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zoom RSS 国際情勢の俯瞰図(17年7月)

<<   作成日時 : 2017/07/15 14:24   >>

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 さて、2か月以上も記事をさぼってしまいました。
 暑くなってきたし、益々頭脳を働かし、勤勉を保つのは、高齢化のためもあって難しいです。

 それで、これまでとは違って、ざっくりと大まかに、国際情勢を観察していく、と言うやり方に変えようと思います。国際情勢を大まかに俯瞰するには、故岡崎久彦氏が指摘していたように、一番の世界的覇権国家である米国の視野で見ていくことが妥当だと思う。

1.米国情勢
(1)トランプ政権は綱渡りが続く
  トランプ政権は、「ロシア疑惑」が深まってしまい、生き残れるのかどうか、疑問符を抱えたまま政権を維持していくしかないようです。マスメディアが、ほぼすべて反トランプとなっている(例外はFoxニュースなど)ので、米国では異例の政権であるともいえる。

(2)民主党政権は、大衆を裏切った、ウォール街べったりの政権だった・・・これが、トランプ政権誕生を導いた裏の要因
  オバマ政権が、実はウォール街お抱えの民主党政権だった・・・これが故に、リベラル系のメディアは支持したが、大衆は離れていき、後継を狙ったクリントン夫人も、同じくウォール街が裏についていることが丸見えで、庶民層が反発して、離れた・・・・ということを7月10日付産経紙で松浦肇という記者(在NY編集委員)が書いています。

  オバマ政権に関しては、過去にも、母親がCIAのエージェントだったし、オバマ自身も事実上はCIAお抱えの候補者だった、との噂もあった。結局、オバマは、大衆を上手に騙してくれるエージェントとして優秀で、米国のエスタブリッシュメントの主流派、特にCIAなどの情報機関が丸抱えした政権だった、という説もある。

(3)トランプは、自分と側近の利害でしか動かない・・・貧しい白人層がやがてトランプの嘘に気付き、離れていく惧れがある
  トランプ氏は、共和党候補といっても、実は党の非正統派(だからウォール街の支持を得ていない)で、ラスト・ベルトの失業率の高い、貧しい白人が多い地域を地盤に成功した特殊な候補ですから、リベラル系が主流のマスコミが敵として攻撃することは覚悟の上のようです。その分、政権運営のノウハウが難しく、今後もややこしい政局運営になるか、あるいはいつか「嘘が破綻して」、政権の座から追われるか・・・と言う瀬戸際に追いやられるでしょう。

  (注:トランプ政権に関しては、小生はトランプ一家という中小企業主が、共和党本体を乗っ取って成立した、怪しげな政権と見ています。とはいえ、正統な選挙戦で勝ったのですから、民主主義の原則から言って、よほど大きな間違いがなければ、生き残る可能性もあるのです。

  その「嘘」とは何か?小生が見るところは、「Poor Whiteのための政権」を謳ってはいても、実際に推進している政策は、金持ちのための減税とか、貧しい労働者が依存している社会福祉(フード・スタンプ、オバマケアによる医療保険、など)を、財源不足を名目にどんどん切り捨てるということですから、ラスト・ベルトの貧しい白人たちの懐を直撃するだけです。

(4)イバンカ、クシュナーがトランプの裏の「頭脳」
  トランプ政権の背後勢力としては、娘のイバンカの婿であるクシュナー氏が正統派ユダヤ教徒であることが知られていて、結局イスラエル、或いは親イスラエルのユダヤ系国際組織が背後にあるとみて間違いないでしょう。

  そうはいっても、レーガン政権が、レーガンと言う2流の俳優が、政治家としての「演技力だけ」で胡麻化しながら維持していた政権(頭脳部分は、キッシンジャーとか、シンクタンクが受け持っていた)とは異なり、トランプは自らTwitterを武器に、ワンマン的に振る舞っている部分もあり、クシュナー・イバンカの単なる操り人形とも言えないようです。逆に、さほどインテリと言えないトランプ氏が、暴走してしまう危険性もあるのが難点だと言えます。米国のエスタブリッシュメントとしては、信用できないし、ハラハラせざるを得ない政権と言えるでしょう。

2.中東情勢
(1)イバンカ・クシュナーが描く中東情勢の最適化政策
  勝手な憶測だが、現在のイスラエル政権にとっては、パレスチナ国家の独立を許容し、ユダヤ人国家と並立させる「2カ国両立政策」は嫌で、あり得ないことなので、中東情勢は「適度に混乱」している方が都合がよい(パレスチナ問題に焦点が当たらないから)・・・したがってトランプ政権の対中東政策も、「混乱を容認する」こととなろう。

  中東世界で、イランとサウジの二つの陣営が対峙することは、イスラエルに対する世界の注目が消えるという意味でも、イスラエルにとっては好都合だ。更には、危険なイランの動向次第によっては、サウジ陣営がイスラエルと妥協、結託する余地を深めるので、益々好都合でさえある。(注:実際には、昔から、王制を採用しているアラブ諸国、或いは親米派のアラブ諸国は、裏ではずっとイスラエルの情報機関(モサド)から極秘情報を得るなどしてきたし、イスラエルの軍事力さえも、いざと言う時には頼りになる存在だ。

(2)ロシアにとっても、アサド政権生き残りができればよい
  実はロシアにとっても、上記の「クシュナー路線」は、困った政策ではない。例えシリア全体が安定しなくとも、ロシアが軍事基地をアサド政権から認められている地中海沿岸の海軍基地と空軍基地さえ維持できれば、後は目障りすぎて、しかも力がありすぎたISを排除したら、ある程度の和平・安定化がなされるし、その程度の安定でも構わないのだ。

(3)クルド人勢力をどう処遇するか?
  実は、トランプ政権は、オバマ政権に比べれば、対IS軍事作戦に力を入れている。とはいえ、米軍はほぼ地上軍を配備しておらず、陸軍部隊としては、現実には、シリア北部、イラク北部に根を下ろすクルド人勢力に依存している。

  ISの2大拠点の一つだった、イラク北部のモスル市の解放を実現したのは、イラク陸軍(シーア派の軍隊)+クルド人勢力で、モスル市自体は、元来がスンニ派地域だったので、イラク陸軍よりは、クルド人勢力(スンニ派)の部隊が主力となって活躍したようです。

  シリア北部のラッカ市(ISの首都)に対する攻略作戦でも、地上部隊として大活躍しているのは、クルド人勢力だという。イラク陸軍は、シーア派主体の軍隊で、同じくスンニ派地域に所在するラッカでは、住民が警戒するから、クルド人部隊の方が動きやすい。

  トランプ政権としては、ISを壊滅させたら、一応その後のシリア北部、或いはイラク北部における「良き統治」、「民主化」などまで面倒を見る気はないであろうから、さっさと撤退していきたいはずだが、米軍主導の多国籍介入部隊(空軍主体)の地上作戦で主体となって働いてくれたクルド人勢力に、いかに報いるつもりなのかが気になる。やはり、モスル市、或いはラッカ市とその周辺における行政組織などは、クルド人勢力が主体となっていけるように面倒を見てやるべきではないか?または、代替するクルドの「国土」に近いものを与えるべきではないか?と言うのが小生の感想だ。

  ただし、クシュナー構想では、クルド勢力は、イスラエルとの友好関係を保証しなければ、イラク、或はシリアの国土の一部に対する「自治的政府の樹立」を認められないのではなかろうか?逆に、イスラエルの利益にかなうならば、クルド人勢力は今後も、一定の存在感を持ち続けうることとなる。そして小生の感じでは、クルド人たちは必ずしも宗教的熱狂主義に熱心ではなく、むしろ自分たちの民族的解放、独自領土の獲得が目標なので、イスラエル・米国が配慮してやる余地はあると思う。

  もちろん、クルド勢力の「自治・独立的な領土獲得」、「民族としての台頭」は、トルコのエルドアン政権が一番嫌っていることだが。

3.極東情勢
(1)中国をどうするか?
  トランプ政権としては、本当のところ極東に関しては、中国、北朝鮮、韓国、ロシア、台湾、日本の6カ国が対立し、勢力変化が少ない方がよい、と思っているのではなかろうか。要するに、利害が背反し、若干の混乱が継続している方が、米国としては安心できるということ。

  特に中国に関しては、米国はいつも、意外と甘い・・・中国が軍事大国へと台頭することに対しては牽制の必要性を認めるけど、本当にその実力があるとまでは思っていない。むしろ中国の上層部、特に特権階級は、自分たちの家族としての生き残り、利益の蓄積、所有する財貨の海外への移転、などにばかり熱心で、本当の愛国心などはないと見抜いている可能性が強い。トランプ自身も金持ちだが、米国から逃げよう、資本を海外に移転しようと考えたことはないであろう。米国の大金持ちたちは皆そうで(タックスヘイヴンに一部のカネを隠すものの)、だからこそ中国の支配者層に対しては、軽蔑していると言えよう。

  とはいえ、中国のIT関連技術力の向上は、それなりに脅威で、特にサイバー攻撃に関しては、益々警戒を要する相手となっている(この点はロシアも同様だ)。

  しかし、結局は、力の外交をあからさまに推進し、攻撃的な姿勢を隠蔽することが少なくなった習近平(Xi Jinping)政権は、米国にとってはさほど怖い相手ではない、とも言えるのかも。
  元来米国が対中国警戒心を米国内で喚起してきた意図は、国内の軍産複合体が、軍事費を増額させるための「広報・宣伝的視点」からやって来たことで、どこまで本当に脅威と考えているかは、怪しい。中国解放軍などは、所詮は「張りぼて」の軍隊なのだから。

  つまり、隣国で、その脅威度の高まりをひしひしと感じている日本国民とは、若干視野が異なると思う。

(2)北朝鮮をどうするか?
  小生は、4--6月の情勢で、トランプ政権も真剣に北朝鮮に対し、軍事的対処をするのではないか、と思っていたが、そこまでの必要性は米国として感じていない、と言うのが結論と言える。
  所詮は、小さすぎる「軍国主義国家」であり、大言壮語しても、自分と家族さえ生き残れれば良いという、ちっぽけな政策しかない政権の話であり、米国としては、どうして中国がさっさと別の、より穏健な政権に挿げ替えないのかが不思議なだけらしい。

  他方で、習近平にすれば、自分自身が「民主的言論」を国内で大弾圧して、独裁体制を強化しようとしている、ある意味自国自身も西欧、米国市民の視点からすれば、「異形(いぎょう)で怪しげな共産党独裁政権」なのだから、隣国に、もっともっと異形で特殊な「金正恩体制」が存在すること、金正恩が、自分自身の恐怖感を「対米大言壮語」でごまかしつつ、「吠え続けていること」は、自分の体制維持の視点からは、好都合なことだから、真剣に排除するつもりなどは無いのだ。
 
(3)極東に関する米国の視点
  「トランプ・クシュナー政権」としては、極東地域に関しては、対米赤字を削減させるとか、今後も、対米協力を励むように、各国に個別に圧力をかけていけばそれでよい、2次的な意義しかない地域であるらしい。(注:その意味では、台湾が欲しがる近代兵器を売るとか、韓国にも高価なTHAADの配備を強いるというのは、米国の軍事産業を儲けさせることであり、トランプにとっては歓迎すべきことで、中国の異論、反対などは知ったことではないのだ。

  トランプ一家にとっては、中東地域こそが、米国による世界秩序維持の要であり、最重要な地域で、極東は、そこから利益を引き出すための、金の生る木でさえあれば良いのだ。
      (了)

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。2か月ぶりの新記事、興味深く読ませて頂きました。

 さてトランプですが、初の外国訪問先がサウジだったというのに驚いた人も多かったはず。それまでの米大統領の初の外国訪問先は、カナダやメキシコなど隣国が多かったから。
「実際には、昔から、王制を採用しているアラブ諸国、或いは親米派のアラブ諸国は、裏ではずっとイスラエルの情報機関(モサド)から極秘情報を得るなどしてきた」という箇所は流石ですね。最近サウジはカタールをいじめていますが、カタールにトルコ軍の基地があるのは興味深いです。

 米国にとって中東こそ「最重要な地域で、極東は、そこから利益を引き出すための、金の生る木でさえあれば良いのだ」は、苦いことに事実です。それでも日本には最重要同盟国だから、頭が痛い。
mugi
2017/07/17 22:05
 ご無沙汰しています。

 ワザとか論点をぼかす様なニュースが氾濫しているなか、スッキリと分析された記事を有難うございます。

 ブログ主様は、正統派ユダヤ教徒のクシュナー氏がトランプ政権の要とされていますが、するとイスラエルの米国への影響力は今までよりも強くなったという事でしょうか?イスラエルの望む中東は、イランの影響力は抑えられないとやりにくいでしょうね。だからでしょうが、オバマさんの方針を転換して、イランとの核合意を見直していくと発表していました。

 それにしても、トランプさんが金融の規制を緩和したり、福祉を自助努力に求めるのはラストベルトの人には厳しいと思っていましたが、そうなるのでしょうね。
都民です。
2017/07/20 08:47
mugiさんこんにちは、
 米国にとって極東、特に中国は、20世紀には、英国などの欧州列強に乗り遅れたので「門戸開放」と言う論理で割り込もうとして、そこに日本も邪魔をして・・・ともかく遅れて世界に乗り込んで、利益を得ようとした新興帝国主義国ということでした。
 今も、多くの米国人にとって、極東とは、お金儲けの土地でしかない。
 他方で、パレスチナの土地は、クリスチャンにとっては「聖地」です。ユダヤ教徒たちが軍事的な庇護=警備員役を買って出て、危険なムスリムから守ってくれることは、ありがたいことなのです。米国が、清教徒の歴史に元を発する、キリスト教と言う宗教を大事にする、一種の宗教主義国家の側面もあることを忘れてはならないでしょう。つまり、パレスチナの土地は、「聖地」であり、死活的に重要と考えるとちなのです。石油ばかりが重要なのではない。
室長
2017/07/21 09:28
都民ですさんへ、
 米国にとっては、イスラエルは、従来から「聖地エルサレム」を警備してくれている重要な存在と、上記のmugiさんへのコメントで書きました。つまり、イスラエル、或いはユダヤ人と米国とは、宗教的にも一種の同盟国で、従来から深く、地下茎を通じて繋がって来たのでしょう。今はそこが、表面にも出てきただけで、特異な現象ではないかも。クシュナーがいなくとも、結局米国とイスラエルは同盟国なのです。

 米国内政では、オバマケアの見直し法案は、共和党の議員の間にも抵抗が強く、実現しないとの報道が見えます。ラストベルトを含め、エスタブリッシュメントでない貧者の立場に目配りしないと、大衆迎合主義のトランプ政権は持たないはずで、そこの点で、政策がふらついているのは見苦しいです。オバマケアは温存すべきだし、フードスタンプなどの社会福祉も切らない方が、トランプ政権のためです。
室長
2017/07/21 09:36

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国際情勢の俯瞰図(17年7月) ブルガリア研究室/BIGLOBEウェブリブログ
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