酒害こそ要注意


昨日(09/04/23)の「草なぎ剛」による深酒・公然わいせつ事件ほど、酒の害を世の中に喧伝するに適した事例はないだろう。小生は、07/08/13の記事(「タバコ・喫煙権」、 http://79909040.at.webry.info/200708/article_2.html)で、酒の害に比べればタバコの害はまだ小さい方だから、現在の過激すぎる嫌煙・煙害運動を少しは制御して、むしろ酒害撲滅運動の方を重視すべきだと書いた。なかなかご賛同を得られないのだが、草なぎ事件を機会に、もう一度この点を検証してみたい。

1.酒害に関する議論は、共産圏では盛んだった
  小生の記憶する限り、昔のソ連・東欧共産圏とか現在も社会主義を継続するベラルーシでは、酒害撲滅キャンペーンは頻繁に行われていたが、禁煙、煙害に関するキャンペーンはほとんど無かった。タバコの価格は、給与との比較で相対的に高めに初めから設定されていて、その故に税収面で政府の利益が高いほか、酒害に比べて家庭崩壊、人格破壊の程度が低く、政府にとっては害が少ないからだ。
  他方、酒に関しては、思想統制の強い共産圏では、酒でも飲んでいなければこんな人生生きておられるかという感じで、老人のみではなく、若者ですら酒に走る人々が多く、しかも、政府としてもウォッカの価格、ビールの価格などは、高くすればするほど、皆が密造酒の製造、増産に走るので、統制が難しい側面もあった。
  ブルガリアの場合、昔からブドウ生産が盛んで、田舎では誰でも自家製ワインを製造していたし、ブドウ以外の果樹園も多くあり、その上自宅には、実のなる木以外は植えないという伝統があるので、果実と砂糖を混ぜて製造するラキーヤ(果実焼酎)の製造も盛んであり、こういう自家製酒類を制限するほどの「悪政」には、遂に共産主義政権といえども、踏み切れなかった。

  タバコの場合は、ブルガリアでは、田舎でオリエント葉を生産していた南部の農家(大半はトルコ系の農家)もあり、畑から収穫したタバコ葉をそのまま巻いて一種の葉巻として喫煙する場合もあったし、葉を刻んでパイプタバコを楽しむ人もいたようだが、基本的には、タバコは、国営企業の独占事業で、上記の通り価格的にも相対的に高価で、この故に、喫煙率はそれほど高くはなかったし、吸う人も、一日の本数は比較的少なかった。

  要するに、市民が貧しかった共産圏諸国では、自家製酒類、あるいは国営企業製でも結構価格が低かったウォッカなどによる酒害が目立った。また、タバコの害は、あってもそれは本人の健康悪化のみで、社会的な被害、害悪は限定的だったから、政府がキャンペーンを組むほどの大きな害ではなかった。

2.喫煙で、どの程度の社会的害悪があるか?
  国家統制がお好きな共産圏社会でも、タバコの害はお医者様が患者個人にのたまう程度で、大きな問題とならなかったように、煙害は所詮個人限定であり、自分自身の責任で吸いたければ吸えばよいと小生は思う。喫煙家の小生は、自宅では換気扇の下で吸うし、戸外では、喫煙場所を守る。しかし、街の中における喫煙箇所がどんどん減っていくことに危機感を感じる。

  ともかく、バルカン半島では昔から酒、タバコ、セックスの3つを「三悪」というが、三悪の全てを控える人間に対しては、奇人扱いである:「それなら、何が楽しくて生きているのか?死んだ方がましではないか?」。

  そういうバルカンの社会では、もちろんセックスに関しては、狭い田舎社会では、配偶者以外とのセックス機会を得ることは難しいし、たばこは相対的に高価だから、限度があるし、酒に関しても自家製造できる量はやはり限度があって、この故に過度の三悪に関しては、可能性が低く、それなりに均衡が取れていたのが伝統社会だ。

  最近の煙害論は、受動喫煙という医学的根拠が知られて、それなりに喫煙にも歯止めをかける必要性が生じたからの話しであろうが、しかし、どうも一種の弱い者いじめ的な雰囲気まで感じる(おばちゃん達の、他人への「おせっかい欲」を刺激している部分もある)。

3.酒害に関して論じられることが少ない日本
  近年まで、余り大酒飲みが多くなかったし、一般人の酒量が欧米に比べて少なかった日本で、酒害論議が元来低かったのは分かるが、最近の風潮としては、草なぎ事件に見られるように、若い人々を中心に、酒害に関し無防備、無警戒な人が多すぎると小生は感じている。
 
  いったんはまると、それなしではすまされないという、中毒症状的な側面があることは、酒もタバコも同様だが、タバコの場合は、あくまで人格破壊とか、家庭崩壊、自動車運転事故というような、社会的害悪にまでは繋がらない。もっとも医師、厚労省の役人の議論としては、タバコも健康被害の増大、医療費増大の罪があるという意見があり得るが、これに関しては小生としては、寿命が縮まるから、総医療費は少なくてすむ(故に社会的な損害は少ない)という風に、反論しておきたい。

  そもそも、共産圏とか、欧米では酒害キャンペーンが盛んだし、西欧ではタバコ税のみではなく、酒税も相当高い国も多い(北欧など)。米国では、酒類のCMで、例えばビールを人間が飲むシーンは御法度だ。ビールそのものの映像はよいが、日本のように、ジョッキとか缶に口を付けて飲み干すシーンは、ダメなのだ。本当に飲みたいという「衝動」を禁酒中の人々に与えてしまうからだ。

4.酒害キャンペーンを阻む中小企業擁護論
  小生が、なぜ日本国で酒害キャンペーンが広がらないのか考えてみると、その根本には、日本には酒造業者が中小企業とか、伝統的な地場産業が多く、政治家も庶民も、これら中小企業者の立場に立って、酒害撲滅キャンペーンが出来ないのだと思う。
  日本酒や、焼酎などは、確かに日本の伝統的な文化の一部という面があるとも思うが、そうはいっても、酒害の恐ろしさをきちんと市民が認識していないと、社会的な損害、害悪は大きいし、今後も更に増えていきそうだ。
  巨大企業が独占的なビール、ウイスキーに比べて、日本酒、焼酎の世界は、中小企業が活躍しているし、特に焼酎は酒税の面でも優遇されているような気がする。

5.タバコも中小企業を育成したら良い
  逆に言えば、小生のようなタバコ擁護論者にとっては、タバコの世界がJTの独占(米国のタバコが唯一の競争相手)というのが、煙害キャンペーンばかりが蔓延り、喫煙者の喫煙権を制限することが「いじめ的に流行る社会現象」の元凶のように思える。タバコ税を引き上げよとすぐに言うバカな政治家も多いし。

  日本国内でタバコ葉を生産している農家は、今では少なくなっているように思う(小生は国内で、生産農家を見たこともないし)。JTにとっても、輸入葉の方が、味はよいし価格も安いので、国内の生産農家は、お荷物に過ぎないのだ。

  要するに、国内にタバコ擁護派を形成するための地盤が、JT職員くらいしかいないのが、煙害論ばかりがマスコミを通じて叫ばれる元凶なのである。煙害論過剰な社会の風潮を逆転して、酒害論も盛んにするには、日本のタバコも、中小企業の製造業者を増やすという工夫をすればよいのでは無かろうか?国産の良質なタバコ葉を開発し、タバコ農家を増やすことも擁護論には必要だろう。タバコ工場も、地場ビール的な、工夫を凝らした味とか、風味を育てる中小企業が増えれば、面白くなる。JT自体が、子会社をいくつも立ち上げて、地場タバコを製造させるという方法もあり得るだろう。

  07年の記事で紹介した、ドイツで作っていたオリエント葉の傑作「ゲルベ・ゾルテ」は、実は、JTから宮内庁相手にしか販売されていなかった、JT特製の「皇室用タバコ」の味と極めて似ていたことを小生は知っている。そういう珍しい味のタバコなども復活させたりして、タバコ文化などと気取る醍醐味も与えてくれないと面白くないのだ(酒の場合は、小生もブルガリアの赤ワインについて蘊蓄をたれているが、各地の日本酒、焼酎、ビールなどそれぞれに蘊蓄と伝統と歴史がある。タバコもそれなりに「伝説」がないと、面白くないではないか)。

6.タバコ喫茶店構想
  JTに更に期待したいのは、店内で種々の新作タバコも売るし(試し用に、1本ずつ売って欲しい)、おいしいコーヒーも飲ませるが、一切酒は出さない、しかも喫煙者しか入店できない「タバコ喫茶店」を開店して欲しい
  この店では、煙管(きせる)とか、パイプなども販売し、刻みタバコ、パイプ用タバコ、葉巻なども置けばよい。しかも、これらをなるべく国産品で提供し、日本のタバコ文化を創造する、というほどの意気込みが欲しい。

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この記事へのコメント

mugi
2009年04月25日 22:24
 今回の記事は愛飲家(つまり飲兵衛)の私には、耳が痛い話題です。
 仰るように煙草は「人格破壊とか、家庭崩壊、自動車運転事故というような、社会的害悪にまでは繋がらない」というご意見には、目からウロコでした。酒害とは比較にもなりません。
 私自身は草なぎ君のような失態を犯したことはありませんが、それでも昔は二日酔いになるほど飲んだことはあったし、特に休日前となればバカ飲み、翌日は宵まで引いている…なんてこともありました(汗)。

 ただ、草なぎ君の事件への取り上げ方は不可解です。ワイドショーならともかく、NHKのトップニュースで報じるまでのこともないと、私には思われました。同じSMAPのメンバーが以前交通事故を起こした時、ここまでクローズアップされなかったような。
 国民の関心を逸らすため、このようなニュースを殊更報道しているのかと、疑いたくなります。
2009年04月27日 01:12
mugiさん、コメントありがとう。前回の喫煙権の主張で、舌足らずだったように感じていたことを、今回書いたまでです。小生の言いたいことは、煙害と酒害とは、同じレベルの害悪ではない、というまあ自分自身の信念です。もちろん、喫煙家の立場に立った、自分には都合の良い意見と言うことは理解していますが、小生自身酒が嫌いなわけでもなく、昔から弊害に気づいて、厳しく自粛してきたこと、今でも自粛して、酒におぼれないように気をつけていることを強調したい。また、自分は吸わないからと、簡単に他人の趣味を否定する「嫌煙論者」達の、身勝手で一方的な言い分には、頭に来ているからでもあります。JTもがんばって、喫煙かを守るような、喫煙者が楽しめるような喫茶店とか、考えるべきです。
taka
2010年09月26日 12:02
『酒害こそ要注意』。まったく同感です。
酒は、非常に強い麻薬です(厳密には麻酔剤というべきですが、危険すぎて麻酔剤としては使えない)。と言うか、合法的な麻薬だからこそ非難の対象にはならない。
タバコの害を唱え『禁煙運動』を起こしても経済的な影響は少ないが、酒がダメとなればその影響は計り知れないものがある。酒は不可侵の聖域なのです。
これは別の見方をすれば、それだけ酒の麻薬性が強いと言う事ですね。

酒もタバコもどちらも『百害』も『一利』もあります。ただ『タバコ社会』より『酒社会』の方がより成熟した社会だから一般的な許容度が高いだけだと思います。そんな社会でいかに酒の害の方が大きいと唱えても虚しいだけだと思っていますが、「賛同者がすくない」と嘆いておいでなので、コメントさせて頂きました。
2010年09月27日 10:13
takaさん、珍しく本件にコメントありがとう。
 ただし、何故に「酒社会」の方がより「成熟した社会」などといえるのか、小生には理解できない。葉巻は、紳士のたしなみだった時代もあるし、今でも欧米では、少数とはいえ、葉巻喫茶店などがあるはず。
 また、小生は、酒造業を止めろとか、たばこ産業を止めろとか言ってはいないつもりです。どちらかというと、酒害の方が害悪が多いから、煙害ばかり差別的に言い立て、税金を高く取ったり、喫煙場所をこれでもかという風に、狭めていく社会風潮に文句を言っているのです。
 また、意見を言うことに「虚しいだけ」などと、達観するつもりは一切ありません。言うべきことを言うこと、嫌がられても唱え続けること、うるさく騒いでいくこと、これが「バルカン精神」です。ちなみに、タバコ葉生産の盛んなブルガリアでは、相変わらず、禁煙措置は少ない。
 タバコ産業復活についても、JTは深く戦略を練るべきで、日本のタバコ農家を育成して、面白い新品種のタバコを作らせたり、再び煙管タバコ用の葉っぱを生産してみたり、色々タバコ産業を盛り立てるための工夫もすべきです。喫煙喫茶店(非喫煙者立ち入り禁止)などの、逆差別とか、飲酒禁止、喫煙のみのレストランとかで、対抗措置を執るとか、世論に考えさせるための工夫をしないから、タバコ税だけ値上げされたりする。JTも、もっと頑張るべきです。また、中小のタバコメーカーも認可していくべきです。
taka
2010年10月09日 09:39
室長さんへ
 『酒社会の方が成熟した社会~~~虚しいだけ』の部分の表現は皮肉のつもりです。
 私は、喫煙者(この表現も妙ですね。「飲酒者」とは余り言わない)ですが、酒は嫌いです。勿論飲みますけれど・・・。
 酒社会が成熟していると言うのは、こういう部分を皮肉っている訳です。
 酒は嫌いでも、社会人なら酒席に出ないわけには行かない。飲まずに通すことも困難。
 『俺の酒が飲めないのか~ッ』、『酒も飲めないような男は~ッ』
いままで何回この言葉を浴びせられたことか。
 妙な話ですよね。『俺のタバコが吸えないのか』なんて話は聞いたこともない。もっと言えば宴会等の費用は会費の名目で、飲む飲まないに関わらず徴収されますよね。何故、人の呑み代を持ってやる必要があるのか。飲む人は飲まない人に『たかっている』。この事実さえ殆ど認識していない。当然の権利と思っている。「『喫煙会』開くので会費徴収」って言って払ってくれる人いますかね?。
 まだまだあります。『お屠蘇』、『食前酒』、『三三九度の盃』。食事の席で子供に『ちょっとくらいは~』と、酒を勧める親。タバコを勧める親ってのは殆ど聞きませんがね。
 等々、世情を皮肉った訳です。
 私は酒好きと「酒と煙草の害」について散々議論してきましたが、酒好きの方の反応は殆ど画一的。酒は利を説いて弁護。タバコは害を連ねて攻撃。いつも情けなく感じていました。

 酒が好きで、その上でこのような持論をお持ちの室長さんは立派だと思います。
 前回のコメントの真意は室長さんに敬意を表してのものです。是非頑張って
   「酒害こそ要注意」
 をアピールして下さい。

 勿論、私も『達観』なんぞしていませんからこういう議論には喜んで参加します。


 
2010年10月10日 08:02
takaさん、
 なかなか筋の通ったタバコ好きとしてのコメントなのですね、大歓迎です。社会の中で、なぜこれほど、不合理にも煙害ばかり喧伝され、差別待遇を受けるのか?やはり、我々愛煙家達が、声を大にして、タバコ税引き上げに反対し、政治家らにも、愛煙家ここにありと、存在を示していかねば、ますます喫煙場所を制限されてしまう。
 宴会における、「飲まない人間も同じ会費」という矛盾も、しっかり職場でも主張されたらいかがでしょうか?難しいことは分かるけど、声を上げないと何時までもそういう非合理がまかり通る。・・・もっとも小生の場合は、宴会時には飲むので、損はしていないけど。その代わり、宴会でもタバコを吸いまくっています。飲酒権があるなら、喫煙権もある!
 とはいえ、若い頃から酒の害を意識して、意識的に「少量、回数を少なく」とこころがけ、なんとか酒には絶対に依存しなくて良い、そういう工夫をしてきた小生の経験では、若い頃からしっかり教育などで、酒量制限を教示していかないと、世の中はアル中いっぱいの危険な社会になると思う。タバコは、羽目を外すほど吸っても、まあアル中のような、社会的に迷惑となるような、人格破壊はありえない。この差を再度社会認知させたいものです。

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  • 「酒害こそ要注意」について

    Excerpt: 「酒害こそ要注意」について 1.酒メーカーの監視下、マスコミは酒害撲滅キャンペーンができない  煙害と酒害とを比較すれば、酒害の方が絶対に社会的被害が大きいはずなのに、マスコミは酒造業者による広告.. Weblog: ブルガリア研究室 racked: 2009-05-01 09:26