ができても、長い期間対外面で忍従するかは怪しい、というのが小生の観測です。

 国連と言うのは、5大国の利害が錯綜して、特定の方向を推進できる主体ではないし、今後も国連が外交の主流を占めるなどと言うことは無いと思う。また、国連の一部下部機関には、左翼人士がたむろしたり、勝手に親族を要職に引き立てて機関を私物化するなど、色々な問題がある。問題が大きくなれば、米国は単独その機関から撤退して、財政負担を拒否するなど、思い切ったことをする。日本も、怪しからん人物が独裁するような機関からは、早期に脱退し、財政負担を拒否するとか、国連下部機関の正常化を迅速にやれるように、圧力をかける方向で動くべきでしょう。
室長
2016/04/30 15:51
自立と言っても、今までより重い役割を負う代わりに裁量がやや増えるのではと思うということでした。自衛隊は成り立ちから米軍が関与していますから、あくまで米軍の一部としての運用しか出来ないですし、ここ数年の日米の両軍のかかわりは深化しています。ただ装備や訓練の様子から、以前より自衛隊の役割が拡大していて変化があります。そして長期的に見ても最強であり続ける米と同盟を組むのは、我が国にとっての利益だと思っています。

「内向き」というのはフェイクなのかとも思いましたが、そう書いてあるものも見当たらず?でしたが、やはりそうなのかと納得できました。ありがとうございました。
都民です。
2016/04/30 21:44

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